斜面打ち起こしの内容をそのまま正面打ち起こしに取り入れるには

尾州竹林では斜面の構えで打ち起こしを行います。そのやり方は目付、左拳、右肘、打ち起こしの停止、この四部分に注目して説明されています。

ここでは、打ち起こしでの各体の部位で気を付けるべきポイントを解説していきます。

 目付で大切な「雪の目付」「一分三界」を理解する
打ち起こしをする前に目付を行います。目付については「雪の目付」「一分三界」という教義があります。

雪の目付とは、降る雪の一片を見定めて、地面に落ちるところまで見究めるということで、心眼を持って見定めて目中物(的)をわがものにするという教義です。


一分三界とは一分とは尺度の一分、さすなわち約三ミリできわめて小さい目中物のことであり、三界は仏法でいう欲界、色界、無色界、三千大千世のことで、天地界の膨大なところという意味です。

一分三界の目付とは小さい目中物でも心眼を持って見れば、三界のごとく大きなものに見開くことができ、逆に大きな目中物でも、その中の一分の錐揉(きりもみ)の所に目付をする心を言います。

 左手、右手は左手を伸ばしつつ右手は順応させる
打ち起こしをするには、弓を構えた状態から、左手を徐々に伸ばしつつ、弓の内竹の外角を拇指の横腹の根元で押し、右手は手首や拳を力を入れず、肘を主力とし、左手に順応させます。

左右押すとも引くともなく引き分けながら左斜め上に打ち起こしていきます。このとき、矢束が半分ほど残る程度となります。

このとき、矢は水平よりも矢先の方が少し低めになるほうが良いです。それは左肩と左手を強くするためです。打ち起こしの際に、左手を始めからいっぱい伸ばして打ち起こすことは方釣り合いとなり、右手離れとなるので、尾州竹林ではこの方法を用いません。

 打ち起こしを終えて2秒間止まる理由
打ち起こしが終わって次の引き分けに移るまでの約二秒間は、外見上は停止の状態にして、いわゆる中力をとります。

ここで、息合いの調整、左右の均衡の調節が必要ならば、ここで静かに調整をかけます。引き分けに移ってから左右の均衡の調整をとるのが難しく、この外見的静止状態の時でも内面的には決して停滞してはいけません。

 
 正面打ち起こし、大三で必要な要素が尾州竹林の射法と共通している
現代弓道では、斜面打ち起こしがあまり取り入れられないために、斜面打ち起こしの重要性はあまり説明がないですが、正面打ち起こしの必要な要素はすべて斜面打ち起こしに入っています。

・右拳は力を入れず、引かれるようにする
・矢先は水平、それよりも矢先が下がるようにする
・停止して、左右対称の均衡を合わせる

これらの要素は、斜面打ち起こしのからきています。小笠原流では、大三をとることは書かれていますが、大三の重要性について、呼吸や左右の釣り合いで説明したものは尾州竹林の方が詳しいです。そのため、参考にできる部分が多くあります。

斜面打ち起こしでは打ち起こしの終わりが大三をとった形になります。正面打ち起こしでは打ち起こしをした後、大三の動作をとります。

つまり、引き分けに入る前は両者とも同じ形になるのです。そのため、斜面打ち起こしでの右腕、左腕の使い方はそのまま正面打ち起こしに応用できます。

正面打ち起こしの難しいところは大三をとるときにいろんな不正が起きやすいところです。ここで、右拳が曲がったり、力んだりしてしまいます。

しかし、斜面打ち起こしは最初から右手首を伸ばした状態からスタートするので、大三で不正は起きにくいです。この面では斜面打ち起こしの方が、引き方としては理にかなった引き方といえるでしょう。

以上のポイントをおさえることで、左右つりあいのとれた斜面打ち起こしを行うことができます。

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