弓構えを適切に整えるための筋肉の話

「弓構え」は弓の上成節が体の中心に、弓の元はずを左膝頭に置き、ゆがけで弦を取り懸ける動作です。そして、「弓構え」は射の活動に移る準備動作です。八節の動作において、弓構えは非常に重要な意味を持つ動作です。

ただ、古くの弓術書を読みと、抽象的な説明が多く、理解が難しいです。特に弓道教本二巻に載っている範士の先生による説明は理解するのに時間がかかっています。

ただ、こういった内容も、「筋肉」といった体の成分から考えてい見ると、理解が深まることがあります。そこで、今回は弓構えの説明を筋肉の観点から、解説していきます。

弓構えでの腕の筋肉は自由にする

教本二巻を見ると、範士の先生の内容はイメージしづらい説明がされています。

例えば、宇野範士は「右手の「取り懸け」によってはじめて左右が結びつき、弓と矢と体とがひとつのつながりとなる」
と書いています。さらに、「「取り懸け」によって結びついた左右両腕の形は、丸い輪形でなければならない。」と続けています。

教本ではこれを「円相」と説明しています。

しかし、円相といっても、この言葉の意味を説明している人はほとんどいません。

円相という言葉は仏教用語です。

仏教の世界の書籍を見ても、意味自体が抽象的です。そのため、正確な説明がありません。もしも、ちゃんとした説明がなければ、聞き手や読み手は混乱してしまうだけです。

もちろん、円相という言葉は私も意味がわかりません。しかし、「円」という言葉と筋肉の観点から考えると射において何が大切かつかむことができます。

円の定義から弓構えにおける筋肉の状態を考える

まず、「円」と何でしょう?ここでは、円の定義を考えてみましょう。

円には「中心」があります。そして、「始まりも終わりもない」ものが円です。この「中心があること」「始まりがあって終わりがないこと」が円の定義です。

つまり、両腕を囲むときにどこかに終わりを作ってしまったら円の概念が崩れてしまいます。終わりとは、具体的には筋肉のつながりを説明しています。では、この解釈を踏まえて筋肉を想像してみましょう。

両腕を囲むときに、腕全体の筋肉をリラックスさせていればどうでしょうか?血流に滞りがないため、両腕の状態に「終わり」がありません。

一方、手首を曲げたり、肘を張ったりしていたら、どうでしょう?

腕の血管が圧迫されて、血液に滞りが出てしまいます。つまり、血液内に循環に「終わり」が出てしまいます。

弓構えを取るときに、形にとらわれてしまうと、「丸い形にしなくてはいけない」と強く意識してしまいます。すると、肘や手首を固定しようとしてしまいます。これでは、筋肉が緊張してしまい、硬くなってしまいます。
 
つまり、両腕の左肩→左ひじ→左手首→右手首→右ひじ→右肩の円形を考えたときにどこか一部を力ませると上記の筋肉のつながりが切れてしまいます。

すると、弓を引こうとすると、力んだ部分に力がこもってしまいます。その結果、手先肘先に余計な力がこもり、射で失敗してしまいます。

このように、筋肉には凝りがない(終わりがない)ことが射における理想の腕の状態であるとわかります。これを踏まえた上で範士の先生の抽象的な説明をもう一度見てみましょう。

宇野範士
「はじめて左右が結びつき、弓と矢と体とがひとつのつながりとなる」

千葉範士
「弓矢を持ったという固い感じではなく、自分の体の一部分で体に付随しているものという感じが良い」

さきほどの文章に「円=終わりがない」「筋肉→固くない」という視点が入ると、「固い感じではない」「弓と矢と体がひとつのつながり」という文章が理解できます。つまり、弓構えでは、腕は力ませずに、両腕で形成された筋肉のつながりを切らさないことが大切です。

「手首」「肘」といった部分的に変に形を決めたりひねったりしてしまうと、余計な力みとなり、両腕の円状の筋肉のつながりが切れてしまいます。範士の先生の言葉を借りると、弓構えでは、全身の緊張が緩んでいる状態で腕や手首など一部分に力やこりのない、どこも滞りのないように構えることを示唆できます。

この状態で弓を握る動作を行うと、掌や手首に力を入れて弓を握る必要がありません。掌を丸くして、小さな空間ができるくらいにして、そこに弓を包み込むようにしてあげます。すると、自然と弓を握った形、弓構えの形になります。

手で握るのなら手に部分的に力を入れて握らないといけません。しかし、それでは、両腕の円の関係が崩れてしまいます。もし、上半身をゆったりさせて腕をリラックスさせて弓を包み込むように持つとどうでしょうか?

弓を握る運動は見た目、形は弓構えの形になっていますが。中の筋肉は「握る」という働きをしていません。つまり、両腕の筋肉にはどこにも凝りがありません。

その結果、両腕は「円」の関係が保たれます。

本多先生の弟子で、明治以降に弓の世界で多大な影響を与えた梅路見鸞氏は「弓を引く上で筋肉は自然に働かせなくてはいけない」と言葉を残しています。

つまり、弓構えでおける「円」とは、形を「円形」にしないといけないと解釈するのではありません。どこにも、筋肉に凝りをなくして、手首や肘にとらわれをなくせば、両腕が筋肉の滞りがなくなります。つまり、両腕の筋肉で出来上がった線やつながりが切れることはありません。この状態が、結果として「円」の関係となると示唆されます。

つまり、「円」の形にするのではなく、「円」の概念を弓の構え方に当てはめてみます。すると、腕をリラックスさせた方が弓が引きやすいことがわかります。

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