現在の弓道界では「円相」「弓懐」を作ることは当たり前のようにされています。ただ、射法の中で、弓構えの動作で円相を重んじた流派は尾州竹林です。尾州竹林では重要な教儀とされています。
ここでは、弓構えで左右の力をつりあわせるべきポイントについて解説していきます。
弓構えで左右の力をつりあわせるべきポイント
両肘の形はおおむね円形にする上体を力まないようにして両肩はやや押し下げる気持ちにして、、丸いものを抱くような恰好にします。尾州竹林の弓構えはこの後、斜面打ち起こしの準備を整えます。弓を左斜めに送るようにします。
尾州竹林は斜面打ち起こしです。弓を左斜めに送り、「弓懐」を作ります。そして、以下の四箇所が左右に力がつりあい、安定します。
左拇指根と右肘の力のかかり具合
左腕と右腕の関節の曲がり具合
左肩、右肩
首(物見)
これら4か所が斜面打ち起こしを行ったときに崩れてしまう箇所です。これが崩れてしまうと、前述の足踏み、胴づくりが弓構えで崩れてしまいます。
そのため、弓懐を作るときに両腕の力が凝らないように力をつりあわせることを心がけます。
最初に弓懐を作り、手の拇指根と右手の肘でつりあわせるようにします。左手の拇指根は中指に重ねたまま弓のない竹の外角になれつき、ほかの三指も自然に柔らかく締まります。
さらに、右腕、左腕の状態は左腕は彎曲したままで、右拳が左腰の前面に来る程度にします。このとき注意するべきことは左肩が引き退き、右肩が的に向かって後方に向かいやすいので、そのような形にならないように注意します。
この両腕、両肩の関係を保ったまま、物見の動作を行います。物見を定めるんは、早からず、遅からず自然な動作とし、その形は鼻の位置に右の耳を置き換えるのが良いです。
すなわち首筋を正直にして真左を向きます。これは各人の骨格によって、このようにできない人もいますが、物見の影響はのちの引き分けにも影響されます。
物見の不正と矢乗りを理解する
物見の不正には物見が「向きが不十分」「照る」「顔が弓の中に入る」「仰ぐ」「伏す」の4種類あります。物見の不正はねらい目のズレと関係してくるので、正直に向ける必要があります。
向きが不十分→矢乗りが的の前になる
照る→矢乗りが的の後ろになる
顔が弓に入る→矢乗りが的の後ろとなる
仰ぐ→矢乗りは上になる
伏す→矢乗りは下になる
その他弓懐においての口伝
鳥兎の梯(うとのかけはし)
左拳を鳥にたとえて(あるいは日にたとえて陽とする)、右拳を兎にたとえて(あるいは月にたとえて陰とする)、左右両拳の和合を直の梯とみなし、左右の直であることを懸け合いといいます。
矢筈上下
矢の番え方は弓と矢が十文字になるように番えるのが最良という伝え。これは五重十文字の一つに教えられています。
以上により、弓構えで左右に力がつりあい、骨格にずれのない射形を身につけることができます。