これまで弓道の勉強を本格的にしたことない人が理論的に勉強をしだすと、「段」や「文章に書かれた知識」などを取得しようとします。
あるいは、高い的中率を求めて、テクニック的な内容を学びます。
ただ、これらを学んだところで、射に関しては意味がないどころが、むしろ害を及ぼす可能性が高いです。
というよりも、段を取りに行こうとして、「キレイな形」を追い求めている時点で射を深く学ぶことから大きく逸脱しています。
なぜなら、これらを学んだところで、それを活かすための「実践法」や考え方が学べないからです。これについては、情報の大元となる発信源がどこにあるのか見極める必要があります。
情報の大元に着目する
現在では、機械や輸送物を使えば、あらゆるものが運搬できます。
この中で、輸送に適しているものは何でしょうか。
それは、軽くて高価な商品です。
かつて、ユーラシア大陸にはシルクロードがありました。
この道は別名「絹の道」とも呼ばれ、当時はシルク(絹)が軽くて高価な取引物だったのです。
それでは、これら輸送するものの中で最も軽い存在は何だったかわかるでしょうか。
その答えは「情報」です。
情報には重さがありません。そして、情報は知っているかどうかで戦争の勝敗を左右するほど、重要な存在でした。
ただ、このときの情報がどれだけ正確なのかについて着目することはさらに大切な作業だったといえます。
人が情報を伝えるとき、必ず脚色されて伝わります。「二番煎じ」という言葉がある通り、情報になった時点で誰かに脚色がついています。
つまり、ありもしないことが付け加わり、話が勝手に大きくなってしまうのです。
例えば、武道の世界では「すり足」と呼ばれる足の動きがあります。
「すり足」に関する由来は、江戸時代の武士の歴史を調べるとわかります。
昔、大名や将軍がいる空間では他の人は余計な音を鳴らさないようにしていました。当時は、今の建築構造と違って、足音や物音が直に響く作りであったからです。
そのため、多くの武士たちが物音を慣らさないように、廊下や通路を歩く習慣を身につけていました。そこで、すり足という歩き方が実践されていました。
しかし、現在のすり足は「その方が足の負担が少ない」といった情報が付け加わっています。それによって、有名な陸上選手の走りに引用されています。
情報の正確性を高めることは非常に大変な作業といえます。ただ、これらの内容の真偽を確かめるため、図書館に行ったり資料を取り寄せたりする人も存在します。
そのような人では、その情報が真実か嘘か明確に判断できます。
「伸合」「詰合」など難しい情報を知っていても意味はない
あらゆる情報での中で最も価値があるのは、「その人が実際に経験した内容」です。
そして、できれば自身で体験し、実践したものが最も価値ある情報であると言えます。その次に重要なのは、実体験した人から直接聞いた情報です。
ただ、残念ながら、これらの情報が世間に伝わることはありません。なぜなら、本当の有益な情報は人からでしか伝わらないからです。
前述のすり足の話でも、「すり足」の情報だけ知って科学的分析を行った人と、本当にすり足について実際に調べた人であれば、同じ「すり足」の内容でも、聞き手のとらえ方が変わってしまいます。
これらを踏まえたうえで、あなたの知っている情報や内容はどこから手に入れたものでしょうか。
多くの人は、本や雑誌、知り合いや友人であることが多いです。また、それらの本の情報をも「誰かから聞きかじった内容を多少付け加えただけの情報」だけで、真意をついてない場合がほとんどです。
そのような情報に価値はなく、むしろ害にしかなりません。
本当に重要な考えとは、その内容の大元にまで足を運んでようやく知ることができます。本物の内容を知りたければ、情報の大元を探らなければいけません。
そして、その内容のほとんどが、実体験に基づく考察であります。
専門的な内容や知識は持っていても意味がない理由
同じ視点で見れば、段を取る作業がほとんど弓を引く動作に活用できないことが容易にわかります。
その理由は、取得したとしても、実際に弓の引き方を説明できないケースがほとんどだからです。
もしも、あなたの道場に実際にものすごく弓の引き方を隅まで調べ、自分のものにしている人がいれば、ぜひとも習った方がよいです。
しかし、そのような人は段を取得するということはほとんど行わないため、実際に出会うことは稀です。そのため、多くの先生が難解な知識や形だけを教わるだけにとどまります。
段を取得した講師は「五十重文字」や「伸合」「詰合」という知識を教えられても「弓を体全体で押し開く」という根幹となる部分を明確に教えてはくれません。より、正確に言えば、「教えられない」という言葉が正しいです。
実際、彼らに「ゆるみのない離れを引き出すために必要な関節の動かし方」「また、それを実現させる稽古法」「人工関節の方に適切な足踏みの開き幅を教える方法」「少し上のkgの弓を骨格を整えて引く方法」などの質問を投げかけたとき、明確に答えられないはずです。
これらは実際に経験した人でなければ分かりません。そのため、弓を引く行為を学ぶとき、教わる相手を間違えてはいけません。
あなたがこれから本気で弓を学ぼうと考えている弓道初心者であれば、行うべきは「あなたが目指すべき尊敬している人の中で、圧倒的な実績を出し、弓の引き方を体現できる指導者」に土下座をすることです。
その人の元で、本の読み方から稽古方法まで、全てを学びたいと頼み込むのです。そうすれば、実際にその人が体現している弓の理論や稽古方法など、生身で会得することができます。このときに学んだ「実学」が後の何百万となって返ってきます。
もし、「面倒くさいのができない」「簡単に上達できるコツがほしい」「無料で親切に教わりたい」などと考えるのであれば、弓の引き方に向上はあり得ないので、形にとらわれ続けて弓を引くことをお勧めします。
射の技術を向上させるのは簡単ではありません。その中でも、現実世界で、実際に弓を教え、引き方を体現できる指導者を選択することは大切です。
もしも、この最初の段階で楽をして、知識や形だけで的中を求めていては、射の技術向上は無理と考えるしかありません。
あらゆる商品で最も価値があるものは情報です。ただ、本当に必要な情報はあなたが多大な努力を重ねてようやく見つけることができます。
多くの人は情報の入手先を間違えて、大元が間違った情報を入手してしまう可能性があります。しかし、あなたは確実に実力向上を目指したいのであれば、適切な場所から情報を手に入れるようにしましょう。