大三を取るときに、なんだか腕に力が入ってしまう。そんな経験はないでしょうか。打ち起こしから大三に移行する際、手首がカチカチに固まったり、左の親指の付け根に豆ができたりしていませんか?私のところにも「強い弓が引けない」「なぜか力んでしまう」という相談が数多く寄せられます。
実は、その力みの原因は筋力不足ではありません。多くの場合、そもそもの姿勢の構え方に問題があるのです。私は「立ち前の射」という考え方を提唱していますが、★ 立った構えで弓を開く方というのは、当たるかどうか、綺麗な形になるかどうか、強い弓を開けるかどうかが全て決まってしまうのです。
今回は、大三で力が入る根本的な原因と、その解決策を徹底的に解説していきたいと思います。
結論:立った構えで「無重力感」が得られれば大三は自然に取れる
まず結論からお伝えしますと、正しく立つことができれば、弓を持った瞬間に「無重力の感覚」が得られるのです。私の個人指導では、立った構えを変えるだけで弓力を3キロ、4キロと上げることができています。
例えば、13キロの弓を引いていた方があっという間に15キロの弓を開けるようになったり、50歳60歳の方でずっと12キロから上げられなかった方が、16キロを楽勝で開けるようになったりしています。★ たった1回の個人指導で、立った構えを変えるだけでそこまで到達できるのです。
弓で弓を開く:日本弓の構造を活かした物理学的アプローチ
大三という動作は、立ち前の射において物理的に楽に弓を開くための重要なテーマです。私が目指しているのは「弓で弓を開く」という状態です。
日本弓は上が長く下が短いという特殊な設計になっています。これは昔の先人たちが合理的に作った結果であり、私はこの設計を「両腕に負担なく弓が全工程で開けるようになる構造」だと考えています。
張力が満帆になっている状態のときに一番集中するのは、左手と左の肩です。理論上言えることは、弓の重心が左側にあるため、腕の力を抜くと自然に弓が回転する動きが行えるようになります。
さらに、親指を力を入れて突っ込むのではなく、力を抜いた状態で上を向けると、回転する際に引かれる状態によって弓が上にちょっと引き上がるのです。この原理でグッと引き上がるようになり、すでに自動的に筋肉が伸ばされた状態で大三動作が作れます。
★ つまり、弓の重さで弓が結果的に開かれるという形が作れるのです。これが弓を楽に開く構造の本質なのです。
大三で最も重要なこと:「流れ」を作る
勝手に腕の筋肉が弓によって伸ばされ、その伸ばされた状態を維持すれば、大三から引き分け動作は楽に開かれます。では、この「弓で弓を開く感覚」を得るために大三で何が重要なのでしょうか。
それは★ 流れを作ることなんです。通常の大三動作では、どこかに力を入れて腕の筋肉をピタッと止めている状態からグッと動かしがちです。しかし、弓によって止まることもなく力がかかり続けている状態を作りたいのです。
このような状態を作ることができると、大三の動作では両腕が伸び続け、左足の筋肉もずっと伸び続けている状態になります。まさにお腹の筋肉を中心に、お腹の筋肉も固まっていない、全身の筋肉が伸びている状態を作ることができるのです。
この状態が作れると、大三では勝手に肘が張られ、手首の力が抜け、上押しが自然とかかったような形になり、左の肩も下がって両肩の線が揃い、矢先も水流れの状態に結果的になります。
現代の弓の構造と鳥打ちの許容
ここで重要な補足をしておきます。現代の弓の構造、特に船底の弓に関しては、矢先がそのまま平行の状態を作ることができます。しかし、江戸なりという下がちょっと立っている弓、直心の弓も寺内弓具の弓も、他の竹弓も基本的に下が立っている状態になります。
そうなると、左の肩を下げて少し上に上げた状態にするので、若干鳥打ちになるタイミングが来るのです。★ 私はこの鳥打ちにちょっと上がったタイミングを作るということを積極的にやるべきだと考えています。
なぜなら、船底で上の部分と下の部分が均等に丸くなっているのであれば、均等に圧がかかるのでそのまま手首を横方向にかけても問題ありません。しかし下が立っているのであれば、手首が曲がった瞬間に左の圧力が強くかかってダメになるのです。少し上にふわっとかけた状態で肩を下げて拳が上がる工程が来るので、矢先がちょっと上がる瞬間があります。これを許容しない限りは、楽に大三が回せる動作を作ることはできないと私は考えています。
力が入る根本原因:足が踏めていない
多くの人たちが、両腕と両足が伸びた状態を作れていません。大きく形を作ろうとしても、全部の筋肉が伸びた結果上にも上がってくれるという状態にならないのです。
★ 下に足が伸びる力が弱っていると、当然上に伸びる力も弱くなるのです。足がしっかり踏めている状態ができなければ、腕の筋肉は伸びた状態を維持できません。
例えば、力を抜いた状態であればずっと伸びた状態になりますが、足を踏んで60度にして前かがみにすると、2秒待ったらどこかが縮みます。そうすると力の流れが縮むのです。こっちに戻ってくる。これが大三における「なんか力が入る」「弓を引っ張って形を作ろうとすると力が入ってしまう」という状態の根幹になってくるわけなんです。
無重力感の境目:調子がいい人と力が入っている人の違い
大三において、打ち起こしにおいて調子がいい人となんか力が入っている人には境目があります。それは、構えを作ると弓がふわっと浮いた感覚が得られるかどうかです。
もしも足の筋肉がしっかり下に踏めている状態であるならば、弓を上に上げた時にフワッと拳が軽くなって取りやすくなる感覚があるのです。これが私が最近よくお話ししている「張りと伸びと流れができる」という大三の取り方です。
弓構えで張りを作っておけば、弓によって腕の筋肉が伸びるように動きができて、この全体の流れで流れができて、それが開く力につながっていくという考え方です。
皆さん、フワッと感ってありますか?打ち起こしから大三を取る時に腕を上に動かして大三を取るとき、★ 何も持ってない時と同じ感覚で大三が取れていますか?ちょっとでも力が入っていたらダメなんですよ。左の親指のところに豆ができるような状態もダメです。
伸びが消える二つのパターン
上押しをかけるとか、打ち起こしを低くするとか、大三を遠くに伸ばすとか、こういうのをやると、その形にとらわれて自分から腕の筋肉を縮めて固めて伸びが消えるのです。
この伸びの消え方には二通りあります。
- 腕の動かし方がダメで縮むパターン:弓の重力をかけずに、自分で腕を動かしてしまう。骨盤を起こして胸の筋肉も広げた状態で力を抜けば腕は自然に動くのに、逆方向に逃げてしまう。
- 股関節が縮んでいるパターン:座る姿勢に適応してしまい、普段立っている時も太ももの付け根が縮んでいる状態。
自分で最後グッと引っ張る動きが出てしまうと、力が入ってしまいます。我々がやりたいのは、最後まで伸び続ける状態なのです。弓道教本一巻の写真にもあるように、太ももの付け根から下っ腹にかけて伸びる力が出ているような状態を作らなければいけません。
高校生・大学生・社会人に多い落とし穴
特に高校生や大学生に多いのですが、2年生になってきて成績が落ちるという現象があります。私も同じでした。2年生になって成績がドツボに陥ってしまったのです。
これはなぜかというと、★ 座り姿勢が多くなることによって胴造りの姿勢が崩れてくるからです。椅子に座る姿勢は股関節を90度に曲げた状態ですが、これに1年2年と適応してしまうと、普段立っている時も太ももの付け根が縮むようになります。
これが固定化されると、打ち起こしするときになんか力が入る、大三の時もなんか力が入る、という状態が慢性化します。高校1年生や中学生のとき、最初何も考えないで的を見ないで、ただただ矢に対して弓を引くのに集中して引っ張って放っていった時の感覚、多分消えていると思います。
高校生や大学生は体力もありますし、筋肉もありますし、成長ホルモンの関係で力をどんどんかけていこうという意欲性が高いので、たとえ股関節が縮んでいたとしても無理やり気合と根性でまっすぐ揃えようとしてしまいます。しかし、★ 気合で物事を乗り越えようとした瞬間、あなたの負けは確定すると思った方がいいです。
練習で当たるのに大会で当たらない理由
練習の時にはめちゃくちゃ当たるのに、いざ大会の時になると全く当たらないということがあります。それは何かというと、股関節のところが縮まっているからなのです。
本来は立った状態で股関節が伸びている状態で、頭への血流も良く、喋りやすいような状態を作っておかないと、記憶力や学ぼうという力、意欲がちょっとずつ減ってくるのです。この本来の自分の最大値ではない状態で、低いパフォーマンスの中で一生懸命やろうとしても、うまくいきません。
具体的な稽古法・練習方法
- 股関節を伸ばす習慣をつける:椅子に座る姿勢の反対の動き、つまり股関節を伸展させる動きを日常的に行う
- 弓構えで張りを作る:弓構えの段階で、足から上半身まで張りのある状態を作っておく
- 弓の重さを感じる:打ち起こしで弓を持ち上げた時に、フワッと軽くなる感覚があるか確認する
- 無重力感のチェック:何も持っていない時と同じ感覚で大三が取れているか自己確認する
- 流れを意識する:ピタッと止まる瞬間を作らず、常に力がかかり続けている状態を維持する
- 上押しをかけに行かない:形にとらわれて自分から腕の筋肉を縮めることを避ける
まとめ:構造から考えれば強弓は必ず開ける
今回お伝えしたかったのは、大三で力が入る原因は筋力不足ではなく、立った構えにあるということです。股関節が縮んでいる状態では、どんなに頑張っても伸びる力は生まれません。
ふわっと感を作りに行こうとしてもダメですし、手を軽くしに行こうとしてもダメです。言葉や感覚にとらわれるのではなく、最初の姿勢の作り方から考えて、太ももの付け根が固くなってしまうと伸びる感覚が消えてしまうことを理解してください。
大の字になれば、あなたは最強です。張りを作っておけば、弓によって腕の筋肉が伸びる動きができて、全体の流れで開く力につながっていきます。立ち前の射を意識すれば、必ず強弓は開けるようになります。ぜひ今日から、立った構えを見直してみてください。






