踵荷重の姿勢に変えると圧倒的に弓を引きやすくなる

ここでは、踵荷重の姿勢に変えることで与える体の良い影響について解説していきます。

今よりも弓を引きやすくするためには、踵に荷重をかけるようにしましょう。ここでいう「踵荷重」とは、「足首」に乗せるように意識しましょう。

人の足関節は脛の骨、足首関節と足指の関節で構成されています。このときに、足首の関節は脛の骨の重さがダイレクトに乗ります。反対に、足指関節は脛の骨と直接つながっているわけではないので、直接重さがのりません。

このときに、足首関節に乗せるように意識しましょう。そうして、踵荷重の姿勢は、三つ利点があります。

1弓が引きやすくなる

まず、踵に体重を乗せると、背筋の無駄な力みが取れます。これによって、弓が引きやすくなる姿勢になります。

踵に荷重をかけることで、身体の重心や体重が後ろにシフトするため、結果的に、顎を引きやすくなります。これによって、首から肩にかけて生えている僧帽筋の緊張がとれて、背筋が緩みます。

そうすることで、射に良い影響を与えます。

最初に、踵付近に荷重をかけると呼吸動作がしやすくなります。

つま先に体重を乗せた場合と踵に体重を乗せた場合で呼吸動作を比較してみてください。つま先過重の方が呼吸が浅くなり、踵荷重の方が深く吐けます。

つま先過重にすると、背筋が張って胸が前方に出やすくなります。そのため、胸を使って呼吸をする胸式呼吸になります。胸式呼吸は瞬間的に呼吸動作を行うために適した呼吸法であるため、息を早く少なく吐くようになるため、深く吐けません。

対して、踵荷重にすると、胸が前方に張らないため、横隔膜を上下に動かす腹式呼吸になります。腹式呼吸は持続的に呼吸動作を行うために適した呼吸法です。そのため、長く多くの量を吐けます。

次に、踵に体重をかけると、打起こし動作がしやすくなります。

踵に体重をかけたまま、打ち起こし動作を徒手で行ってください。楽に腕が上がって筋肉に張りを感じません。反対に、つま先に体重をかけて腕を上方に上げると、拳が目線より上に上げると、肩か腕の筋肉が張るのが体感できます。

つま先に体重をかけると、背中に生えている広背筋が張ります。この筋肉は、上に上がった腕を下に下げるときに働く筋肉です。そのため、広背筋が張った状態で上を上方に上げると、腕が上方まで上がりりずらくなります。無理してあげようとすると、肩や腕の筋肉が力んでしまいます。

3つ目に肩甲骨周りの筋肉が柔らかくなり、弓を引きやすくなります。

これは、後ろで両手を組むとわかりやすいです。つま先に体重をかけた状態と、踵に体重を乗せて後ろに手を組むようにしてみましょう。

すると、踵荷重の姿勢の方が腕が両手で組みやすくなりませんか?。踵に体重を乗せると背筋がゆるむため、腕と肩甲骨が動かしやすくなります。慣れている人であれば、後ろで「お辞儀のポーズ」もできると思います。

つまり、踵に荷重をかけると、呼吸がしやすくなり、腕を上や左右の方向に動かしやすくなることがわかります。

体配動作がキレイになる

さらに、踵荷重にすると、前後左右に重心移動を行いやすくなります。したがって、様々な体配動作が楽に行えるのがわかります。

まず、執り弓の姿勢で、「肘を張る」動作があります。これも踵荷重で姿勢をとると肘を張りやすくなります。

姿勢を考えずに、無理やり肘を張ろうとすると、腕や肩の筋肉が緊張してしまいます。しかし、踵に体重を乗せて、少し目線を下げて胸をすぼめる(胸郭を内側に入れる)ような姿勢をとってください。すると、肘が張りやすくなります。

あるいは、座射で「腰を切って立つ」動作があります。この動作も踵荷重にすることで行いやすくなります。

中には、跪座の状態から立とうとすると、腰が一回下がってしまう人がいます。これも立ち上がる時に、左右のつま先の力を抜いて、踵を踏み締めるようにしましょう。すると、腰が下がらずに、立ち上がり動作が行えます。

それだけではありません。この他に、しゃがむ動作、後ろに下がる動作も「踵荷重の姿勢」に切り替えると容易に行えます。つまり、踵荷重の姿勢によって、体配動作もしやすくなります。

つま先荷重の姿勢で起こる3つの悪影響

では、反対につま先重心にすると、脚の筋肉に3つの悪影響を与えます。

最初に、つま先荷重の姿勢に変えると、「足のアーチ構造が崩れる」可能性があります。

踵、足指の骨には、筋肉が少ないため、負荷をかけ続ければ、簡単に構造が変形してしまいます。足は、踵、小指、親指の三点のアーチ構造を有しています。踵に体重を乗せている場合、踵から足にかけて生えているアーチ部に体重がかからないため、構造は壊れにくいです。

しかし、つま先に過重をかけようとすると、足先までのアーチに負荷がかかります。やがて、つぶれてしまい、土踏まずにある隙間がなくなります。

そして、このアーチ構造が壊れると、骨盤や背骨などの上半身の骨を安定的に支えられなくなります。

試しに、簡単な実験をします。踵、もしくはつま先付近に体重を乗せた姿勢で、誰かに肩を押し下げられてください。おそらく、踵付近に体重を乗せたほうが、押し下げられる力がかかっても、姿勢を安定的に保持できると思います。

つま先に体重を乗せると、肩がグラグラしたり、背骨が反ったりします。つまり、拇指球に体重を乗せたほうが、姿勢は安定しないのです。

つま先に荷重をかけた場合、踵への荷重度が減ります。したがって、三角形の面積が小さくなるために、脚を支えるための土台が安定しなくなるのです。

次に、足の甲の筋肉が縮むことで、脚自体の筋肉に無駄な力みが発生します。

足の甲のパーツは、「踵」「足の甲」「足先」の三部位に分けられます。この中で、足の甲の部位は「中足骨」と呼ばれており、足の甲の中で最も大切な骨と言えます。

理由は、中足骨周辺には、脛の方へとつながる筋肉が多くあるからです。足首を伸ばしたり屈めたりする筋肉、外や内側へ曲げる筋肉がつながっております。足首関節の可動域も中足骨から続く脛の深部にある筋肉(インナーマッスル)の柔軟性で決まるといってもよいです。

もし、つま先に荷重をかけたとします。すると、中足骨のアーチが下がり、中足骨付近の筋肉が圧迫されます。したがって、脛の内側とふくらはぎの筋肉が張ってしまい、脚全体が緊張します。

最後に、背中です。つま先荷重にすると、「背筋」が強く力んでしまって、上半身全体の筋肉に力みが出てシミ余す。

人の姿勢を解剖学的に分析すると、力が抜けた姿勢は「肩・腰・足首」の三つの部位がよこから見て垂直に交わっていれば、キレイに真っすぐに背筋が伸び、筋力に負担のない姿勢と言われています(ただし、太り体型の場合は異なります)。もし、骨盤が垂直に立っていると、余計な力みなく三つの部位を垂直に正せます。

しかし、つま先荷重で行うと、背筋が張ってしまうため、骨盤が垂直に立たなくなります。すると、腰を反らした出尻の姿勢になってしまいます。すると、肩が前方に出てしまい、真っ直ぐな姿勢が取れなくなります。

これが、先ほどお話した、背中の筋肉が縮んで腕を動かしづらくなることにつながります。

ここまで、振り返ると、つま先に体重をかけることで、足のアーチが崩れて、上半身も下半身も力んでしまうとわかります。

連盟「母指球重心」の指導はGHQの政治情勢の事情があった

このように、母指球重心で弓を教えている理由として、「GHQ」の影響があります。

戦前の弓道は、「無駄な力みを加えないで動作をする」ことに価値を置いてきました。武道は、稽古によって「自然で落ち着いた状態」を身に着けるのが目的であるのに、自ら力を入れて稽古することは行うのは不自然になります。

そのためには、踵に体重をかける姿勢が必須ですが、古くは剣道の構えも踵です。柔道の投動作を行う時も踵の方がしゃすいです。合気道も踵、宮本武蔵の五輪の書も踵を踏む重要性を説いています。

しかし、日本が戦争に負けて、GHQによって武道の教育方針も変わりました。まず、「力を抜けた自然の状態を構築する姿勢・動き」が合理的でないと判断され、稽古の仕方から動きまであらゆる流派の統一化をし、形式的な動作を作る方向に進みました。

ここで、踵荷重の姿勢ではなく、つま先荷重の姿勢を基礎として説明するようになりました。

なぜなら、つま先荷重の姿勢に変えることで、特定の筋肉に力を入れることが可能になるため、動きや姿勢の取り方に理屈をつけやすくなりました。そのため、どこか力が入っている姿勢はわかりやすく、合理的と判断されて、それが基礎となる姿勢と解説されるようになりました。

例えば、このGHQの影響をわかりやすく受けた影響が剣道です。

剣道は、相手の間合いに素早く入るために、踵荷重の姿勢を取るのを基本としていました。しかし、戦後に入って、指導方針が変わってつま先荷重の姿勢の方が有効と解説されるようになりました。

その時に、どのように理屈をつけていたかの詳細を記すと

つま先荷重の姿勢

「もし、相手の間合いに入る時、一度ふくらはぎに力を入れて、瞬発力によって相手の方向に体を進める必要がある。その時に、踵に乗せていると不合理であり、つま先に先に乗せておけば、早く瞬発力を引き出すことができる・

したがって、つま先荷重の姿勢にした方が良いという考えです。しかし、踵荷重の姿勢は現代のスポーツ化された剣道であっても十分に使える操法と考えられます。」

参考文献:有信館剣道の実際

このように、戦前の剣道では踵荷重の姿勢が基本でした。しかし、今はその足の使い方では瞬発力が出るのが遅いと判断されています。

しかし、理屈の付け方が非常に不合理です。なぜなら、実際に剣道を行えばわかりますが、つま先に力をかけた方が明らかに入り始めが遅くなるからです。しかし、このように理屈をつけられて、つま先に体重をかけるのが正しいという教育と日本人は受けてきました。

したがって、弓道の同様です。弓道も母指球荷重の姿勢がなんとなく良いと言われて、弓を引いてきました。

極め付けが、範士十段の唐沢範士の出版した「弓道読本」。この文章の中を見ると、「腰を前に突き出し、背筋に力を入れた姿勢」が「正しい」と解説されています。

このため、多くの人は母指球に体重を乗せた方がなんとなく良いと思いやすいです。

つまり、私たちが母指球に体重を乗せてきた理由は、それが弓矢の操作上合理的だったからではありません。戦後の欧米式の身体の使い方が良いと教育されてきたため、なんとなく良いと思っているだけです。

したがって、身体に負担のない合理的な立ち方、弓の引き方、体配動作を覚えましょう。そのためには、踵荷重の姿勢です。

踵に荷重をかけると、弓が格段に引けるようになります。それだけではなく、戦前の大部分の弓道家が踵荷重を推奨していることもわかり。それは、弓を引くのにも体配動作を行うのにも有効であるとわかります。

正しい身体の使い方をインストールをして、引きやすく、確実に中る姿勢を構築しましょう。

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