礼射、武射系統の足踏みと二つに足踏みの仕方が分かれた理由

ここでは、2種類の足の踏み方に関して解説していきます。

 

 礼射と武射の足踏みを理解する
足踏みの仕方は二通りあります。一つは小笠原流の礼射系統の足踏みです。左足を半歩踏んで、右足を左足まで引きつけてそこから踏み開きます。武射系統の足踏みは左足を半歩踏み開き、右足は左足に引きつけず、半歩踏み開きます。これが武射系統の足踏みです。

 

 

上、礼射系統の足踏み、下、武射系統の足踏み

 

礼射系統の足踏みは流派でいうと「小笠原流」、武射系統の足踏みは「日置流」に当たります。実際に、範士の先生の足踏みの仕方も、礼射系統、武射系統に分けて解説されています。

 

礼射系統
的の一直線上に左爪先を矢束の半分くらいを60度くらいに踏み、的を見込んだまま、右爪先を左足の近くまで引きつけながら、描く気持ちで矢束の残りを踏む据える。〜高木範士〜

 

武射系統
的の中心とそのつま先とを直線で結び、その延長線上に右足の位置を推定し、眼を右足先に注いで右方に踏み開く。〜富田範士〜

 

 礼射系統、武射系統の解釈

次に、礼射系統と武射系統がなぜ二つあるのかを紹介します。それは、二つの流派では、足踏みにおける考え方、重視する点が異なるからです。

 

礼射系統では、動作の無駄を省くことを優先する

まず、礼射系統の足踏みの考え方には、「礼法」の考え方が含まれています。小笠原流における立ち方、弓の引き方、礼の動作などあらゆる動きが、礼法の考えに基づいて説明されます。そして、その礼法の考え方に基本として「実用・省略・美」があります。

 

つまり、無駄な動作を極力省いて、効率的でふさわしい動きをしていると、見る側にとって「美しい動き」となるのです。この立ち方の説明は教本でいう「執り弓の姿勢」に当たります。そして、小笠原流の歩射における姿勢の話と照らし合わせると、非常に似ているのがわかります。

 

このことから、足踏みやその他の動作を行う際に、「できるだけ無駄な動作をなくす」ことを主眼にします。もし、執り弓の姿勢によって背筋を伸ばしているのにも関わらず、顔を違う方向に向けたり戻したりすると、動作自体に無駄が入ります。それをなくすために、足踏みにおいては、できるだけ執り弓の姿勢を崩さないで動作することが求められます。

 

すると、足踏みにおいて、膝関節を屈しないまま動作するようにします。武射系統の足踏みを行う場合、膝は屈しても問題ありません。しかし、礼射系統の場合、膝を曲げてしまう動作の無駄をなくすため、伸ばしたまま行います。現代弓道においては、足踏みは礼射系統の仕方で学ぶため、膝を屈して行っている方は少ないと思われます。

 

当然ですが、的を見ながら左足を踏みます。そして、右足を踏み開くときに目を足に向けてはいけません。なぜなら、足踏みですでに顔が的に向いているのにも関わらず、右足を見るためにまた顔が動いていると動作に無駄が入ります。より、美しく足踏みを行うためには、そのような「膝関節をゆるませる」「右足を見直す」といった動作もなくしていきます。

 

このように、動作の無駄を省くことに主眼を置いた礼射系統では、足踏みにおける目の向け方が変わってくるのです。

 

武射系統では、正確に矢を放つのを重要視する

ただ、武射系統の場合、この考え方が変わります。武射系統では、的に対して、きちんと矢が真っすぐに飛ぶように、足踏みをきちんとそろえることを重視します。

 

この理由として、足踏みが的の中心線上にそろわなければ、矢を真っすぐに飛ばしたとしても、的にあたらないからです。

 

武射系統である「日置流」では、弓を引くときの目標として「飛・貫・中」があります。これは、射を行う際に、ただ的中させるだけではなく、できるだけ矢勢があり、貫通力の高い矢を放つことを目標としてます。この目標にもある通り、良射を行う際に、弓をしっかり引き、そして中てることを目標として稽古するように説明しました。

 

そして、日置流では、「中墨の準」という足踏みの教えがあります。これは、左足先を的の中心線にそろえるように立つ教えです。現代の弓道でも、「両足先を射場につけた目印につけるように」と教えられることがあり、これは中墨の準に当たります。

 

つまり、足踏みを行うときは、たとえ見る場所を変えてもいいので、「きちんと両足先をそろえて、立つ」ことを優先しました。当然ですが、骨盤が垂直に立たせ、背筋を伸ばさなければ、きちんと的を両目で確認できません。そのため、多少膝を屈しても問題ないと説明されます。

 

このように、武射系統の足踏みでは、「きちんと中てる」ことを優先しました。その結果、右足先を確認しながら踏んでも良いようになっています。

 

どちらの方が優れた足踏みなのか?

ここまで見たように、どちらの足踏みも、考え方がきちんとあるため、方法として成り立っています。礼射系統の観点で、武射系統の足踏みを見ると武射系統を見ると「右足をいちいち見ながらやるなんて見た目がキレイではない」と思うでしょう。一方、武射系統の
観点で礼射系統の足踏みを見ると「いくらキレイに足踏みしたって、的の線上にそろっていないんじゃ、射を行う意味があるのか?」と思ってしまいます。

 

では、どちらの足踏みの方が優れているのでしょう。結論から言いますと正解はありません。もし、学生弓道で的と両足先の線でそろえて足踏みのするのが「良い」と考えても、社会人に入ってその考えで弓道を行うと注意されることがあります。あるいは、昇段審査であっても、県によっては、地方審査でも「武射系統」で足踏みしても問題ない場合もあります。

 

ただ、あえてお話しすると、「なぜ?礼射系統では、膝を伸ばしたまま足踏みし、武射では膝を屈しても問題ないのか」くらいの内容は説明できるようにしておいた方がよいです。理由は簡単であり、足踏みのこのような基礎知識でさえも、自分の言葉で説明できない指導者があまりに多すぎるからです。

 

そして、どちらかの考え方に偏ってしまうのも危険です。なぜなら、一つの価値観でしか、物事が見れなかったら、弓を引く技術を向上させることができません。あらゆる考え方を聞き、実際にどうなのか検証したり行動することで、経験値が積み重なり、弓が引けるようになるのです。しかし、このような努力を行わなければ、たとえ高段であったとしても、「怠慢している」としか言いようがありません。

 

全国の弓道家に会い、弓道の実情を聞くと、「足踏みをきちんと系統に合わせて説明していますか?」と質問すると、「されません、ほとんどの先生は、足踏みは「60度、的をじっと見て」と形式的なことしかお話しされず、なぜそのようにするのかという理由を説明しません」と回答をいただきます。

 

あなたが、弓道の実力を伸ばしたい、弓の引き方も勉強して、心を鍛えたいと思うのであれば、「礼射系統」「武射系統」の足踏みの様式の違いをご説明できるようにしてください。あたり前のような内容かもしれませんが、これを自分の言葉で説明できる先生は0.1%にも満たしていません。そして、本を読んだり、弓を引くときは、足を踏む動作一つにおいても自分で考えながら行うようにしてください。

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