今回は、弓道における射癖を確実に、かつ根本的に改善する方法について解説していきます。
重要なことは、「射法を逆から考えろ」です。射法は遡って考えると、具体的かつ確実に射癖を改善するできます。
射法は逆からさかのぼると対策法が見つかりやすい
例えば、あなたが「引き分け」で
右手首が曲がって手繰った
とします。
そこで、考え方として、「引き分け」を直すためには、前の動作の大三と打ち起こしをどう正せばよいだろうと考えます。
例えば、大三、打ち起こしでの右手首や右肘の位置、あるいは姿勢の状態を振り返ります。すると、引き分けで右手首が曲がる理由が、
大三で弦に引かれた時に、右手の指に力が入って、それで手首を曲げてしまった
とわかるかもしれません。あるいは、
猫背姿勢になっていて、肩や腕の筋肉が硬くなってしまい、右手首だけで無理に引いてしまった。
かもしれません。であるなら、大三のときに肘の位置を考えます。
例えば、右肘を位置が体から遠すぎると、猫背姿勢になって右肩と右手に力が入ってしまいます。下の写真のように持っていきたい引き分けの位置を決めて見ます。
そうすると、弓道教本一巻には、「右拳の適切な位置は体から額一個から一個半空いているところ」と記されています。であれば、後ろから見て肩より拳一個、半個程度入ると猫背姿勢が改善できる可能性があります。
もし、右拳が体より一個程度空いているなら、右腕は後ろから見てそこで、少し額から遠ざけてみましょう。すると、肘は後ろから見て入りやすくなります。
もし、大三での右拳の位置が直らなければ、次に「打ち起こしでの肘の位置はどこが良いか」という風に逆算して考えると、自分に合った射法を見つけやすいです。
このように、射法八節は直したい部分から逆算して考えていくと、その人それぞれで適切な直し方が見つかります。そうして、具体的な解決作が出てきます。
・なぜ引き分けで右手首が手繰るのか?
→手前の大三か打起こしでの姿勢か右手の位置が悪いのではないか?
・どう悪いのか?
→大三の時の右拳の位置が遠すぎて、猫背になってしまったのではないか?
→大三のときに右手の指に力が入って、手首が曲がってしまったのではないか?
・どうすればいい?
→大三で右拳を体に近づけるようにする
→うち起こしで体に対してなるべく近づけるようにうち起こす
このように、射法を逆から考えると、具体的な解決方法が出てきます。
一部分で直し方を考えても意味がない
ここで、多くの人は引き分けで悪い癖が出たら、引き分け自体の形を直そうとします。
例えば、引き分けで右手首が曲がっている場合、引き分けに入ってから、「右手首を真っ直ぐ伸ばす意識」を持とうとします。あるいは、右手首を最初から伸ばしたままして、曲がらないようにします。
つまり、引き分けの癖を引き分けのときに意識を変えたり、最初から直そうとしたりします。しかし、これでは直りにくいです。
なぜなら、射法を八節動作のように「分解」して考えているからです。実際には、射法は「連続して続いている」ものです。
したがって、部分的に悪い部分を直そうとしても治りません。あるいは、最初に手首を伸ばしていれば、最後まで伸びたままでいく訳ではありません。
射法は連続して続いているため、途中から右手首の位置や力加減は変わっていきます。なので、射法は連続しているものと捉えて、「悪くなった部分の手前の動作から直す」ように考えるのが大切です。
コツは姿勢と右拳の位置をみる
そして、前の動作に遡りますが、前の動作の「姿勢」と「右拳」の位置をみるようにしてください。
先ほど、手前の大三の動作が悪くなったから引き分けの動作が悪くなると説明しました。具体的には、大三の「姿勢」か、「右拳」のいずれかが悪い形や状態になっている可能性が高いです。
どちらかの部位が悪くなっていると考えれば、射癖の根本原因が見つかる可能性が高いです。
この他に、例えば打起こしで両手に力が入っている場合は、
・手前の弓構えでの姿勢が悪くなっているかもしれない
・手前の弓構えで右拳に力が入っているかもしれない
と疑ってください。
そして、姿勢の場合は、「背中が反っているか、曲がっているか」か「両肩に力が入っているか、ねじれているか」のいずれかになります。右拳については、「手首が不用意に曲がっている」か「右手指自体に力が入っているか」のいずれかになるでしょう。
この二つの内容を知っているだけで、あとは組み合わせです。自分自身で射癖の直し方を解決することが十分可能です。
今回例に出した打起こしについては「両肩に力が入っている」なら、弓構えで「背中が曲がって猫背」か、すでに両肩に力が入っている可能性があります。であるなら、弓構えで猫背を修正し、両肩を緩めるように意識します。
このように一部分だけを考えていては、射癖を直すのは難しいです。なぜなら、射法の動作は全てつながっているからです。そこで、部分的ではなく根本的に直せるように考えましょう。
それは、八節を逆から遡って考えることです。