弓の引き方を勉強しようって時に、弓道教本を読もうと思いますが、
弓道教本が抽象的すぎて何を行っているのかわからない
そもそも、どのように勉強すれば、「理解した」ことになるのかがわからない
と言う方がいます。実際そうですよね。全弓連の高段者も弓道教本を読める人はほとんどいません。読んだこともないと言う人もいたりします。
そこで、今回は、弓道教本の読み方と称して、教本の言っている内容をスラスラ理解するコツ、メソッドについて解説していきます。
目的の最適化でやるべきことを明らかにする
まず、弓道教本の言っている内容を理解するためには、
複数の先生が共通して言っている内容からやるべきことを一つに絞る
ようにしましょう。このように、様々なやるべきことがあるなかで、やることを一つに絞るのを「目的の最適化」と称します。
弓道教本を読んで見るとわかりますが、とにかくわかりにくい!なぜなら、それぞれの先生が別々のことを語って、「結局なにをやればいいのかわからない」からです。
一方の先生は、「足踏みではふんわりぴったり足を大地に乗せる」と言っておきながら、「足踏みでは、左はつま先に体重を乗せて、右足は踵に乗せる」と言っています。どっちが正解やねん。と言う話になります。このように言うと、
人それぞれ骨格や考え方は違うんだ、だから射法に正解はないんだ
と言います。じゃあ先生なんかいらんだろ、と思いたくなります。
教わる側の知りたいことはただ一つ、「何をやれば、ひとまず八節動作で基礎、やるべきことができている」と言えるかと言うことです。「人それぞれ違うから仕方ない」なんていうのは、指導者の怠慢、高段者の勉強不足としか言いようがありません。
そのため、この記事を読んでいるあなただけ、弓道教本を読めるようにしましょう。そこで、目的の最適化させましょう。
まず、本を読むときに「どの先生」の言っている内容を理解するかを決めてください。そして、一人の先生の話されている内容を合理的に理解するようにしましょう。
そうしたあとで、他の先生の文章を読んでみてください。すると、「あれ?この内容、●●先生」の言っている内容と同じな気がする・・・・と思うかもしれません。
つまり、目的の最適化とは、教本に記された先生のなかで
・一人の先生の言っている内容だけは完璧に理解する
ようにします。そして、この内容を理解することで、
他の先生が言っている内容も包括的に理解できるように勉強していく
ように持っていきます。
そうすることで、弓道教本の内容が理解でき、さらに実践できます。
一人の先生の言っている内容に絞ると、他の先生の言っている内容までわかってくる例
では、ここでみなさまに「一人の先生の内容がわかると、他の内容も数珠つなぎでわかってくる」例をお話します。
例えば、教本2巻の足踏みの説明を見ると
千葉範士:足裏はふんわりぴったりと着くのが良いように思う
宇野範士:土踏まずに中くぼみを持たせて、ちょうど中くぼみのゴムが吸い付くように
浦上範士:左足にはつま先に、右足には踵に体重を乗せるようにすること
神永範士:項を伸ばすと、両肩が落ちて開き、膕を伸ばす
高木範士:足の裏全体が平らにふんわりぴったり着くようにする
このように文章を見ると、正直、「なにを言っているのかわからない」のが正直でしょう。みんなバラバラに言っている表現が違うからです。
しかし、ここで、一人の先生に絞って勉強をしてみましょう。例えば「神永範士」に絞って足のふみかたを勉強してみます。
すると、
神永範士
・足踏みでは、最初から足には力を入れない
・項を伸ばすと、両肩が落ちて開く
・ひかがみが伸びる
・打起こしから会に入るに従い、縦線が一貫してくる
・ここでの縦線は「踵から足裏に響き答える」ようになる
ようです。では、この内容を一つずつ考えていきます。
まず、足には力を入れません。脚筋もピシッと伸ばさないと言うことで、太ももにも力を入れないようにします。そのためには、「つま先に体重を乗せてはいけない」ことがわかります。
つま先に体重を乗せると太ももの筋肉に力が入るからです。さらに、神永範士は項を伸ばして、両肩を下げなさいと解説しています。このためには、「踵に体重を乗せる」必要があります。
踵に体重を乗せると、体の重心が後方に動き、頭部を後ろに引きやすくなります。
さrない、頭部を引き、首の後ろを伸ばして、踵を踏みしめると、アキレス腱から頭頂部の筋肉を上下に伸ばすことになりますよね。これが「縦線が一貫している」と言う表現に繋がるとわかります。
つまり、神永範士の文章から具体的に行うべきことを明確にすると
イ、つま先に体重を乗せる
ロ、踵に体重を乗せる
ハ、「ロ」によって、項を伸ばせるようになる
二、「ハ」と「ロ」によって、縦線が伸びるようになります。
と言うふうにまとめられます。
以上の内容を頭に入れて、もう一度5人の先生の文章を読んでみましょう。
千葉範士:足裏はふんわりぴったりと着くのが良いように思う
宇野範士:土踏まずに中くぼみを持たせて、ちょうど中くぼみのゴムが吸い付くように
浦上範士:左足にはつま先に、右足には踵に体重を乗せるようにすること
神永範士:項を伸ばすと、両肩が落ちて開き、膕を伸ばす
高木範士:足の裏全体が平らにふんわりぴったり着くようにする
そうすると、この5人の先生のほとんどが「神永範士」のお話されている内容と同じことを言っていることがわかります。
まず、千葉範士の「ふんわりぴったり」、宇野範士の「ゴムの中くぼみが床面に吸い付く」、高木範士の「足裏全体がふんわり」と言う表現は同じ意味です。「たつ時は、足裏全体に体重を乗せるようにしましょう」と言う意味です。
人間は立つ時に、「つま先、小指、踵」の3点で自分の体重を支えています。つまり、三人のされている話は皆「足裏の3点で体重を乗せるようにしましょう」と言う意味です。
では、3点に体重を均一に乗せるには?「踵に体重を乗せて、つま先にはあまり乗せないように立つ」必要があります。
何故なら、人間の踵は足裏についている表面積が大きいです。つまり、その分多めに体重を乗せないと、つま先との圧力と均一に保てません。
したがって、踵に体重を乗せることを行えば、千葉、宇野、高木範士の文章の内容を実践できます。
この通り、「神永範士」の言っている内容を正確に理解できれば、3人の先生の言っている内容も同じものとわかるのです。
一人一人の先生の特徴や好みも考慮に入れれば、言いたいことがまとまる
しかし、ここまで読んだ人は、「では、浦上範士は?」と思うかもしれません。
浦上範士は「左足はつま先、右足は踵」とみんなと異なる説明をしています。しかし、浦上範士も他の4人と同じことを話していることがわかります。
浦上範士は斜面打起こしです。弓を斜め下に構える時、左腕を先行して伸ばす必要があり、その時に足踏みを左足は体重をつまさき側に乗りがちです。
もし、浦上先生のように斜面打起こしにするならば、左足のつま先側に体重を乗る時もあるかもしれません。しかし、弓を打起こし、引き下ろしてくることには、体重の乗る位置は前方ではなく、中央もしくは踵側によってきます。
つまり、浦上先生が他と違う説明になっているのは斜面打起こしだからです。しかし、右足は踵に体重を乗せている説明があるように、「踵に体重を乗せることから足踏みが始まっている」ことはわかると思います。
このように、目的の最適化を使うと、
・神永範士の言っている内容がわかる
・神永範士の体の状態を分析して、千葉、宇野、高木、浦上範士の言っている内容もわかるようになる
ということになります。
このように理解すると、教本の全ての先生の内容をスラスラかつ、5にんの言いたい内容をスッキリ整理して理解できるでしょう。