尾州竹林でも胴造りを以下のよう説明しています。「胴が正直でないといけないときは行射のときばかりではなく、進退起居その他全ての動作において大切です」
そのためには、胴や胴の状態を骨や関節を視点に理解する必要があります。それにより、胴の崩れ方が3パターンあることを理解できます。ここでは、胴づくりを骨や解剖学の観点から、理解を深めていきます。
「胴」と「五身」を理解する
「胴」とは両手、両足と頭部を除いた部分、すなわち腰から肩までの部分であり、体の中心的な大部分を占めます。胴造りを正直に保つには、正直な足踏みが必要です。胴の下部すなわち腰の備えが完全でなければならない。胴全体の崩れ=腰の崩れと言っても良いほど胴造りには腰の備えが重要です。
胴造りには、五身の扱いすなわち五胴の法があります。1、退身(のくみ)2、掛身(かかるみ)、3、伏身(ふすみ)4、反身(そるみ)5、中央身(ちゅうおうのみ)の五つです。的前行射の場合は中央の胴に構えるのが原則です。
胴造りの場合においても、足踏みのときに話した両肩は胴に従い胴は足に順がう骨法の教えを再玩味する必要があります、腰を備えるという言葉はとても抽象的なので、もう少し詳しく説明すると腰を備えるとは、腰を前に突き出さず、後ろに出さず、背骨を真っ直ぐに伸ばすことです。
こうすると、腰の前部も後部も圧迫される感じがなく、腰回りが楽になります。正坐したときの腰の状態と同じにし、上半身の力を抜くと腰が備わります。
そして、腰を備えるときに重要なのが「股関節」です。股関節は前後左右に自由に回転できる関節です。両足の力の入れ方が違うと腰の備わり方が変わるし、精神的にも腰部が気になり、影響されやすいので、注意が必要です。
五身の胴の活かし方
五身の法(五胴)はそれぞれ目的があり、それに従って応用すべき胴づくりです。
退身→遠い物、高い目中物を射るとき
掛身→近いものまた低い物を射るとき
伏身→強弓を射るとき
反身→繰矢前(くりやまえ)のとき
中央身→的前のとき
中央身が的前で適している理由
胴には五つの胴があり、その中でどこにも偏りがない中央胴が適しています。理由は「足」「腰」「肩」が上から見て一直線にそろうからです。これを弓道教本では「三重十文字」と説明しています。
人間の体は他に、足踏み、腰が良くても肩が足踏みの線より曲がっている、あるいは足踏みは良いが腰、肩が曲がっていると胴の不正は3通りに分かれます。
正しい胴づくり=足踏、腰、上体の位置と構えが正しい
正しくない胴づくり①=足踏み、腰の位置は正しいが両肩はずれる
正しくない胴づくり②=足踏みの位置は正しいが腰、両肩はずれる
正しくない胴づくり③=足踏み、腰、両肩すべてがずれる
このように、足、腰、肩が一直線に揃うと、上体のどこにも負担や緊張がありません。そのため、胴は中央胴が適しています。