弓道を稽古していると、結構な割合で怪我に見舞われます。特に初めての方は稽古中に、「弦が左腕に当たる」「頬に当たる」「こめかみに当たる」など、弦がどこかに当たって悩んでいる人は多くいます。
あるいは、稽古していて、「メガネを吹っ飛ばしてしまう」といった経験をされる方もいると思います。私は、高校時代、メガネをかけていた時は、一度巻藁練習でメガネを飛ばしたことがあります。
今回はこのような問題を解決する手法について解説していきます。
親指が外側に向けば、弦は当たらなくなる
この問題の解決方法は「右手親指の向きを外側に向ける」ことです。
そもそも、弦が頭部に当たらない理由について説明できますか?脇正面から見ると、弦は耳より後ろに多いかぶさるようになっていますので、そのまま弦を外したら、耳や頭に当たるはずです。しかし、経験者はこのような怪我はしません。
理由は、会の時に親指が外側に向いているからです。
弦は外れる際に、的に対していきなり真っ直ぐに飛ぶ訳ではなく、少し外側に外れてから、直線に飛びます。最初は親指付け根にある懸け溝から外れるため、外側に向いている親指から添うように動きます。
この一瞬だけ「外側」に動くために、弦は耳や頭の外側を通るように動きます。
しかし、頬に当たっている人は、弦が外側に外れる運動が起こらず、懸け溝から弦が外れた時に直線に通り過ぎるために当たります。つまり、右手親指の向きが的方向に向きすぎている可能性が高いです。
この向きを少し外側に向ければ、弦が頬に当たる問題を解決できます。
多くの人が、親指を真っ直ぐに向けたくなる理由
次に、弓道を稽古していて、親指が真っ直ぐに向いてしまう理由について解説します。これは、後ろ狙いになっているからです。
大三で左拳を的方向に動かしていく時、左拳を的方向に押し込んだとします。この時、的方向に押しすぎてしまうと、右手と右肘が的方向に流されすぎてしまいます。ここで流されすぎると右手親指が真っ直ぐに向きます。
次に引き分けです。右肘が後方に流されすぎてしまうと、引き分けで右肘を肩より後方に引きつけるのが難しくなります。おそらく、途中で右肘の動きが止まってしまいます。すると、親指が真っ直ぐに向いた状態で会に入ってしまいます。
そうして、離れで弦がほほやこめかみに当たります。
ただ、こうなってしまう理由は、日常で言われているなんとなくの指導で、陥ってしまっている可能性が高いです。例えば、弓構えで右手首を捻った時、手首を捻ると後ろ狙いになりやすいです。
確かに、弓構えで右手首を捻ると、右肘が上がって「下筋を張った感覚」にはなります。しかし、右手を捻ったまま引き分けをすると、右肘は下向きに落ちやすく、後方に回り込むように動かせないのです。
右手首を捻っていいことは「弓構えで腕を張っていい格好に見える」だけ。この状態で引き分けると、高い確率で右肘が下に落ちます。
あるいは、大三をとるときに、上押しをかけなさいと言われたとします。このように言われる、大三を広く取ろうとして、左拳を的方向に押し込みすぎます。このこと自体は悪くありません。しかし、人によっては右肘が的方向に流されすぎてしまいます。この影響で、右肩が前に出て「後ろ狙い」になります。
さらに、後ろ狙いになると、弦がこめかみに当たりやすい理由を言います。後ろ狙いにすると、弦の上部がよりこめかみによってしまうからです。
後ろ狙いになっているときは、右肩は少し前に出て、右手首を捻ってしまいます。この手首のひねりによって、弦の上部が内側に、下部が外側に捻らます。よって、弦の上部と頭部がさらに近づいてしまい、ほほやこめかみに当たる可能性が上がります。