引取が終わり、離れになる間のほんのしばらくの間が「保(たもち)」です。現代弓道の八節では「会」と表現します。
ここでは、保を充実させるための考え方について解説していきます。
保では、体の五つの部位がゆるまないようにする
弓道家の悩むところはつまるところ離れの瞬間にあり、よい離れを出したいと思うばかりです。その良い離れの土台となるのが、このわずか数秒の「保」の間の働きの間にあります。
保の形の上から言えば、引取の最後のところと同じであり、矢束いっぱい引きしめて「引取」が終わり、「保」となります。
引取のときに矢束8分9分程度で引き終わり「保」えじりじりと矢を引くことを「延」と誤解している人もいますが、これはよくないので、気を付けた方が良いです。
「保」は引取で引きおわったら、左手の裏、左肩、胸、右肩、右肘の五つが緩まないようにします。これを「五分の詰」といいます。ここを気をつけて、しっかり伸びていきます。
そして、この5か所にとどまらず、足さきから頭までしっかり充実し、天地左右に上体が延び、左右は東西の端まで伸びるごとく気分が充実していかないといけません。
そうして、左肩から肘、親指の根にかけてじっと伸びていき、的の中心に親指の先がつきこまれるように気持ちで伸びます。それにつれ、右肘は静かにしまり、右の親指も十分にはねて離れの用意ができていきます。
五分の詰めのためには、右肘がしっかり後方に回り、左肘は、肘を内側にし、拳は親指と小指の間を狭くするように締め、角見が効くくらい、左拳を中に入れていきます。
「三の延」
小笠原流の教えに「三の延」という言葉があります。これは、弓構えのときに、一のび、保のときに一のび、離れても一のびといって大切な教えとしています。
小笠原では弓構えのときに一のびしなさいと言っていますが、これは弓構えのときのもう一度胴づくりを整えなさいという意味と考えられます。
弓構えは両腕が自分の体より前に来るので、そこで、両腕が前に行き過ぎて胴が屈みすぎることがあるので、弓構えとったときにもう一度首と背中を伸ばすことを忘れないようにします。
保が充実すると胸は落ちる
延の気持ちの一端を説明したものに、「胸落」というのがあります。これは、左右へ押し引くからがよくつりあえば、矢は胸の前に落ちるという考えです。