踵荷重に変えて、体配動作を全て綺麗に楽に行う

踵に荷重をかけて、弓を楽に引けるようになったら、次に「体配動作」もうまくなりましょう。

実は、弓道連盟の推奨する体配動作の要点は、「踵荷重」の姿勢にしてしまえばできるようになります。例えば、

・背筋を伸ばして、肘を張る

・すり足動作で歩く

・「腰から動く」「立つ、しゃがむ」などの歩く動作

・ゆっくりとした静かな動作

・周りとの間合いを合わせるようにする

こうしたことを体配動作では気をつけます。しかし、これらの内容は全て「踵荷重」の姿勢にすれば、実践できます。

決して、範士の先生だからといって、綺麗な動作ができないわけではありません。連盟のたいはんはつま先荷重で姿勢を行うから、体配動作がガタガタになってしまうのです。全て、踵荷重にして、綺麗で静かな動作を一人でできるようにしてください。

では、その具体的な方法について解説していきます。

踵を踏んだほうが姿勢がキレイになる

まず、首筋まで伸ばした「背筋を伸ばした」姿勢ですが。踵に体重をおけば、背筋が伸びます。

全ては、この「踵荷重=背筋が伸びる」だけを覚えれば、あらゆる体配動作を綺麗に行えます。必ず覚えるようにしてください。

まず、体重を踵付近に乗せてください。すると、背中と首の後ろを伸ばしてみてください。上半身の力が抜けて、姿勢を伸ばせるのがわかります。

これが、つま先に体重を乗せてしまうと、体重が全面に動いてしまい、頭部と胸も全面に出ます。この姿勢は取らないようにしてください。

 

踵に体重を乗せれば、執り弓の姿勢で楽に肘を張れる

そして、連盟の執り弓の姿勢で「肘を張ろうとすると、肩や腕が痛くなる」という人がいます。必ず、踵に体重を乗せて、姿勢を伸ばすようにしてください。そうすれば、「楽に肘を張る」動作ができます。

踵に体重を乗せた状態で、さらに「胸を体の内側に入れる」ように背筋を丸めてください。すると、両肘を楽に張った姿勢を取れるようになります。

これでもできない場合は、「少しだけ膝を曲げても」いいです。全日本弓道連盟初代会長の宇野要三郎範士の言葉にある「膕を凹むように伸ばす」という言葉を使います。そうすると、さらに背中や肩の力が抜けるので、執り弓の姿勢が取りやすくなります。

軽く膝を曲げたところで、見た目はほとんどわかりません。執り弓の姿勢では「軽く膝」を曲げるようにしてください。決して、弓道教本に記された文章の

「内腿をしめ、膕を伸ばし」

のこの文章のを「膕を伸ばす、膝裏をピント張る」と解釈しないでください。膝裏をピンと伸ばしたまま張ると、歩いている最中に足と背中に力が入って姿勢がガタガタに崩れたり、力が入ったりします。

射場に入る前には、胴作りも崩れて、腕がパンパンに力が入った状態にならないようにしましょう。

ちなみに、私がこの方に直接会ったことがないので、何とも言えませんが、情報だけを記しておきます。

とある地域に過去に40kg以上の弓を引き、50射50中を実現し、弓道の最高位の称号の審査候補にも選ばれた先生がいます。この先生の元で指導を受けていた方が、その先生が話されていた体配についての言葉をここで記しておきます。

「体配動作とは射の準備動作であって別別に考えて行うようになってからあのような窮屈な動きになった、だから今の●●流のせがれは射が下手くそなんだ」

私は、この証言を直接聞いたわけではないので、その言葉の真意はわかりません。そのせがれが射が下手かどうかも見たことがないからわかりません。しかし、射と体配に置ける身体の使い方は同じにしておいた方が合理的であるのは間違いありません。

つま先を浮かせると、すり足で歩ける

先ほどお話した、踵荷重の姿勢に加えて「軽くつま先」をあげるようにすると、体配動作の際に使う「すり足」もできるようになります。

執り弓の姿勢で少し目線を下げてください。そして、つま先を浮かせるようにして、さらに踵を踏むと、自然と前方に体を送ることができます。体感として、腰か動けるようになります。

弓道教本の基本動作の中に「動作は腰を起点にして歩くこと」と記されています。この文章は、踵に体重を置けばできます。踵を踏むと、一番体の体重が乗っている腰を容易に動かせます。

立ち上がり動作、しゃがむ動作もも全て踵に体重におけば行いやすくなる

ちなみに、立ち上がる・しゃがむ・後ろに下がる動作も全て踵に体重を乗せれば行いやすくなります。

まず、「立ち上がり動作」。跪座の状態から立ち上がる時、腰ががくんと落ちて姿勢が崩れる人がいます。この問題も踵を使えば解消できます。

跪座の姿勢から左膝を立てたあと、右脚を伸ばして行く時に、「右足踵」を踏むようにしてください。これによって、腰が落ちることなく、立ち上がり動作ができます。

次に、「しゃがむ動作」。しゃがむ動作では、腰が10センチ下がると同時に、弓の裏弭が10センチ下がるようにしゃがまないといけません。これも踵を活用して、容易にできます。

右足を後ろに引いた際に、膝を軽く曲げておきます。そこから、踵に体重を乗せたまま「後ろに倒れる」ような感覚でしゃがみます。すると、腰から下方に下げることができ、キレイにしゃがめます。

どの動作も、つま先荷重で脚をピント伸ばした状態では、非常にやりづらいです。しかし、踵に体重を乗せると、

踵を踏むと動作をゆっくり行いやすくなる

さらに、踵をふみ、膝関節を軽く曲げるようにすると、「腹式呼吸」がしやすくなります。

膝関節を曲げると、体の重心が下がって肩関節も下方に落ちます。この状態で呼吸をすると、肩や胸に力が入りにくくなり、腹に息が入ります。そのため、動作をしている最中に「腹式呼吸」で動作を行えます。

そして、腹で呼吸すると、自然に呼吸が「深く長く」なります。すると、体の緊張が緩和されて、自然と動作がゆっくりになります。高段者が実践するような「静かな動き」を意識せずとも、自然になります。

このように、腹で深く呼吸をすることで、気分が落ち着き、動作もゆっくりとした綺麗な動作になります。

踵を踏むと、周りと動作を合わせやすくなる

最後に、踵に体重を乗せると、「周囲との動作」を合わせやすくなります。これは、全員が本座に立って座ろうとするときに役立ちます。

隣の人と動作を合わせる時に、踵に体重を乗せて立ってみてください。おそらく、「隣の動きがよく見える」ようになり、動作を合わせやすくなります

両隣の人と動作を合わせるときに、踵を踏んで顎を引いてたつと、横目で隣の人の動作がよく見えるようになり、合わせやすくなります。

眼球には、視界を広げたり狭めたりする際に働く「毛様体筋(もうようたいきん)」があり、踵を踏むと、毛様体筋が緩みます。

踵をふみ、首の後ろを伸ばし、眼球をゆるめると、あたかも遠くの景色を眺めるような感覚が得られます。

これによって、横方向の視界も広がり、隣の人の動きやしぐさも目に入りやすくなります。

弓道教本の8つの動作の本当の意味

そして、ここまでの文章を読むと、弓道教本の基本八要程の本当の意味がわかります。

基本動作の8要諦を列挙すると

・形だけの死気体ではなく、気合いの発動と共に生気体で動作を行う

・胴造りを基礎をする

・起居進退をしっかり意識して行うようにする

・動作を腰から起点に行う

・動作では、息合いをしっかり行う

・動作には、全て残心が伴うこと

・動作では、目づかいを大切にすること

・最初は大きく動作を行う、修練を続けるうちに小さく流れうように行えるようにする

 

これらの内容も、全て踵に体重を乗せれば内容が理解できます。

 

生気体、死気体の本当の意味

まず、生気体、死気体の本当の意味から解説します。

弓道連盟の世界では、死気体は呼吸に合っていない形だけの体配、生気体は呼吸に合わせた生気体の体配と説明されることが多いです。

しかし、実際の意味は、死気体は「腹圧のかかっていない姿勢で体配を行うこと」であり、生気体は「腹圧のかかった姿勢」と解釈できます。

柔道関係者の書籍に夜と、生気体と死気体の違いと腹圧のかかった姿勢であり、その姿勢こそが全身の筋肉を脱力させる基礎となると説きます。阿波建造の書「弓聖」には、「腹で呼吸つく健康体、胸で呼吸つく普通健康体、肩で呼吸する病体」と解いております。

つまり、連盟の言われる形だけ=死、呼吸に合わせる=生ではなく、

死=腹圧がかかっておらず、肩に力が入った状態

生=腹圧がかかって、腹で呼吸できている状態

と解釈できます。と考えると、踵荷重で膝を曲げた「腹式呼吸がしやすい」姿勢をとることで、生気体になると解釈できます。

 

胴造りは踵に体重を乗せればできる

踵に体重を乗せれば、背筋と首筋が上方に伸びます。これは弓道教本一巻の胴作りにある「脊柱、項を伸ばし」の意味と同義になります。

 

起居身体をしっかり行う

止まった状態からしゃがむ、きざから立ち上がる、歩き動作をゆっくり行うなどの要諦は、踵荷重で行えば、スムーズに楽に行えるようになります。

 

腰から起点に行う

踵に体重を乗せれば、腰から動作がしやすくなることを意味しています。

 

動作では、目づかいを大切にする

踵に体重を乗せることで、眼球の筋肉の緊張が取れます。これによって、視界が狭くなった緊張した状態から解放されて動作がしやすくなります。

 

動作には息合いが伴う

踵に体重を乗せて、膝関節を軽く曲げた姿勢で動作を続ければ、呼吸が乱れることなく、かつ平静を保ったまま動作を続けられます。

息合いとは呼吸の「量、スピード、流れ」の三要素を合わせて解説されることがあり、踵に体重を乗せることで、この三要素は平静に保たれます(参考文献「現代弓道講座二巻、魚住文衛氏、尾州竹林派の」)。

 

動作には残心が伴う

ここで、弓道連盟流の解釈で「残心」とは、「一つ一つの動作を止めて、余韻を残す(残心)」と説明されます。しかし、武道全般で残心とは「動作中に何かの気持ちや動きが止まらず、常にその心や動きを残し続けること」と解釈します。

つまり、「残心=止めるもの」と解釈するのは間違っており、「残心がを伴う=ある動作や心の状態を維持する」と解釈しなければいけません。そこで、踵に体重を乗せる

 

最初は大きく、あとから流れるように行う

つま先に体重を乗せて、脚をピント伸ばして体配を行うと、歩き方も姿勢もガタガタになって下手になっていくのは理解できたと思います。踵に体重をかければ歩幅も広くできるし、その動作に慣れて流れるように行えることも想像できると思います。

 

以上のように理解すれば、基本動作も「踵に体重を乗せる」ことで、容易にできるようになる。と理解できます。踵に体重を乗せれば、全ての内容の説明がつきます。

もちろん、この内容の意味は間違えている箇所はあるかもしれません。なぜなら、私は高段者ではないからです。

しかし、つま先荷重の姿勢で体配を行なっている人に、立ち上がりは?起居身体は?生気体の意味は?など正確に説明できた人にまだ私は出会ったことがありません。つまり、高段者がわかっていない可能性だってあるということです。

加えて解説すると、全員がうまくできない体配には価値がなく、実用性もないし、普段の稽古に取り入れるべきではないと個人的に思います。

弓道の稽古で、体配動作を締める時間は非常に多いです。巷の連盟の練習日で体配稽古をするとなると、体配で8割、射で2割しか時間が避けないのが現状です。あるいは、連盟の講習会に出ると、半日かけた指導内容が「99パーセントは体配で2本しか弓を引かなかった」ということがあります。

にも関わらず、長年体配を続けているのにも関わらず、跪座で膝を痛めている高段者や肘を張ろうとすると肩が痛い教士もいます。というより、全国の弓道家で「俺は自信を持って体配動作を教えられる」と言える人が果たして何人いるでしょうか?

これだけの時間と労力を咲いているのにも関わらず、教本の体配に置ける抽象的な内容を一つも説明できないのでは、「勉強不足」と言われてもしょうがないと思います。

実際、当サイトの稽古会に来られた300人以上の方が地元の高段者の先生は体配動作を何も教えられないと回答もいただいています。「高段のくせに何もわかっていない」と言われるのも仕方ないと思います。

例えば、今読んでいるあなたは次のような体配動作が成り立っている理由を説明できるでしょうか?

・なぜ、矢番え動作では、筈を持って弦を引っ掛けるのか?

・跪座で左足をなぜ少しだけ浮かせるのか?

・どうして、入退場で礼を行うのか?

・どうして、甲矢は最初で、乙矢は後と決まったのか?

・なぜ、弦調べは行うのか?

このような、マニアックな作法の内容だって文献を調べれば意味は説明できます。しかし、このような内容も全て説明できる高段者も日本中に0.5%もいません。

したがって、踵を活用して、さらに体配動作を楽に円滑に行うようにしてください。少なくとも、私の経験と30以上の弓道連盟の現状を聞いて、高段者にただ体配の型だけを鵜呑みにするだけでは、下手になり、射も下手になっていくと考えております。

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