弓手の手の整え方を「手の内」と呼んでいます。弓道の世界ではこの手の内はとても難しい射技の一つといわれています。
ただ、手の内の整え方は三つか四つしかありません。さらに、難しく考えると指先や手首に力が入り弓の操作が円滑にできなくなります。
弓道射法の「八節」動作は説明しやすいために、8つに分けて便宜上説明されます。もしも、手首や指先に力が入ると、弓矢の操作に連続性が途切れてしまいます。すると、体に余計な力みが出てしまい、矢は的をはずします。
そのため、手の内を射の動作に活かすのであれば、シンプルに考えることが必要となります。
なぜ、手の内が難しく思えるのか
なぜ、手の内は難しいと感じるのか?それは、手の内の内容を「指の整え方」しか理解していないからです。
ほとんどの弓道本が手の内の整え方は「指の整え方」を重視して教えます。このため、多くの人は手の内=「指の整え方」と考えます。
このような教え方は「初心者が最初に基準を作るため」には有効です。しかし、人それぞれ指の長さ、大きさから違います。さらに、弓の押し動作が上達すると、同じ指の整え方では合わなくなってきます。
例えば、ある流派では左拳を握るとき親指と中指の間は少し隙間を空けたほうが良いと教えています。あるいは、小指、薬指、中指の三つの指先はそろえた方が良いと説明します。しかし、ある人は別に中指と親指の間はくっついてもよいと説明しています。
このように指の形や整え方流派や人によって説明の仕方が変わります。「手の内は教えられる法ではない」と言っている弓術の先生までいます。
本当に手の内で形を決めることは射に良い影響を与えるか
このような、整え方のみにとらわれて動作を行うと、射は失敗する可能性があります。弓道の射法において、左拳の力みは射全体に影響を及ぼすといっても過言ではありません。
弓の荷重が最もかかる場所は「左拳」です。もしも、一番負荷がかかる部位に力を入れたり余計な意識を入れてしまうと、矢飛びのズレは大きく出てしまいます。
そこで、「射を行うとは?何」と本質的に考えてみます。すると、弓道教本一巻に射についての基本、がかかれています。そこには、弓の抵抗力について記述されています。
「弓は反動力であって直動力ではない」と記述されています。
弓は押したらその分反動力として、矢飛びに反映します。それを握ったり、指先に力を入れてしまうと、反動力を殺してしまいます。
このような、「三指をそろえよう」「中指と親指は輪っかでないといけない」と形に捉われることは射の基本からずれてしまいます。そのため、射の基本に忠実に徹して、手の内の内容を理解する必要があります。