足踏みの角度の広狭から生まれる得失

足踏みは個々によって、適切な間隔、角度があり、適切な足踏みを行わないと、胴づくりや両手の運動に影響を与えます。

ここでは、足踏みの間隔、角度の広狭による人体の影響、そして、その上で適切な足踏みについて考えていきたいと思います。

足踏みの間隔が狭すぎると、広すぎると?

足踏みの間隔が狭すぎると、上体は比較的自由になり、両手の働きの方が強くなりすぎて、下体とのバランスが悪くなり、ぐらつきやすくなります。広すぎると、安定するが、上体、とくに両手の運動が不自由になります。

教本二巻の高木範士の足踏みの説明には「足踏みが広すぎると下半身の安定度は上がるが、上半身の筋骨は緊張しすぎてしまい、狭すぎると下半身の緊張度はなくなるが、安定性にかけ、上半身の筋骨に締りがなくなる」と説明しています。

なぜ、足踏みの間隔が広いと安定性が上がるか、それは体の重心が上に上がるからです。反対に狭いと体の重心が上がるため、その分不安定になります。

遠的や射流しのように、遠距離に矢を飛ばす場合に、足踏みを比較的やや自由にします。これは離れのときの両手の動作に、近的のときよりも、大きい負担がかかるから、上体の動きをやや自由にするためです。

足踏みの角度が広すぎると?狭すぎると?

足踏みのときに角度を広くとると、左右に強くなり、前後に弱くなります。狭くとると前後に対する強さは増すが、左右に対する支えは弱くなります。

なぜ、角度を広くとると左右に強くなるのか、それは角度を広くとることで背筋の締まりが良くなるからです。しかし、身体を支える底面積が薄くなるため、前後に弱くなります。反対に角度が狭くなると背筋の締まりが悪くなりますが、身体を支える底面積は増します。

これにより、角度が広すぎると、左右に強く前後に弱くなり、角度が狭すぎると左右に弱く前後に強くなります。

角度だけで考えると、直角の半分の約45度の線が直角の中心線(二等分線)であるから、理論上からは理想の分線であり、両足の角度は90度になると左右別々の90度になります。

しかし、90度は人によって広いことがあるので、60度が大体一般的に共通している角度になります。

適切な足踏みは臍下丹田に意識が集まる

適切な足踏みの間隔は自己の矢束、角度は一般的に60度とされていますが、身長、体重、骨格によって、これが微妙にずれたりします。

適切な角度(=自己の矢束)と言っても、これも身長の約五割五部と定義したり、自分の適性な足踏みは何を基準に決めれば良いでしょうか。

そこで、本多流の弓術書の足踏みの説明を見ると。

「足踏みは射法の根本にして、大切なることをいうまでもなし。・・・・気分が臍の辺にこみあげるようにてならぬ。・・・・・気を臍下丹田に収むることは独り射法のみに限りたるにあらず、何の芸術においても必要なることあり

と書かれています。これは、上記の足踏みを行うと臍下丹田に気が集まり、何事も芸にも必要であると説明しています。

この文書にも書かれていることを考察すると、自分にとって適正な足踏みは上半身が変に力んだりせず、自然と自分の上半身が腰回り中程(=丹田)に落ち着くのであると言っています。

上半身の無駄な力みがなくなると、上半身の重みが腰の中ほどに落ちます。そうすると、自分の意識が腰回り中央に行きます。

これを「意識、気」が丹田に集中すると説明していますが、個人的な解釈では、上半身の適性な体重を乗ったことにより、内部の内臓器官が適切な位置が保たれ、血液の循環が改善し、余計な緊張なく射の動作を行えると考えられます。

丹田(=腰回り中ほど)は人体の血液を上半身、下半身へと一番行き来する部位です、これが適正な足踏みにより、上半身が素直に腰に乗ると、丹田部位の血流循環が良くなります。

この力を入れたり意識していなくても、自然と意識するのは、自分の体の中の状態が全身楽な姿勢となり、その中で一番血流が通っている丹田部位を感じていると考えられます。

矢の長さとか、身長の半分とか足踏みでは説明していますが、自分にとって、上半身が楽になる姿勢を適正な足踏みと言えます。

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