「保」が終わって、引き取ったのち、左右上下に伸びて、弦が弦枕から離れて行くことを「離(はなれ)」と言います。射形を整えるため、的中を目指すためには、離れにおいて正しい知識を理解する必要があります。
ここでは、射形が整った「離れ」について解説していきます。
自然な離れとそのときの拳の状態を理解する
左的は的に向かい、右手はその反対の方向にじっと押し続けます。左手の親指の根でじりじりと弓の内竹の前角を的の方向に押してゆき、右手親指はじっと上にはねて中指、薬指に押しあい、胴づくりがどっしり落ち着いていきます。
ある限度に来ると、左親指根の力を基として、右の親指がパっと開くのです。これが自然の離れです。十分伸ばして、よしというところで、胸を弓と弦をわりこむように、両腕を肩の中心にして上下に偏せず、平らに後方に開きます。
離れ後のきれいな拳の位置
離れの収まり、両手の収まりどころは最初は水平に大きく開くのが良いです。180度にまっすぐ離すのが見た目、よく伸びていてよいですが、実際は左手はまっすぐ、右拳は右肘が120度程度開いているのが適した状態です。これが、「大離れ」をしたときの拳の位置です。
何年か修行するうちに、離れが小離れになります。すると右肘の角度が90度~それより小さい角度で開いた状態になります。
弓術が実用であったころは、歩射は小離れが原則でした。そのため、離れには「一寸の離れ」から「五寸の離」までありました。これは、肘の開いた角度が違います。
弓道家は年をとると左肩が伸びなくなってしまうため、足踏みの角度を変えたり、それでも離れのときにブレないために、まっすぐ飛ばすために、離れが小離れになる傾向があります。
なので、老年になると、離れの肘の開きは小さくなっていきます。よって、年を重ねた経験者は離れの角度は大離れより小離れの方が適していると言えます。
もしも、初心者で体力があるうちに軽い小離れをやってしまうと、軽いではなく「弱い離れ」になってしまいます。これは胸を開く感覚がない小離れになるからです。そのため、初心者は胸を大きく開く「大離れ」を意識するようにしましょう。