さぁ、踵荷重の姿勢で弓を楽に引こう〜会・離れ〜

さぁ、踵荷重の姿勢に変えて、姿勢から弓の引き方までが変わってきたのではないでしょうか?

ここまで、踵に体重をかけて弓をうち起こすと、

・どの角度に打起こししても胴造りが安定する

・踵に体重を置いて、拳を左右に動かせば、斜め上方に弓は押し開かれる

ことがわかっています。次に、会離れとなります。ここでは、踵に体重をかけて、適切に弓をより開くための具体的手法について解説していきます。

体全体を柔らかく使おう

では、会、離れについて行うべきことについて解説します。会と離れは「体全体」を活用するように意識してください。

余計なことをとにかくしない、余計な力を入れない、ただ、自然に横に横に開く。このことを意識してください。

これによって、精神面も安定しながら、弓を離すことができます。

会:踵に体重を置くと、精神の動揺が少なくなる

会でも、踵に体重を乗せたまま弓を引くようにしてください。すると、胸の筋肉が緩み、呼吸が安定して、気持ちの動揺が減ります。

踵に体重をかけると、ふくらはぎと背中の筋肉が緩み、胸部が緩みます。すると、肺自体が圧迫が減って、呼吸動作を安定して行えるようになるのと、息を止めても平然として気持ちを保っていられるようになります。

実際に、息を止めてください。踵に体重をかけて息を止めると、長く息を止めても気持ちが落ち着いた状態で維持できることがわかります。

この姿勢で会を保ってみてください。心が落ちつき、動揺しずらくなるのがわかります。この分、会で起こる焦りの症状が減ります。

気持ちを落ちつけるためには、胸を緩めるだけで問題ありません。会の最中に「的のことを考えないようにする」など考える必要はありません。ただ、踵を踏んで胸を緩めればいいのです。

 

踵に体重を乗せ続けるだけで「楽に強く押せる押手」が自然に出来上がる

そして、踵に体重を乗せることで、楽に強く押せるようになります。

会で長く強く弓を押すためには、「左肩が下がって腕が軽く曲がった状態」が強く押せます。

・左手の余計な力みがぬけている

・左肩が下がっている

・左肘が軽く曲がっている

左肩が下がっていることで、左肩が上がって左腕が突っ張った状態をおさえることができます。さらに、左腕が軽く曲がることで、肘の皿が地面に対して垂直に立ちます。

これによって、弓の反発力が腕にかかっても腕に負担がかかります。そして、この左腕の構えも踵荷重の姿勢で身につきすくなります。

踵に体重を乗せて、顎を引いて立ってください。次に、左腕をピンと伸ばして的方向に向けます。そこから、左腕の力を抜くと、自然と左腕が曲がるのがわかります。

左拳が一個分斜め上方に上がり、左肩が下がりやすくなります。このように、踵を踏んで立つと、「自然と左腕が曲がった押手」を構築できます。

弓を強く押し続けるために、踵に体重を乗せるようにしてください。

引き分けで左肩が上がる理由

ここまで読んだように、弓道で左肩が上がりやすい理由はわかったのではないでしょうか?原因はつま先荷重の姿勢です。

弓道の弓は平均して500g程度とされています。それを両手で持つために、片手にかかる重さは250gになるはずです。本一冊の持ち上げるためになぜ、左肩が浮き上がるくらいに力が入ってしまうのでしょう。

つま先荷重の姿勢にすると、腕は突っ張りやすくなり、反対に踵荷重の姿勢を構築すると、逆に腕を伸ばしにくくなります。

実際に、踵に荷重をかけると、腕が伸びにくく、反対に腕を伸ばしにくくなるのがわかります。さらに、脚の力を抜いて立ってみると、自然と軽く曲がった状態に落ち着くのがわかります。

対して、つま先に体重を乗せて姿勢を伸ばしてください。その後に、左腕を的方向に伸ばして力を抜いてください。すると、左腕が伸び切ったままで変わらないと思います。

つまり、つま先に体重を乗せたまま引き分けを行うと、「左腕が突っ張った押手」になりやすいです。強い押手は踵荷重の姿勢から作れます。

正常な姿勢で引き分け動作を行えば、左肩は下がるはずです。それは踵荷重の姿勢によって、構築できます。

踵を踏むと、肩甲骨が良く動くようになる

会に入ってからも、踵に体重を乗せる使い方が有効になります。

教本三巻の祝部範士は「肩を翻し出せ」と文章に残しています。この意味は、右肩を前に回すように動かすことです。

会に入ったら、右肩の関節を前に回すようにしましょう。すると、肩甲骨が外側に開くように動くのが感じられます。

この状態は弓を強く押すのに最も適した形です。実際にこの状態で肘を押されてみてください。押されたときの圧力が肩周りにかかり、姿勢が安定します。

ただ、この右肩を回すためには、肩甲骨周りの筋肉をゆるめる必要があります。加えて、肩甲骨の可動域が大きくなければいけません。もしも、無理やり肩を回そうとすると、肩周りの筋肉が硬くなり、弓を引けなくなります。

あなたは、「肩が詰まった引き方」をしている人は見たことありませんか?無理に肩を前や後ろに捻ってしまい、肩の筋肉が硬くなっています。

このような状態になると、弓が引きにくくなるどころか、肘を痛める可能性があります。

かといって、手首を内側を捻って肘を下に向けてもいけません。肘を下に向けると弓の反発力が腕だけにかかりすぎてしまいます。いずれにしても、腕や肩に負荷が集中してしまうために、弓の反発力を受けきれず、怪我をする危険があります。

ただ、これらの問題を解消する方法が一つだけあります。それが「踵に体重をのせる」ことです。

かかとに体重を乗せて、会の形から肩を回すようにしてください。つまさきに体重を乗せているときに比べて回しやすく感じます。

踵荷重にすれば、「胸の中筋から離れる」離れが実現できる

最後に、離れ動作は、踵に体重を乗せたまま、弓を引き切って大きく離してください。

左親指付け根で弓の力を受けて(押し込むのではない)、右肘に力を込めて、最後に、二つの部位を持って左右にパッと開きます。

そうすると、離れで鎖骨周りの筋肉が働き、大きく鋭い離れを実現しやすくなります。

踵に体重をかけると、胸の筋肉は緩み、会でもその状態が続きます。すると、鎖骨周りについていつ筋肉が緩み、離れ動作に至ることができます。

ここで、胸の筋肉が緩むと、胸を中心に体が開くように離れが出ます。

離れを行う時に、手先に力がこもったまま離すと、右肩が後ろに引けてしまい、左腕が伸び切らなくなります。つまり、左右の肩がぶれることなく大きく開いた離れにならず、真っ直ぐに飛びません。

しかし、踵を踏んで胸を緩めた離れをとってみてください。両肩は前後にブレにくくなり、腕を動かせると思います。加えて、胸の筋肉が緩んでいるため、左右に胸部の筋肉を開きやすくなります。

吉見順正の離れの用語で、「胸の中筋から離れる」という言葉があります。この用語の意味は、「手先で離すのではなく、胸の中心から弓を離す」という意味です。この内容は、踵に体重を乗せると体感しやすくなります。

踵に体重を乗せて、胸部や頭部が後ろに引かれることで、両肩が無駄な力みなくロックされます。したがって、大きく離しても肩がブレません。これによって、的中し、かつ大きく胸の開いた離れができます。

つま先荷重の姿勢で胸から開くと肉離れをする

なお、これらの内容は全て「踵に体重を乗せる」前提で解説しています。つま先荷重の姿勢で胸から大きく広げようとしないでください。そうすると、胸の筋肉を痛めるからです。

つま先に体重を乗せると、背筋が張ってしまい、連動して大胸筋も張ってしまいます。すると、大きく腕を動かす時に大胸筋が引っ張られすぎてしまいます。かえって両肩がブレてしまったり、胸部の筋肉を痛めたりしてしまい、離れ動作がスムーズに行われません。

中には、先生に「とにかく胸を大きく広げろ」と言われて、その通りにやった結果、胸の肉離れを起こした人もいるくらいです。

そのため、つまさきに体重を乗せてこの言葉を行わないでください。姿勢のことも考えずに、胸の筋肉を広げてしまうと、かえって怪我をしてしまい、弓を引くことができなくなる危険もあります。

胸の前面を開こうとしてはいけない

というのも、多くの人は吉見順正の解説する「胸の中筋から離れる」の言葉を間違って受け取っています。

胸の中筋から離れるというと大部分の人が胸の前面を開こうとします。胸を張るように前面を張って、「胸の中筋を開いた」と思い込みます。

そうではなく、この言葉は「肩甲骨を開く」ことです。左右の肩甲骨を外側にひらけば、結果的に胸郭が左右に開くという意味です。

なぜなら、解剖学的に、胸郭の上部は前後に動き、下部は左右に開くようにできているからです。

胸郭は大きく動かすには下部を左右に開くことしかできません。解剖学的に前面を開くのなら、胸式呼吸で上部を動かすしかありません。つまり、胸の前面を開くことはできても、その動きは弓を引く動作においては非常に非効率と考えられます。

さらに、胸を前面を開こうとすると、胸郭の全面を動かす胸式呼吸は身体の重心が上がってしまいます。つまり、前面を開こうとすると、肩の上部に力が入ってしまうため、引き分けが小さくなります。肩に力が入ったり、姿勢が崩れやすくなるため、体の使い方として非効率と言えます。

そこで、踵に体重を乗せて、骨盤を立てて胸を緩めてください。すると、脇周りにある「前鋸筋」が張ります。この前鋸筋が収縮することで、肩甲骨が開き、胸郭の下部が開きます。

前鋸筋の上部は肩甲骨から脇下にかけてついており、縮むことで、肩甲骨が外側に開きます。加えて、前鋸筋の下部は肋骨の下部にかけてついており、縮むと胸郭が左右に広がります。

つまり、「胸の中筋から開く」とは、脇下の筋肉を縮めて、胸郭の下部を左右に開くことと考えられます。このようにすることで、腕に力を入れずに、弓を最大限に押して行けます。

さらに、踵荷重の姿勢にすると、腹式呼吸がしやすくなります。胸を緩めて息を吐いてください。おそらく、みぞおち部にある横隔膜が下がります。これにより、もっと胸郭が左右に開かれます。加えて身体の重心がより下方向に落ち、姿勢自体が安定します。

つまり、胸の中筋から離れる射法は解剖学的に肩甲骨を開くことで実現できます。これまでの内容をまとめると

・骨盤が立ち、胸の筋肉を緩めると脇下の筋肉が張る

・脇下の筋肉が縮むと、肩甲骨が左右に広がる

・これによって胸郭が左右に開く

・さらに、吐く息を使うことで、横隔膜が下がり、より胸郭が下がって、重心が下がる

・姿勢の安定性が強化されて、腕の力を使わずに弓を最後まで押し続けられる

・胸郭が左右に開かれて胸の中心から開くように矢を離せる

そして、これら一連の流れは「踵荷重」の姿勢にすることで、実現できます。最後まで踵に体重を乗せて、全身の無駄な力みを取り払って、気持ちよく弓を開いてください。

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