的中率5割を超えるための具体的な方法:的をガン見しない

今回は的中率を向上させるための、コツ、練習法について解説していきます。手の内、引き分けの仕方も大切ですが、「的の狙い方」「ねらい目」に関しても重要です。

的中率を向上させるために、的の狙い方に関しても勉強していきましょう。的を狙っている最中でも人の姿勢は無意識に動いてしまいます。この姿勢の崩れを抑えることで、的中率を上げることにつながります。

的はガン見しない

結論から言うと、的中率を減らしたくなければ、「的をガン見しない」方がいいでしょう。いわゆる「半眼(はんがん)」で「ボンヤリ」見るように意識しましょう。

この理由は、的をあまりに狙う意識を持ちすぎると、頭部が前方に出やすくなるからです。

的の一点に注意してみると眼球の奥の筋肉が緊張します。これに連動して、首の後ろの筋肉が力み、背筋が連動して緊張します。その結果、引き分けている最中に上半身に無駄な力みが出てしまい、肩がぶれてしまいます。そうして的をはずしてしまいます。

さらに、的を見ることに意識をとらわれると、弓を引く意識が薄れてしまいがちです。弓を引く意識が薄れてしまうと、通常よりも引き分け動作が小さくなってしまうため、弓の反発力を肩でしっかり受けたフォームを作れません。その結果、矢が真っすぐに飛ばなくなります。

弓道教本一巻の射法射技の基本には「目づかい」という項目があります。この項目には「目にとらわれる」と記されています。この言葉の通り、見ているものに集中しすぎると、体を動かす意識が薄れてしまうため、正確に矢を放つための姿勢を構築しずらくなります。

そのため、まずは的を薄目でボンヤリ見るようにしてください。そうして、矢束いっぱい引き込むようにして、弓の反発力をしっかり受けた姿勢を構築しましょう。

経験者ほど、的をボンヤリ見る根拠

ただ、このようにお話しすると、「的を中てるためにしっかり見ないなんて考えられない」という人がいるかもしれません。実際にそのようなご指摘もありました。

ただ、この話はきちんとした根拠をもって解説している内容です。実際に大学の実験で「初心者ほど的をじっくり見て、経験者ほど的をボンヤリ見る」ことがわかっているからです。

慶応義塾大学の環境情報研究室の斎藤・福田氏の研究で、経験者(6年以上)と初心者に弓を引かせて「眼球運動の違い」を測定しました。具体的には、弓を引いているときの注視点(見ている点)の位置変化を機械で測ったのです。

その実験の結果から、初心者の視点は弓を引く前から引き終わるまでほどんど動かず、経験者ほど最初は的を見て、やや右下方にシフトすることがわかりました。

参考文献:「弓道競技者の視覚情報処理に関する実証的研究(斎藤貴巨・福田忠彦(慶應義塾大学・環境情報))」

このように、視線が下方にシフトしたのには二つ理由があります。

一つは安定した注視を持たせるです。弓的の一点を長時間見るより、視線をやや周辺に偏移させ、網膜部分でとらえるようにすると、安定した注視が得られるからと考えられます。

この実験では経験者4人とも、個人差はあるものの、最終的には注視点はほぼ同じ地点に落ち着くことがわかりました。つまり、一点ではなく周辺的にみることで、安定した視野を得られやすいと考えられます。

二つ目は狙い方の違いです。初心者の場合、狙う際に的を意識的にみて行います。しかし、経験者になると、的を「透かす」ように見ることが多く、藤を見るように意識します。そのため、見る場所が変わるために視線が変化します。

そのように、的を見るときに的以外の補助があると、より正確に的に狙うことにもつながります。実際に、アーチェリーの世界では、このように的を見る際の補助的道具を使うと、よりエイミング(狙う動作)がしやすくなったという報告があります。

狙いを定める的に、縦横に十字に交わる補助マークを付けて、実験者にエイミングしてもらいました。すると、補助マークを付けた方が的を狙いやすくなったと報告がありました。

上記のように、的に補助線をつけてアーチェリーを行ったもらったところ、実験者は、「注視点停留時間(視線を同じ箇所に維持し続ける時間)がそうでないときに比べて長くなった」という結果になりました。この結果は、補助マークをつけた方が、実験者が狙い目を安定的に維持できることを指しています。

さらに、補助マークをつけることで、実験者から「マーク無しが打ちづらいわけではないが、マークのある方が、サイト(照準器)をつけやすい」「クロスに慣れてくると的が見やすく狙いやすい」という報告もありました。

以上のことから

・ボンヤリ見た方が一点に集中してみるより狙いが安定的になる

・理由は、的だけではなく、他の部位も見ることで、総合的に狙いの位置を合わせられるから

・実際に、アーチェリーの世界では、的以外の補助をつけることで、狙いが合わせやすくなったという報告がある

このように、狙う時は的単体で見るのではなく、他の部位を合わせてみて、そこから位置関係を調節し、的を総合的に見た方が、結果的に的を安定的にみることができることがわかります。そのためには、的だけを一点に見るのではなく、周辺的にボンヤリ見て、的を狙うことが大切とわかります。

以上の理由のため、経験者は的を見るときに一点を見ないことがわかります。そうであるならば、初心者の内に的を凝視させないように癖づけることは大切です。

ボンヤリ見て、その上で大きく引いてください

そのため、的を見るときは、一点でガン見せず、ぼんやり見るようにしてください。

・薄めにする

・ボンヤリ見るように意識する

・藤頭を見て、的を透かすようにする

ただ、このようにしたからと言って、的中率が即上がるわけではありません。あくまで、「大きく引く」ことを忘れないでください。ボンヤリを見ることで、大きく引くように意識を向けやすくなります。

先ほどのお話しの通り、周辺的に見たり補助線をつけて見やすくなることで、的を安定的に見る時間が長くなるのはデータに出ています。しかし、だからと言って「ボンヤリとみることだけ」行うのはやめてください。実際に、結果を出したい場合、このデータの結果だけを行うのではなく、その中にある意味をきちんととる必要があります。

経験者が的をボンヤリ見ているのは、ぼんやり見ること以外に、その動作自体にとらわれずに済むからという意味も含まれています。しっかり的を見ず、ボンヤリとみることで、的の狙いを定めることとしっかり弓を引くことの二つの動作をバランスよく行われ、結果として、安定した姿勢で、狙いも定まるのです。

今回の内容をもとに、的を見る際に、ボンヤリ見るようにしてください。そうすることで、より矢の長さいっぱいに引くことができます。胴造りで肩関節をブラさずに弓を引けば、的中率はある程度まで上がります。最初はそこを意識して取り組むようにしてください。

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