ブロック練習とランダム練習より重要な「基礎」の正体|弓道の的中率を安定させる本質

「反復練習をしているのに、本番になると上手くいかない…」「練習では当たるのに、試合になると全然ダメ…」

このような悩みを持っている方、本当に多いのではないでしょうか。実は私のところにも、こういった質問がよく寄せられます。

先日も興味深い質問をいただきました。「ブロック練習とランダム練習、どう使い分ければいいですか?」という内容です。2026年2月に行われた全国弓道指導者研修会での講演に関連した質問でした。

しかし、私は22年以上の弓道経験から断言します。★ この練習方法の使い分けを考える前に、もっと重要なことがあるのです。それは「基礎を何に置くか」という根本的な問題です。

ブロック練習とランダム練習の一般的な理解

まず、スポーツ科学で言われるブロック練習とランダム練習について整理しておきましょう。

ブロック練習とは、同じ動作を反復する練習方法です。弓道で言えば、八節の部分的な練習、例えば打起しから大三への動きを繰り返し練習するようなものですね。

ランダム練習とは、実践的・混合的な練習方法です。部分的な繰り返しではなく、試合形式や通し練習など、様々な状況を取り入れた練習を指します。

一般的に言われるメリット・デメリットはこうです:

  • ブロック練習:短期的な上達や達成感は得られやすいが、忘れやすい。練習ではできるのに本番でできなくなる
  • ランダム練習:上達した感覚は得られにくいが、長期的な安定や再現性がある

これを聞くと「じゃあどういう比率で組み合わせればいいの?」と思いますよね。

しかし、★ 私はこの分け方自体が、弓道においては本質を見失わせる可能性があると考えています。

なぜ練習方法より「基礎」が重要なのか

多くの方が「当たる形」「当たる姿勢」を基礎に置こうとします。これは一見正しいように思えますが、★ 当たる形や姿勢を基礎に置いた瞬間、もう当たらなくなります。

なぜでしょうか?理由は明確です。

「当たる形」を決めて、それに向けて練習を繰り返すとします。しかし問題は、その形を実践レベルで使えるようになるための練習設計や理論が、きちんと組み込まれていないケースがほとんどだからです。

私は20年以上、弓道の現場を見てきました。「当たる形」を基礎にして、それを実践レベルで使えるようにし、かつ再現性を持って的中率を向上させた練習方法を確立している例を、ほとんど見たことがありません。

現実的に難しいのです。だから私は、★ 基礎の設定から「当たる」という概念を一度外してほしいと思っています。

本当の基礎は「強い弓を引ける体力と姿勢」

では、何を基礎に置くべきなのか。

私の答えは明確です。★ 当たる形や姿勢ができるような体力と体を作ること。そのためには、絶対に強い弓を引かなければならないと思っています。

実際、私が最近指導している高校生の方がいます。その方は的中率が3割程度だったのが、6〜7割まで安定するようになってきました。

何をしたか?★ 高校生なのに、自分のお金で19キロの弓を買って練習しているのです。強い弓を使って、姿勢を作り上げているから安定するのです。

逆に、強い弓を使わないで高的中を実現している人はどうでしょうか。私の経験から言わせていただくと、★ 後で落ちる可能性が絶対にあります。例外ではありません。

県大会上位常連が当たらなくなった実例

私がかつて所属していた団体に、関東圏の県大会で必ず1位か上位3名に入っていた女性がいました。その方が、ある時期から一切当たらなくなったのです。

こういうケースを私は間近で見てきました。強い弓を引いていない人は、安定期があっても、ちょっとしたきっかけでずれてしまう。これは再現性が低いということなのです。

一方で、40%〜50%くらいの的中率で、たまに7〜8割出す人がいます。そして大会で3回に1回くらいは上位に食い込む。★ そういう人たちは、みんな強い弓を引いています。

再現性が高いのは、ランダム練習をしたからではありません。強い弓を引いた結果、姿勢が良くなったからです。

解剖学から見る「強い弓と姿勢」の関係

なぜ強い弓を引くと姿勢が良くなるのか。これは解剖学的に説明できます。

強い弓を引くためには、腕の筋力だけでは不可能です。広背筋、菱形筋、そして体幹の筋肉群を連動させなければ、強い弓は開けません。

つまり、強い弓を使うと自然と全身の筋膜連結が活性化され、胸郭が開き、肩甲骨が正しい位置に収まり、骨格全体でベクトルを受け止める姿勢が形成されるのです。

これが「姿勢が良くなる」というメカニズムの正体です。弱い弓では、この全身連動を使わなくても引けてしまうため、姿勢が崩れたまま射が成立してしまう。だから再現性が低くなるのです。

メンタルの問題も強い弓で解決できる

試合で緊張して当たらなくなる。メンタルが弱い。こういう悩みを持つ方も多いでしょう。

実は、★ このメンタルの問題ですら、強い弓を使えば解決できます。

なぜか?強い弓を引くと筋肉がしっかりつきます。そして強い弓を使った瞬間に、一気に気持ちが軽くなるのです。

これは筋肉が緊張を吸収してくれるからです。弱い弓だと、緊張による微細な震えがそのまま矢に伝わってしまう。しかし強い弓を開けるだけの筋力と姿勢があれば、その緊張は体幹で吸収され、矢には影響しません。

私が指導してきた方で、教士や練士に合格した人、4段・5段以上を取得した人が何十人もいます。学生で大会優勝した人もいます。★ みんな共通しているのは、強い弓を開けるようになったことです。

良い反復練習と悪い反復練習の違い

ここで反復練習について、もう少し深く考えてみましょう。

反復練習には「良い反復練習」と「悪い反復練習」があります。悪い反復練習は、忘れやすく、本番で使えない。良い反復練習は、そのまま強い弓を開くことにつながり、的中にもつながります。

★ 私が推奨する的中率を上げる反復練習を一つ挙げるとすれば、「肘を引きながら顔を向ける」という練習です。

なぜこの練習が効果的なのか。それは、狙いと離れが両方とも強化される反復練習だからです。

顔を的に向けながら肘を引くという動作は、胸郭の開きと肩甲骨の収束を同時に促します。これにより、会での安定性が高まり、離れの方向性も自然と決まってくるのです。

ランダム練習にも良し悪しがある

同様に、ランダム練習にも「良いランダム練習」と「悪いランダム練習」があります。

例えば、みんなで一緒に試合形式で練習するとか、全体練習で刺激を与えるとか。これ、一般的には良いことのように思われますよね。

しかし★ 私は、「みんなで一緒にやることで刺激が与えられる練習法」は良くない練習法だと思っています。

なぜか?刺激が与えられるのは、周りに影響を受けているからです。それでは自分の射の本質が見えなくなります。

私が推奨するのは、★ 一人でめちゃくちゃ静かに観察して、自分の感覚を見つめ直す練習です。

心拍数で自分の射を判断する方法

一番わかりやすいのが、会における心拍数です。

的中率が高い人とそうでない人の違いを調べると、会に入った時の心拍数に差があります。自分の心拍が強くなっているか弱くなっているか、これを確かめる方法があるのです。

ただし条件があります。★ 静かなところで、誰にも見られていない状態でやること。

なぜか?みんなに見られたら意味がないのです。見られることで心拍が上がってしまうから。

すると判別できなくなります。「あなたの引き方が悪いから心拍が上がっているのか」「引き方は正しいけど周りに見られているから心拍が上がっているのか」が、わからなくなってしまう。

ランダム練習として「みんなで実践」をやると、この自己観察ができなくなってしまうのです。

具体的な稽古法・練習方法

ここまでの内容を踏まえて、私が推奨する練習の進め方をまとめます。

  • まず強い弓を使う:今使っている弓より2〜3キロ強い弓にチャレンジする。最初は数射から始める
  • 姿勢を作る:強い弓を開くために、自然と全身の筋膜連結が活性化される。これが本当の基礎になる
  • 肘を引きながら顔を向ける反復練習:狙いと離れを同時に強化する。毎日10回程度から
  • 一人で静かに引く時間を作る:会で自分の心拍を観察する。上がっているか下がっているかを感じ取る
  • 練習方法を良くするための練習:練習方法自体を向上させる視点を持つ

優秀な指導者とは何か

最後に、指導者について触れておきます。

★ 優秀な指導者とそうでない指導者の違いは、練習方法を提案できる人ではなく、行動できるようにさせる人です。

提案は誰でもできます。YouTubeでもAIでも練習方法を教えてくれます。しかし、私はChatGPTなどのAIが提案する弓道の練習方法は、ほとんど使えないと思っています。

なぜか?ネット上の情報を切り貼りしているだけで、実践から離れているからです。★ AIが発達すればするほど、弓道の理論は間違えると私は確信しています。

だからこそ、実践が大事なのです。ここで言う「実践」とは、実践的練習のことではありません。★ 実践的練習ができるようになるための実践、これが重要なのです。

まとめ:練習方法を考える前にやるべきこと

ブロック練習とランダム練習、どう使い分けるか。この問いに対する私の答えは明確です。

★ その前に、基礎を何に置くかを決めなさい。そして、その基礎を作れる体力と姿勢を手に入れなさい。そのためには、強い弓を引きなさい。

当たらなくて困っている人の大きな原因として、強い弓を引く量が圧倒的に少ないことが挙げられます。

私自身、強い弓を引くために右肘が壊れるまで強い弓を使った経験があります。それくらい追い込んでこそ、本当の基礎が身につくのです。

練習方法を変えたい、どうすればいいかわからない。そう思ったら、まず強い弓を手に取ってみてください。姿勢で弓を開く感覚を掴んでください。

それができれば、ブロック練習もランダム練習も、自然と「使える練習」になっていきます。正しい基礎の上に立てば、どんな練習も実践につながるのです。

あなたも必ず、強い弓を開けるようになります。そして、安定した的中を手に入れることができます。まずは一歩、踏み出してみてください。

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