「打起しは高くした方がいいですよ」と言われたかと思えば、別の先生には「もっと低くしてください」と指摘される。大三の位置も、弓構えの形も、先生によって言うことが全然違う…。
こんな経験、弓道を始めて1年くらいの方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。私自身、初心者の弓道家の方々と関わる中で、ダントツに多く聞く悩みがまさにこれなんです。「一体、私はどうすればいいんですか?」という切実な声を、何度も耳にしてきました。
今回は、この「先生によって言うことがバラバラ問題」に対して、具体的な対処法をお伝えしていきます。
結論:型を完成させようとしないでください
最初に結論をお伝えします。★ 型を完成させようとしないでください。これが最大の答えです。
「え?型を学ぶために弓道教室に通っているのに?」と思われるかもしれません。でも、ここに弓道の難しさと、同時に解決の糸口があるんです。
柔軟に変えられる方がお得なんですよ。今の弓道の世界では、柔軟に対応できるように稽古のやり方を変えた方が、結果的にあなた自身が迷わなくなります。
なぜ先生によって言うことがバラバラなのか?
まず、この問題の根本原因を理解しておきましょう。実は、答えは意外とシンプルなんです。
★ 先生自身も、定まった型を持っていない場合が多いのです。
例えば、弓道の先生が5人いたとしましょう。同じ意見になることは、ほとんどありません。だいたい2人か3人くらいバラつきが出ます。中には全員バラバラということもあるんですね。
これは何故かというと、その先生が持っている「綺麗な形」のイメージが、それぞれ違うからなんです。
本音と建前の話
弓道の世界には「型があって、綺麗な形になり、そして当たりが出る」というイメージがあります。でも、正直に言いますと、この3つは必ずしも連動していません。
先生の形をやったからといって、誰かに「綺麗ですね」と言われるような射形になるわけでもなければ、それが的中につながるかどうかも、あまり関係ない話なんです。
弓道が難しいから、ある程度の型は教えられても、それが必ずしも正解かどうかは分からない。だから「いろんな先生に見てもらいながらやった方がいいですよ」というニュアンスで教わることになるんですね。
形ではなく「力のかけ方」が正解
ここで重要なポイントをお伝えします。
例えば「大三の右肘の位置はどこが正解ですか?」と聞かれることがあります。弓道的に言うと、位置に正解はないんです。
★ 大事なのは、力のかけ方がどうなっているかです。
一般的には「肩が下がると、右手の位置が下がる」と思われています。でも実際に弓道をやると、逆なんですよ。肩が下がると、拳が上がるようになっているんです。
この入り方から入ってしまえば、位置がどちらであるかは関係なくなります。だから私のような動きで見ている人間からすると、正直、高いとか低いとかどっちでもいいんですね。
「じゃあこういう風に動かしましょう」というアドバイスをするのが本来の指導だと思うのですが、残念ながら形だけを言う先生が多いのが現状です。
具体的な対処法:体を柔らかくするために使う
では、先生に言われた内容をどう使えばいいのか。ここからが実践編です。
★ 型の知識や指導内容は、型の完成には絶対に使わないでください。体を柔らかくするために使ってください。
使おうとすると迷います。悪い方向に行く可能性が高いです。だってできないのに「ああしろ、こうしろ」と言われるんですから。
答えは「大きく使う」こと
打起しは「低くしましょう」「高くしましょう」と言われますよね。これ、答えは簡単です。★ 高い打起しができているのが良いのです。
なぜなら、高いところから低く下げるのは簡単だからです。でも、低いことしかやっていなくて、いきなり「高く上げろ」と言われたら、できないじゃないですか。
これを全ての動作に当てはめてください:
- 弓構え:腕を伸ばす
- 打起し:高くする
- 大三:広く取る
- 引分け:大きく取る
- 離れ:大きく離れる(大離れ)
★ これを万事徹底してください。どんな先生に何を言われても、あなたの中の基礎はこれだと思ってください。
体を柔らかくする具体的な方法
では、具体的にどうすれば体が柔らかくなるのか。弓構えから順番に説明していきます。
弓構えの作り方
まず、弓構えですが、楕円形・円相・肘張りと、いろいろな形を教わると思います。私のやり方は、★ これが全部できるような姿勢を作ってしまうことです。
具体的な手順:
- 恥骨をグッと引き上げる
- やや踵側に体重が乗るようにする
- 腕の筋肉をリラックスして、腕が吊り下がっているような状態を作る
- 体を前に傾ける動作で肋骨を起こす
この状態を作ると、ここが柔らかくなります。柔らかくなった状態で弓構えをすれば、その後の打起しが高く上げやすくなるんです。
腕の筋肉の使い方
腕の筋肉をこう振ってください。例えば楕円形にしても、円相にしても、近づけたとしても、普通にやると力が入ってしまいます。
でも、腕の筋肉をリラックスして振る体操を先にやっておけば、5人の先生に全然違う弓構えを言われても、全部肩の力が抜けて打起しができるようになります。
この体操を1個提示すれば、解決は終わりなんですよ。でも弓道ではこれが教えられていないのが現状です。
手の内の問題について
よく問題になるのが、弓構えで天文筋を意識した手の内の形を作ることです。
★ これは斜面打起しの内容であって、正面打起しでやるものではありません。
正面打起しでこれを握るという行為をした時点で:
- 大三で弓が回りにくくなる
- 弓返りしにくくなる
- 押せなくなる
- 左手が落ちやすくなる
このような問題が起こります。射形を崩すような教え方をふっかけておいて、射形が崩れたら何か言うというのは、私は良くないと思います。
でも、グーッと伸びた状態で作って、全部伸ばした上で持っていくと、ちょっと固く握っても体は伸ばしやすくなります。
マインドの転換:基礎は体の中にある
自分一人で稽古するときは簡単です。伸ばして、大きくグーッとやる。その後に先生が入ってきて「こうした方がいいですよ」「ああした方がいいですよ」と言われます。
ここで、全部が伸びるような引き方を基礎として頭に入れておくと、「じゃあこの中から、こういう風に調節しよう」とできるんです。
この知識を型の完成に使ったら絶対に崩壊します。言われている内容が何なのか、よく分からなくなります。
でも、高いことばかりやってきた人にとっては、低くするのが楽になります。「俺の基礎のおかげで、言われた内容にちょっと修正が効くようになってきた」というマインドになれるんです。
★ 基礎は型じゃなくて、あなたの体の中にあると思ってください。
まとめ:体をとにかく全部動かして引く
今回お伝えしたことをまとめます。
- 先生によって言うことがバラバラなのは、定まった正解がないから
- 型を完成させようとせず、柔軟に対応できる体を作る
- 弓構えは伸ばす、打起しは高く、大三は広く、引分けは大きく、離れは大離れ
- 体を柔らかくするために、恥骨を引き上げ、踵重心で構える
- 基礎は型ではなく、あなたの体の中にある
体をとにかく全部動かして弓を引く。これをやっていただければ、どんな先生に何を言われても「あ、この先生はこっちなんだな」「あの先生はこっちなんだな」と、受け入れられるマインドになっていきます。
弓道の高段者の先生が2個以上、3個以上、違った内容を指摘されたとしても、全部受け入れられるようになる。それが、体の中に基礎を持つということなんです。
ぜひ今日の稽古から、「大きく使う」ことを意識してみてください。あなたの弓道が、きっと変わっていきますよ。






