鼻呼吸で弓を開く力が劇的に増大する理由|3つの膜の連動を理解せよ

 

「弓を引くとき、どうしても肩に力が入ってしまう…」「強い弓を引きたいのに、腕の筋力だけでは限界を感じる…」こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

ただ、ここでよく陥るのが、

筋トレをして大きく開こう

大三の取り方を変えようと

肘を使って大きく引こう

このように考えると思いますが、その全てが意味をなさない可能性があります。

なぜなら、これらの内容を実践しても、そもそもあなたの姿勢自体に横に開く力が出ていなければ、弓を開かないからです。

筋トレをしても、大三の取り方変えても、横に開く力が増えるわけではありません。それは、稽古をしていたら、そう感じる時もあると思います。

ただ、このような筋トレや肘の使い方以上にあなたが弓を開く力が増大する技があります。それが、鼻呼吸です。

★ 正しく鼻呼吸をすると、開く力は大きくできます。ただし、ここで重要なのは「意識して鼻呼吸をする」のではなく、「自然に鼻呼吸がなされる状態を作る」ということ。

この自然鼻呼吸を覚えると、あなたの弓道は劇的に変わります。結論:鼻呼吸は「意識するもの」ではなく「なされるもの」

最初に結論をお伝えします。★ 鼻呼吸というのは、自分で意識してやってはダメなのです。鼻呼吸は「なされるもの」であって、自分で意識するものではありません。

よくある鼻呼吸

鼻呼吸を正しく行えば開く力は増えます。しかし、そのためには、間違った鼻呼吸、正しい鼻呼吸を覚えないといけません。

例えば、息を止めていて苦しくなってきたから鼻呼吸をする——

ほとんどの人がこれように呼吸をしています。何もしなければ、酸素が鼻から入ってくるわけではない、そのままでいると鼻で呼吸したくなるので鼻で息を吸います。

これではダメなのです。これは意識して鼻呼吸をしているからです。このように呼吸をすると、胸と肩が開かなくなります。

 

なので、自然な鼻呼吸とは

力を抜いておいたらいつの間にか勝手に空気が入ってきて、勝手に出ていく。

この状態を正しい鼻呼吸とします。この呼吸を行うと、弓を開く力を最大限に引き出す秘訣なのです。

その具体的な手法を解説します

胸の筋肉の上部と下部を同時に開く構え方

これから弓を開く力が三倍あがる鼻呼吸の仕方を解説します。

そのためには、自然に鼻に酸素が入る姿勢を構築する必要があります。

そのために、弓構えの時に胸の筋肉(大胸筋)の上部と下部を両方とも開いた状態にします。

具体的な手順をお伝えします。

弓構えの状態から、腕を伸ばして下に下ろします。その腕を下から後ろに引いておきます。これにより、胸の下部が開きます。

その次に、肩の筋肉も後ろに引きます。この時、腕を後ろに引いた状態で肩だけ後ろに引くようにいしてください。この動作によって、胸の上部が伸びます。

この状態で的方向に顔を向けると、頭が軽くなる感覚が得られます。この状態でいてください。そうすると、意識せずとも自然に酸素が鼻に入ってくる感覚で、鼻呼吸ができると思います。

これが正しい構えができている証拠です。

この構えを作ったら、基本的に何もしなくて良いです。自分から吸おうと思わず、吐こうとも思わず、ただこの状態を維持するだけで、勝手に酸素が入ってくるような感覚になるのです。

弓と禅の創始者梅路見鸞はこの呼吸を「吸うでもなく、吐くでもない」呼吸と表現しています。正確には、勝手に吸われ、吐かれる呼吸と言えます。この状態で構えると、肋骨の下部は自然と下方に収まり、肋骨の上部は左右に開くようになります。

呼吸の量をコントロールする——100%吸って100%吐いてはいけない

正しい鼻呼吸をすると、呼吸の量もコントロールできると思います。ここで注意点があります。

呼吸は100%吸って100%吐くと、逆に身体が縮みます。

弓道教本第2巻で高木範士が解説されているのですが、★ 呼吸筋が働きすぎると凝りが生じると述べられています。

その理由は、100%全部を吸って、100%全部を吐く呼吸は自然ではなく、意識的な鼻呼吸になっているからです。その呼吸動作では、姿勢が変わってしまいます。

吸うと胸が開き、吐くと胸の筋肉が沈む。この繰り返しを続けることで、胸の筋肉が開いたり閉じたりすることになります。

これによって胸の開く力が低下して、身体を上方に伸ばす力も減っています。

さらにいうと、よく観察すると100%吸う・吐くの運動をしていると、肋間筋が硬くなっているのが観察できるでしょうか?

これは、意識するあまりに呼吸筋が硬くなっているのです。何も意識せず吸ったり吐いたりすれば、胸の筋肉が開くように体を設計したいのです。

そのためには、呼吸の量をコントロールする必要があります。

具体的には、ある程度吸ったらある程度自然に出てきて、ある程度吸ったらまたある程度出てくる——このような穏やかな呼吸の状態を作ることが大切です。最初は正面打起しの状態で練習すると良いでしょう。

3つの膜の連動が開く力を最大化する

ここからが今回の核心部分です。人間の体には、重要な「膜」が3つあります。それは、喉の膜横隔膜、そして骨盤底の膜です。

この3つの膜が連動して上下に動いている状態を作ることが、弓を開く力を最大化するポイントなのです。

意識して鼻呼吸をすると、喉の膜は動いているのですが、横隔膜や骨盤底まで連動して動いている感覚は得られません。しかし、先ほど説明した「胸の筋肉を開いた状態」を作り、頭を軽くして自然な呼吸を行うと、喉の筋肉が緩やかに上がったり下がったりする感覚だけでなく、横隔膜も一緒に連動して動いている感覚が得られるようになります。

さらに立った状態では、骨盤も上下しているような感覚になります。この3つの膜が流れるように縦に動いているとき、胸の筋肉やお腹の筋肉が開かれる力というのは、息を吸っているときも吐いているときも、ずっと出続けるのです。

★ この「胸の筋肉が開き続ける力」が常に出ているからこそ、弓を開く力が強くなるのです。

自然な鼻呼吸と意識的な鼻呼吸の違いを体感する

ここで、実際にゴム弓を使った検証方法をお伝えします。ゴム弓は弓力が弱いので、ゴムの下の部分を引っ張って短めにしておいてください。

まず、胸の筋肉の上部と下部を開いた状態を作ります。この状態で意識して鼻呼吸をしながら引いてみてください。持っているとわかるのですが、全然開く力が出ないのです。

次に、頭を軽くして、3つの膜が連動するような自然な呼吸状態を作ってから引いてみてください。★ 同じ動作なのに、開く力が全然違うことが実感できるはずです。

右の肩の開く力が、意識的な呼吸では全然出ていないのに対し、自然な呼吸では驚くほど楽に出ることがわかります。これが、呼吸によって開く力を増大させるということの本質なのです。

なぜ自然な鼻呼吸で開く力が増大するのか——物理学的解説

最後に、なぜ自然な鼻呼吸が弓を開く力を増大させるのか、その原理を説明します。

先ほど説明した3つの膜が連動して動いているとき、頭が軽くなる力、胸の筋肉が開く力、お腹の筋肉が開く力が同時に発生しています。これらの力が出ているとき、膜は自由に動くことができます。

重要なのは、この「開く力」が息を吸っているときも吐いているときも、常に発生し続けているという点です。つまり、呼吸のどの瞬間においても、胸の筋肉は開き続け、お腹は開き続け、頭は軽くなり続けているのです。

物理学的に言えば、この持続的な「開く力」のベクトルが、弓を引く動作に加算されることで、筋力だけでは得られない大きな力が生まれるということです。張力を維持しながら弓を開くことができるため、離れの瞬間まで安定した射形を保つことができます。

具体的な稽古法——自然な鼻呼吸を身につける

では、具体的にどのように稽古すればよいのか、手順をまとめます。

  • ステップ1:正面に立ち、両腕を後ろに引いて胸の筋肉の上部と下部を開く
  • ステップ2:その状態で何もせず、頭が軽くなる感覚を確認する
  • ステップ3:意識して呼吸しようとせず、勝手に空気が入ってくる感覚を待つ
  • ステップ4:喉・横隔膜・骨盤底の3つの膜が連動して動く感覚を確認する
  • ステップ5:この状態を維持したままゴム弓で引き分けを行い、開く力の違いを体感する
  • ステップ6:実際の弓で同様の呼吸状態を作り、弓構えから会まで行う

最初は喉の部分と横隔膜だけでも構いません。胸を開いた状態で、この2つが連動して動いている感覚が得られれば、それだけでも開く力は大きく変わります。

まとめ:呼吸を味方につけて強弓を引こう

今回お伝えしたことを整理すると、弓を開く力を増大させるには、意識的な鼻呼吸ではなく、自然になされる鼻呼吸の状態を作ることが重要です。そのためには、まず胸の筋肉の上部と下部を開いた構えを作り、頭が軽くなる状態を維持すること。そうすれば、喉・横隔膜・骨盤底の3つの膜が連動し、開く力が持続的に発生するのです。

大三の位置を変えたり、筋力に頼ったりする前に、まずこの呼吸法を試してみてください。あなたの射が「しっくりこない」と感じるとき、その原因の一つは、意識して鼻呼吸をしていることかもしれません。

弓道の稽古において、呼吸は見落とされがちな要素です。しかし、正しい呼吸を身につけることで、強い弓も驚くほど楽に引けるようになります。ぜひ今日から、「なされる呼吸」を意識してみてください。あなたの弓道が、新しいステージに進むきっかけになることを願っています。

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