押し開く引き分けを実践法:後5センチ多く引くための工夫法

引き分けを行う時に、「引くのではなく、押し開く引き分け」を身につければ、大きく弓を引き、鋭い離れを実現できることはお話しました。この記事では、押し開く引き分けをするための準備をお話していきます。

どのような方も押し開く引き分けを実践するためには、準備をきちんとしなければいけません。では、その実践方法について解説していきます。

準備:完全に脱力し、少し上に右拳を置いておく

まず、押し開く引き分けをするためには、「準備」です。ここでは、「姿勢」「右拳の位置」「意識」の持ち方に分けて解説をします。

姿勢:上半身は無駄な力みを抜く

これは、必要不可欠です。背中やお腹に力が入ったら弓を押し開けません。背中に力が入ると、肩や腕の筋肉が動かしづらくなるからです。必ず背中の筋肉に力を入れないでください。

そのためには、胴作りや弓構えで適した姿勢を作るようにしてください。「首を伸ばして両肩を落とす」「骨盤を前に傾けない」「重心を前に置きすぎない」「両肩関節を打起こしの前にしっかり下げて置く」「弓構えで両肩関節を左右の方向に伸ばす」などを心がけるようにしてください。

右拳の位置:額より拳一個半程度開ける

次に、大きく引くためのスタート地点である右拳の位置をきちんと定めましょう。ここでは、額より拳一個から一個半に置くようにしてください。

この右拳の位置ですが、打起こしで目一杯に上げて左手を動かすとこの位置に収まります。目安は「肘の角度が45度よりも高く」するようにしてください。もし、大三で右肘が上に浮き上がりすぎたり、流されすぎてしまうと、この位置にきません。

後は、この位置に右拳を置いたら、出来るだけ右拳に力を入れないようにしましょう。そこで、取り懸けは「取り懸けを指先近くではなく、深めに取り懸ける世に意識してください。必ず指先に力を入れないようにしてください。ここで、指先に力が入ってしまうと、指先が力むと手首周りの筋肉が力んでしまい、右肘を動かしづらくなります。

といったように、上半身の姿勢を整えるさいに、体の力みを取り去れば、次に腕を動かす動作に移りやすいです。そして、高く腕を上げたなら、右拳を額から拳一個半程度開けてください。ここまでで姿勢と右拳の位置は整っています。

意識:最初の10センチは真横に動かせ

では、ここで具体的に右拳の動かし方を解説していきます。左拳は左拳と右肘ともにななめ上方に押していくイメージで押していきましょう。そうすると、結果的に右拳が真横に10センチ動きます。

そして、ある程度押したら徐々に左拳が的の線上に向いてきます。ここでも左拳は斜めに押す意識を持ちましょう。ここで左拳を下ろしたり、直線に押してしまうと左拳が下がってしまい、右拳も一緒に下がります。あくまで斜め上方に押していってください。

そして、矢の線が目線にきた時、ここでも左拳は下げずに「直線」に押してください。これによって、もう少し右拳と右肘を肩より後方に回せます。左拳を下に降ろさない限りは右拳と右肘は真横に押し続けることができます。

右肘をすぐに体に近付けてはいけません。近づけてしまうと右肘が下に落ちてしまい、より大きく弓を引けなくなります。

このように、最後まで右肘を後方に入れ続けることができたら、後ろから右肘が斜めに向き、肩より後方に入ります。ここまで頑張って肘を入れるようにしてください。深く右肘を後方に入れることができれば、離れは緩みません。さらに、矢も真っ直ぐに飛んでいきます。

5センチさらに矢束をとるための方法

とはいえ、ここまでのことをいきなり最初にやるのは難しいです。大抵の人はこれを行おうとしても、後ろからみて右肘が肩と同じ線状の位置で止まってしまいます。結構大きく開こうと思っても、最初はなかなかうまくいきません。

そこで、準備ができたことを踏まえて、それでも右拳が後方に行かない場合は以下のことを試してみてください。全てを実践すると、大きく押し開く引き分けを実践できます。

紐を少し緩めてもっと取り懸けで小指と親指を締めるようにする

いつも以上に少し紐を緩めて小指と親指を寄せつめてください。そうして、グーで握っている形のように取り懸けを作り、引き分け動作を行なってみてください。

そこで、いつも以上に右拳を握りしめて引いてください。「右拳:左拳=8:2」くらいの気持ちで右拳に意識を置いて開いてください。

大きく引こうとするときに、取り懸けの構造が崩れると、なかなか引けません。そこで、いつも以上にあえて右手に意識を入れ、力をコメやすくして引いてみるようにしてください。

首の筋肉を上に伸ばして胸の筋肉をすぼめるようにする

次に、目通りをすぎた時に「」と「」の筋肉に意識を持ってください。目通りをすぎたら、顎を引いて首の後ろを伸ばしてください。次に胸の筋肉を少しだけ内側にすぼめるようにしてください。この二つを行うと右肘をより後方に入れやすくなります。

理由は、首を伸ばしてと胸の筋肉をすぼめると、右腕の筋肉が外側に回るからです。弓を大きく引けないのは、右肘が下に向くからです。そうすると、弓の反発力を押し返すことができず、下に下がってしまいます。首を伸ばして、胸の筋肉をすぼめると、肘が下に向けにくくなるため、最後まで矢の長さ引けるようになります。

最初、右肩を少しだけ上に向けておく

大きく弓を引く時に、「少しだけ右肩を上に上げておく」のは合理的といえます。

理由は左手は弓を持っているため、重いために左手が下がります。それに対して右拳が相対的に上に上がります。加えて、右肩が上がることで、右肘と右手の位置が高くなり、右手の通る軌道が体より離れます。より、外側に右拳を通るように動かせるため、右肘を後方に入れやすくなります。

ただ、肩関節をあげる時に注意点があります。肩関節が前に出ると、意味がありません。大きく引けても右肩周りの筋肉が固まってしまい、次の離れで右拳が外しにくくなる可能性があります。そのため、この方法を使う時は、右肩関節が前に出ないように気をつけてください。

足踏みで右足の角度を少し狭く

どうしても、右肘を後方に開けない場合のテクニックとして足踏みの向きを変える方法があります。足踏みで右足の角度を狭く踏むと、右肘を後方に入れやすくなります。理由は、狭く踏むと肩関節が前に巻かれるように動くからです。

右拳を外から肩の後方に回して行く際に、弦の戻る力が常にかかっているため、右拳は下に落ちやすいです。そこで、右肩を前に出しておくと、右拳を押し続けるために力をこめやすくなります。

実際に、吉田能安氏の書籍にある「弓の道」にも、「足踏みで右足を狭く踏むと、右肘を押しまわしていくときの右肩の受けが強くなる」と解説しています。

ただ、この方法にもデメリットがあり、本当に右肩が前に出てしまうと、会で右肩周りに強く力が入ってしまいます。そのため、素直に両腕を大きく開いていく感覚を身に着けるようにも努めて稽古してください。

大三から引き分けを早めに行う

少し、大三から引き分けで早めに左右の拳を動かすようにすると、右肘を後方に入れやすくなります。

左右の拳の動きが遅いと右肘を後方に入れにくなります。大三から引き分けの間、弓の反発力は常にかかっています。にもかかわらず引き分けの動きが遅いと、その間に両腕の筋力を消耗してしまいます。すると、肘を後方に入れずらくなります。

できれば、打起こしから大三も早めに行うようにすると、より余裕を持って弓を引けるようになります。

押し開く引き分けと腕で引っ張った引き分けでの体の状態を詳しく解説

では、押し開く引き分けができた場合、腕で引っ張った引き分けでは、体の状態がどう違うか?下に解説していきます。

押し開く引き分けのなった時の特徴

・最初、左右の拳を外側に開きやすい

・弓の反発力がかかっても、左腕や右拳に力みが少ない

・押し開いていくほど気持ちが上がっていき、どんどん押していける気持ちになる

・両肩が浮き上がらず、そこまで力みがない

・少しだけ、腕の付け根から脇下にかけて張りがある

・そこまで気張らずとも右肘を肩より後方に入れられるようになる

特に、真ん中の「どんどん押していける気持ち」になった場合は最高です。この感覚を手に入れたらあとはどんどん稽古していくだけです。気がつけば、矢がどんどんまっすぐに飛び、自然と的中率が上がってくるのを体感できます。

このように、うまく斜め上方に押して行けば、弓の反発力と対抗するように押しあえます。そのため、押せば押すほどに「押しがい」が出てきます。そうして、肩や肘を大きく動かせるため負担が少ないです。

 

 

腕で引いたり、引き寄せる引き分けをしている時の状態

・左右の拳を開こうとすると、腕や手に力が入っている

・押している最中に左腕が突っ張ったままである

・押し開こうとすると、弓の反発力が「邪魔」のように感じてきつい

・左右の肩が浮き上がり、上半身が力んでしまう

・腕や肩に意識がいき過ぎて、背中や下半身が浮いている感じになる

このような感覚になっていたら、自分の引き方を確かめてみてしてください。姿勢や右拳の位置や押し開く時の意識が間違えていないかを振り返りましょう。少しずつ思考して、改善していけば上に書いた「押し開く引き分け」の感覚に近づくことができます。

腕で引き寄せていると、腕を動かす力と弓を押し開く力の方向があっていません。そのため、肩に力がこもって不快感やひ引きにくく感じます。右肘の動きも悪くなるので確認するようにしてください。

とにかく引け!何回も繰り返したら少しずつできるようになる

ただ、重要なのは「力が入ってもいいので、とにかく引こうと思う」ことが大切です。とにかくたくさん引いてください。そして、失敗してください。そうして、たくさん失敗すると、左右の拳や腕の筋肉の無駄な力みが抜けてきます。ひたすら矢数をかけてくると、要所や要領がわかってきます。

「こうすると楽に引けるようになるのか」「こういうふうに押していった方が弓を楽に押し開いていけるな」このように、失敗をたくさんしておくと、「自分が引けなかった原因」にたくさん気づけるようになります。そうして、悪いやり方をやらなくなってくれば、自ら弓を大きく押し開くための感覚がわかるようになってきます。

ここで、弓道家が陥るよくない勉強の仕方が「いきなり答えを探そう」とすることです。全然練習してないのに「こうするといいのか?」「これで大丈夫か」と考える事ばかり行なって体を動かそうとしない。これが一番よくありません。

このような思考で弓を引くと、「いい感覚」を手に入れたとしても、あるきっかけで忘れてしまい、結局引けなくなります。要はどのみち失敗を通過しないといけません。そうであるなるなら早いうちに失敗をしてどんどん改善方法を考えていくのが合理的といえます。

何回も行うと、次第に的中率も上がっていき、射型も技術も向上します。時間はかかってしまいますが、この押し開く感覚を先に身につけてしまう方法が、確実に弓道の技術を伸ばす方法といえます。

指導者は引きすぎと注意してはいけない

なお、弓道の世界では、矢束を最大限にとろうとすると、「引きすぎだ」と注意する人がいます。

結論から言います。このような方が指導者がいる場合、高い確率で弓道の技術を伸ばす方法を理解されていないので、指導を受けるのをやめてください。時間と労力を無駄にするだけです。

また、指導者は受け手に対して「引きすぎ」と指摘するのをやめましょう。これを言ったら全員引き分けが小さくなって何かしらの射癖にかかるからです。そうして引き分けが小さくしか引けなくなり、直せないままどんどん実力が下がってしまいます。

理由は、矢束いっぱい引くことが弓道の技術を伸ばす一つの方法だからです。古くの先生は皆この方法についての重要性を解説しております。

・師が弟子に弓を教える時は矢の長さいっぱいに引くことを最初に教える(「旬子」孔子と同じ有名な思想書の一文より)

・会では矢束いっぱい引き込みて(浦上栄範士、安沢平次郎氏「弓道教本二、三巻」より)

・正射とは、矢束いっぱい引いて得た中り(本多利実氏「本多利実弓術講義録」)

ちなみに、もっと挙げようと思えばもっと出てきます。これだけ有名な先生が皆「矢の長さいっぱいに引け」と書いてあります。しかし、連盟だけが「引きすぎだ」と言います。

これは明らかに勉強不足としかいえません。本で勉強しない高段者は指導者と言い難いので指導を受けるのをやめてください。

ただ、このように言う人の言いたくなる気持ちもわからなくありません。おそらく、引きすぎと考える人の不安に思っている要素は「手首が手繰る」「右肩が引けてしまう」「もし、場外に飛んでしまった場合の責任が取れない」。こう言ったところです。

もし、このように考えている場合、いい方法がございます。上記に書いた三つの不安要素は解決できます。手首が手繰る場合は小指と薬指を握らせてください。右肩が後ろに引き肩気味になったら、足踏みで右足の角度を狭くすれば良いです。次の二つを毎回の射で行わせれば射癖は減って行きます。

それと最後の場外に飛ぶ話ですが、これも矢の長さいっぱいに引かせた方が行きにくいのです。理由は、いっぱい引かせて腕を突っ張らせたら離れた時に自然と左腕が下に下がるからです。これを、人によっては大離れの射法と言います。この方法の方が体は使えて、紐が腕に当たらず、加えて左手が下に下がるので上に飛びにくくなります。

これでも場外に行くのが怖い場合は、つがえる位置を下に下げれば問題ありません。つまり、矢の長さいっぱいに引かせれば、左手は下に行くのです。大きく引けば、その反動で大きく腕は開かれる、この物理法則に従えば、離れた時に矢の線が上に向きすぎることはありません。つまり、大きく引いた方が安全です。

では、どういう場合に矢が場外に飛んでしまうかを解説します。連盟のように矢の長さを引かず、左手の拳の位置を変えない場合です。そうすると、左拳が下におりないからです。さらに、腕を目一杯伸ばさなければ、離れの瞬間に逆に右拳を下に切ってしまい、上に飛んでしまう可能性があります。

ちなみに、関東にある公共の弓道場のように安全施設のない弓道場二件では、上記のような「小さい引き分け」をやらせないと指導方針をいただいています。なぜなら、連盟の射法をやると高い確率で「上に飛ばす」からです。個人で管理されている弓道場ではそのように、「連盟の射法は危険度が高い」ことをきちんと理解しているため、その引き方をさせません。

もう一度言いますね。安全性の面では連盟の引き方の方が大変危険です。なぜなら、左拳の位置が下がらないことをよしとしているからです。気をつけてくださいね。

場外に飛びやすい引き方を教えたのは自分のくせに、受け手が場外に飛ばしたら「なんでそのように離れを切るんだ」と怒る先生を東京で11人ほど見かけました。

教わるみなさま。勉強不足のくそ高段者に責任転嫁されないようにしてください。

被害者は2018年の段階でまだ報告が増えています。この被害者に引き方を聞いたら、やはり連盟の「左拳を下げない引き方」を教わっていました。

今後みなさまに指導者に騙されないようにはっきり書いておきます。

また、このように解説されている人もいます。引かぬ矢束は矢束いっぱいに弾き切った状態ではなく、「関節に適度にハマった箇所」と解釈する人もいます。つまり、引き絞った状態ではなく、右肘から左右の肩まで関節がしっかりハマって無理のない状態を解説されています。

これ、連盟が作り上げた勝手な解釈です。事実は異なるのできちんと原文を調べましょう。

引かぬ矢束を「適度にハマった状態」と解説されている人は、尾州竹林派を習った富田範士です。そして、富田範士の習った尾州竹林の弓術書に「引かぬ矢束」という言葉が記載されています。その原文には、引かぬ矢束は「引き切るところがない」状態をはっきり書いてあります。

富田範士の尾州竹林の引かぬ矢束 = 関節が適度にハマり、無理のない状態

尾州竹林「原文」の引かぬ矢束 = 引き切るところがない状態

はっきり言って原文の意味を間違えています。このように、弓道連盟の教えは原文の内容を無視して都合の良いように解釈を変えて嘘を教えることが多々ありますので注意してください。

少し考えてみてください。「関節に適度にハマった状態」というのは誰がどう判断するのでしょう?こんな抽象的な内容に落とし込んでその内容を理想の状態として目指してください、と言われても99パーセントできません。原文にははっきりと自分の引き切ったところと解説されています。

そのため、引き切ってください。最初はきついと思いますが、腕や肩を使って自分の中で引き切ってください。そうして、大きく離してください。そうして、慣れてきて体力や押し開きかたがわかってくれば、無理なく矢束いっぱいに引き込めるようになります。

そのため、「引きすぎる」ことは大切です。どんどん引こうとしてください。おそらく、右手首がたぐってしまったり、物見が照ってしまったり、胸が前に出たり上半身が力んでしまったり、いろんな問題が出てくるでしょう。でも、それらの問題が起こっても一つずつ解決法がありますからそれを実践していってください。

そうすると、あなたは多種多様の経験をへて、確実に積み重ねた実力、多様関節の動かし方を教えられる深みのある弓道家になります。

押し開く引き分けを通じてあらゆることを経験して行ってください。必ずあなたの引き分けはよくなります。

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