「強い弓を引くと力が入ってしまう」「弱い弓で形を整えてから強い弓に移行すべき」——そう思っていませんか?実は、この考え方こそが、あなたの上達を妨げている最大の原因かもしれません。
私は20年以上の弓道経験の中で、20キロの弓で的中率8割を達成したことがあります。また、私が指導している方の中には、30キロの弓を引いて的中率8割を達成できそうな方、県大会で優勝した方、錬士や教士に合格した方もいらっしゃいます。
彼らに共通しているのは、今日お伝えする「ある感覚」を掴んでいるということ。この感覚がなければ、的中率を上げることも、強い弓を開くことも、かなり難しいと断言できます。
結論:弱い弓より強い弓の方が「楽」で「疲れない」
★ 強い弓を引いた方が動きは楽だし、体の動きも楽だし、疲れないのです
これは強い弓を引いている人なら、間違いなく共感できる内容だと思います。なぜ私が35キロの弓で100本引けるのか?それは強い弓の方が疲れないからです。逆に、なぜあなたが15キロの弓で10本、20本引いただけで腕が疲れてしまうのか?それは弱い弓だからです。
「えっ、逆じゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、これには明確な物理学的・解剖学的根拠があるのです。
なぜ強い弓の方が楽なのか?物理学的根拠
物理学の基本法則に「F=MA(力=質量×加速度)」があります。つまり、物体は重たいほど、一度動き出せばエネルギーが強くなるのです。
弓道の動作で考えてみましょう。打起しから大三、そして引分けへと移行する際、弓には重さがあります。この重さを利用して、一度動きを作ってしまえば、★ 腕がついていくようにファーッと広がっていく感覚が身につきやすいのです。
逆に、軽い弓ではどうでしょうか。ゴム弓のような軽いもので綺麗な動きを作ることは、ほぼ不可能です。なぜなら、重さがないからです。弓道の動きが美しく見えるのは、重さを綺麗に扱っているから。450gや500g程度の軽い弓では、軽すぎて動きが余計に動いてしまい、力が入りやすいのです。
弓に動きを作ってもらう——腕の力を抜く本当の意味
私が提唱する「理論弓道」の神髄は、★ 弓に形を作ってもらい、弓に動きを作ってもらって、腕がそれについていくようにすることです。
まず、基本的な状態を作ります。弓を持って、自分は何もしなくても弓が静止している状態。ここから腕の力をグッと抜くことによって、弓に回転運動が勝手に起こります。
例えば、「三指を揃えましょう」「親指で手の内の十文字を作りましょう」「天文筋に当てましょう」——こういったコントロールをしていたら、腕が上に上がることは永遠にありません。しかし、形は作りつつも腕の力を抜くと、何が起こるか?弓は勝手に上がってくるのです。
弓が上がる仕組み——テコの原理
弓は上が長いですよね。上が長いので、当然テコの原理が働きます。手が斜めになっている状態から垂直に引き上がる力が、弓によって勝手に生まれるのです。
重心管理の極意——胸の中心に意識を置く
大三動作から引分け動作に入る際、★ 重心を管理されている状態を作らなければなりません
重心を管理するとはどういうことか。弓の位置が右であっても左であっても、あなたの体の重みは常に「胸の中心」に置いてあげなければなりません。脇腹に行ったらダメ。肩に上がったらダメ。常に胸の中心に来るように打起しをするのです。
手の内を形作って腕を上に上げた時、腕と肩に力が入った結果、意識が腕と肩にいっている状態——これは重心が管理されていない状態です。胸の中心に常に意識が行くように上げるためには、一度腕の力を抜いて弓に動きを作ってから、腕がそれについてくるように上がっていく。そうすると、弓が打起し動作をしてくれるわけです。
打起しと大三動作は「つながっている」
打起しから大三への移行について、勘がいい人は気づくと思います。腕の力を抜いていたら、打起しから引分けに入る動作で、弓は体に近づくように来ているのです。
ということは、そのまま近づけていけば、大三動作に入ってくる。つまり、打起しと大三動作はつながっています。一旦垂直に上げてから、前ではなく円を描くように持っていって、そのまま大三動作に入っていく。これが一番スムーズで、形も綺麗、動きも綺麗、動きのコントロールもでき、腕の力も抜けて、大胸筋も活かされて弓が開けるようになるのです。
下筋を張る——25キロ以上でないと実現できない理由
「下筋を張るようにしましょう」——よく聞く指導ですよね。しかし、★ 下筋を張るには25キロ以上の弓を引かないと、下筋なんか張れません
下筋を張るというのは、上腕三頭筋に力を入れることで腕が伸び、開く力が出ることを指します。しかし、これを自分でやったらどうなるか?
- 自分でやったらブレる
- 自分でやったら後ろに流れる
- 自分で押し込めば肩が上がる
- 上腕三頭筋で下筋を張ろうとすると、左肩が上がり後ろ狙いになる
- 狙いがブレブレにずれる
これを弓にやってもらえば、全て解決するのです。15キロの弓では、弓の圧力が体に来ません。弓の圧力が体に来ないのに、どうやって下筋が張れるというのでしょうか?
弱い弓が体を壊す——解剖学的根拠
弱い弓を引いていた時の方が、肘が痛くなった、肩が痛くなった、筋を痛めた、親指が腱鞘炎になった——そういう経験はありませんか?
★ 弱い弓の方が筋肉を使っているからです
弓を開く時の力はどこから出ているか?脇の下の筋肉です。脇の下の筋肉をギュッと締めれば、腕の筋肉は連動して動きます。これは自分で力を入れる必要がないのです。
強い弓であれば、ここに置いてしまえば、グンと力がかかって勝手に開いてくる。私が35キロの弓を使って何をしているかというと、腕の力をフワーッと抜いているだけ。だから勝手に開いてくるし、楽なのです。
あなたが10本引いて疲れてしまい、形がグズグズになるのは、全部筋肉で引いているから。弱い弓を使ったら、筋肉でしか引けないのです。弓のブワーッと脇の下にかかる力、下筋の張る力が来ないから、自分で動かすしかない。スポーツジムで一人で筋トレしているようなものだから、疲れてしまうのです。
身長155cm・体重50kg未満の女子学生が25キロを引く現実
「強い弓は体格がないと引けない」——これは完全な言い訳です。
私が指導している中に、25キロの弓を引いている女子学生がいます。身長は155〜157センチほど、体重は50キロもないくらい。腕の筋肉など全然ありません。それでも25キロを引いています。
この事実を知った時、私は確信しました。★ 強い弓って力じゃないんだなと。こんな身長の小さい、若い女の子ですらできるのです。
具体的な練習方法——まずは3〜4キロプラスから
では、具体的にどうすればいいか。まずは自分の持っている弓力から3〜4キロプラスした弓を使うことから始めてください。
- Step1:現在の弓力より3〜4キロ強い弓を用意する
- Step2:弓を持ち、何もしなくても弓が静止している状態を作る
- Step3:腕の力を抜いて、弓の回転運動を感じる
- Step4:弓が上がってくる動きに腕をついていかせる
- Step5:打起しから大三を円を描くようにつなげる
- Step6:常に胸の中心に意識を置き、重心を管理する
レギュラーで使っている弓に持ち替えると、驚くほど弓が軽く感じられるはずです。
まとめ——弓に弓を開いてもらう
今日お伝えしたかったことは、「弓が弓を開く」という状況を作り上げる体の使い方です。
弓の角度と位置を整える場合、弓は勝手に動き始めます。弓の重さによって、腕の筋肉を介して開かれるように体が使われる。弓によって体が作られ、弓によって射形が作られる——これが強い弓を楽に開き、的中率を上げる極意です。
弱い弓で形を整えてから強い弓に移行しようという発想は、捨ててください。その「形」自体が、強い弓を開けない形である可能性が高いのです。
強い弓を使えば、動きは楽になり、疲れなくなり、本当の下筋の張りを体感できます。あなたもぜひ、今日から強い弓に挑戦してみてください。弓道の世界が、まったく違って見えるはずです。






