弓道教本だけでは、射の技術向上が望めない理由

弓道の勉強をするとき、あなたはどのような勉強をするでしょうか。いまの私は弓の引き方をアドバイスする立場にいますが、「教本を買って読むこと」を考える人が圧倒的に多いように感じます。

弓道教本とは、全日本弓道連盟が発行している体配から、弓の引き方まで説明された書籍です。ただ、よほどの天才でない限り、この教本だけで弓道を学ぼうと絶対に思わない方がいいです。その理由は単純であり、わかりにくく、読みずらいからです。

 教本は読みにくく、理解しずらい
例えば、私は弓道のサイトを運営しており、月に3万人以上の方が閲覧しています。ここに弓道教本の内容を要約、加筆した内容を記しており、多くの方が閲覧、勉強されています。その他、流派の射法書も合わせると、100ページ以上存在します。

「理論弓道ー範士の先生の射法詳説(教本二、三巻の文章を引用しています)」
「流派弓道ー(現代弓道講座の二巻、その他日置流、小笠原流、竹林派の射法を引用しています)」

このように記載されていると、「教本の情報は有益ではないか」と思われるかもしれません。確かに、これだけのページがあれば、弓道に関する知識は問題なくつきます。そして、射の技術もそれなりに向上させることができます。これらの知識を実践して、実際に昇段もしました。

ただ、現実的な話をすると、これだけの内容を理解するまで8年以上の歳月がかかっています。先ほど申し上げた通り、教本の文章には「精神的」「抽象的」な内容が非常に多く、自分なりに理解するのに、多大な労力を費やします。ここまで文章を記した時間を考えると、頑張ったわりの見返りが少なすぎます。

それでは、このサイト以外にスポーツのサイトを運営しています。こちらの内容は弓道の世界のような抽象的な話は全くなく、「物理」「解剖学」などの内容が含まれています。このサイトは弓道サイトに比べて、アクセス数は少なく、運用年数も少ないです。

ただ、そうした「物理」「解剖学」といった内容から、スポーツの動きや身体の怪我の改善などを図った結果、多くの方から、「体の痛みが改善した」「スポーツの実力が向上した」という報告をいただいています。さらに、教本の内容が以前に比べ、よりよく理解できるようになりました。

同じ現象は、実際に自分が弓道の指導をしている他の方にも当てはまっています。精神的で弓道で使う専門用語ではなく、むしろ「人の体の名前」や「押す方向」といったなじみのある言葉や考え方で弓道を説明することで、ほぼ全員の射癖が改善され、実力が向上していっています。

このような実体験から、「教本だけ学ぶことは非常に危険である」ことが分かったわけです。本に書かれた内容を具体的に射の動きに取り入れることを考えると、「教本以外」の内容を学ぶことが賢明です。

 教本だけでは弓の引き方はわからない
ただ、教本の内容だけ学び、弓を引くときの「キレイな射型」を学び、弓を教える人が存在します。ただ、残念ながら、指導するのを含め、教本だけで弓の引き方を勉強することは難しいです。

確かにトップの人たちは高い実績を出し、人に指導して大きな功績を出しているかもしれません。ただ、もっと他の勉強をして、弓の引き方に取り入れていれば、さらに弓の技術は上達していたのではと感じています。

また、彼らのほとんどは教本という一つの媒体に依存しています。これはとても危険な状態であり、聞き手が抽象的な内容がわからなければ、一気に弓を教えることができなくなります。また、年齢を重ねて筋力が衰えてしまった場合、今行っている弓の引き方が使えなくなる可能性があるため、将来性という意味ではあまり期待できません。

本来であれば、幅広く姿勢や身体について勉強する必要があります。例えば、私であれば、単に「弓道に関するサイトだけを保有し、弓道の本だけ勉強している」という状況はとても危険であるといえます。1つの考え方や弓の引き方に依存しているため、その弓の引き方ができなくなった瞬間にすべてが終わります。

そのため、私は「物理」「生理学」「解剖学」「神経学」「仏教」「合気道」「剣術」など、他の分野の勉強もしています。また、医学、治療に詳しい稀有な治療家などに考え方を学ぶ機会を自ら作り、実は身体にまつわるありとあらゆる知識を駆使しています。

本気に書籍を勉強し、弓の引き方を変えたり、指導するのであれば、このように幅広く勉強しなければいけません。教本という組織に属する商品に乗っかって満足してはいけないのです。また、抽象的で具体的に何を行なえばいいかわかりにくい本の文章を眺め、なんとなく稽古している場合でもないのです。

 本当の教本の勉強の仕方
教本だけでは、書籍の勉強はしずらいことを述べました。これは、弓を引けば現象としてわかると思います。いくら「伸合」「詰合」「引かぬ矢束」といった言葉を知ったところで、弓の引き方は変わりません。結局のところ、「体を動かす」ことに関しての本質は変わらないのです。

例えば、「伸合」「詰合」と言われて、何の筋肉が伸びれば良いのか?と思考したとします。さらに、矢束一杯に弓を引くとするならば、どのように、弓を押し開いていけば、手首や肘に負担なく弓が押せるのかと考えるとします。

これは、先ほど述べたように、「教本の文章を具体的に他の学問や分野の視点を取り入れて、弓の引き方に応用している」という作業をしていることがわかります。

ただ、こうした内容をまた物理の本を開いたり、別の分野を取り入れることは多くの労力が必要です。さらに、本当に弓の引き方が正しいのか確かめるのも非常に苦労するため、結局のところ多く苦労を重ねます。

もし、あなたの弓を引いている先生が様々な分野に詳しくて、その上で適切な弓の引き方を教えていただけるのであれば、教本だけでも問題ないかもしれません。しかし、教本しか教えられない場合は、あなた自身が教本だけ学んで弓を引くことは明らかに向いていません。必ず、他の分野も積極的に勉強し、総合的に理解するように努めてください。

弓道を勉強するとき、どのように取り組むかによって将来性が大きく変わってきます。そういう意味で、多くの人が思いつきやすい「教本だけ勉強すること」だけは絶対に辞めてください。

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