引き分けで重要となる「脇の下」の筋肉を弓構えで活用する

今回は、弓構え動作で絶対に覚えたい「脇下の筋肉」の重要性・具体的な使い方を解説します。

今、弓道を稽古して、上半身が力んでしまったり、うまく弓を引けない場合、脇下が締まる弓構えを実践してください。これを覚えると、めちゃくちゃ楽に弓を引けるようになります。

まず、弓構えで足裏の重心の位置、姿勢、両肩の線などが適切かを確認します。そうすると、脇下当たりの筋肉がグッと張られて気持ちが引き締まる感じが出ます。これが、前鋸筋(ぜんきょきん)です。

弓構えによって、前据筋が張る

人間の体には首の後ろから肩にある「僧帽筋」と、肩から腕の表側に「三角筋」があります。そして、脇下にある「前鋸筋」。この筋肉は前に何かを押すときに使われる筋肉です。肩が上がらないように肩甲骨を動かすと、前鋸筋が働きます。

まず、初心者と熟練者の違いは、「前鋸筋が使えているか」どうにありました。

ある実験で、初心者と熟練者と弓を引く際の筋電位を測定した実験があります。そこで、「熟練者ほど腕の裏側の筋肉を活用していた」ことが、実験でわかりました(現代弓道講座五巻より)。この腕の裏側と前鋸筋は密接な関係にあります。

それが、前鋸筋が張ると、肩甲骨が外側に開きます。これによって、腕の裏側が効果的に使われ、負担なく両腕を伸ばすことができます。

では、先ほどの実験で初心者の結果を見ると、初心者は「腕の裏側、表側共に力が入っていた」という結果になりました。上腕三頭筋、上腕二頭筋共に共縮を起こして云々・・・と記されていましたが。

こう言うと難しくなるので、初心者は弓を引くとき、腕がめちゃくちゃ力むと思ってください。この腕の力みも、前鋸筋が関係しています。前鋸筋が縮んでないので、腕が力むのです。

脇下の筋肉がゆるみ、首と肩の筋肉が縮んでいるから、腕の筋肉が必要以上に力みます。

初心者の場合、弓を押すときに左肩が浮き上がってしまうときがあります。これは、脇下が空いて、首と肩の筋肉が縮んでいるため、肩関節が上がってしまいます。この問題も、脇下から意識して押すように意識すると解消されます。

このように、腕の力みがとれること以外にも、引いているときに肩関節が前後にぶれにくくなったり、呼吸動作がしやすくなったりします。このように、いいことづくめの脇下の筋肉、是非毎回の射で使えるようにしてください。

簡単に脇下の筋肉の張りを確かめてみる

脇下の筋肉ってマニアックですよね。おそらく、こう言っても、「え?脇下の筋肉、よくわかんねー」って思いますよね。それも当たり前。日常生活でほとんど使いませんから。まずは、脇下の筋肉を簡単に感じることから初めてみましょう。

やることは簡単です。腕を丸く囲って、両肩関節を前方に出してみてください。少し胸をすぼめるような感覚です。

このポーズを取った後、脇下の筋肉を触ってみてください。おそらく、脇がパンパンに張っていると思います。これが、前鋸筋です。

この使い方はボクサーの筋肉の使い方を真似たものです。ボクサーはパンチを繰り出す時、脇下の筋肉めっちゃ使います。

前鋸筋は別名、「ボクサー筋」とも呼ばれています。

脇下の筋肉を使うための具体的な身体の使い方

では、脇下の筋肉の張った弓構えを構築する方法をお伝えします。そのためには、神永範士の弓構えを勉強すると良いです。

神永範士の八節まとめ

足踏み:少し、広めに足を踏んで、首の後ろを伸ばす

胴造り:腰骨を立てるようにする

弓構え:両腕を斜め下に伸ばすようにする

これを一つずつ行うと次のことがわかります。

足踏みから胴造りを行うと

両方の太ももが外側に開き、膝関節が少しだけ曲がる

弓構えで両腕を斜め下に下げると

両肩関節が下がって、脇下の筋肉が張る

次のように行うと、脇下の筋肉が張ります。この張られた状態は、次の打起し、引き分け以降も続きます。

項を伸ばし、下がった両肩を八文字のように足踏みの向きに開く気持ちで備える~神永範士~ 

このように、弓懐を構築することで、弓を押し開く際に重要な「前鋸筋」を意識することができます。このように、脇下をキュッと張って弓を構えると、いいことが3つほどあります。

1、呼吸がしやすくなり、肩がより下がる

前鋸筋が張ることに夜最大のメリットはこれでしょう。解剖学的に、肩が下がって上げられなくなるのです。これにより、空気を取り込む量が増える腹式呼吸がしやすくなります。

脇下の筋肉は肩の筋肉と拮抗関係にあります。拮抗関係とは、「この筋肉が縮むと、その影響で別の筋肉が伸びる」という「一方が縮めば、もう一方が伸びる」という関係です。そこで、脇下の筋肉が縮むと、肩が緩みます。この体の関係が面白い!次の動作が格段に行うのが楽になるからです。

2、打起し動作がしやすくなる

1より、脇下の筋肉が縮んで肩が緩めば、打起しが上がりやすくなります。おそらく、拳二個以上額より高くあげても肩が上部に上がりにくくなります。

もし、打起しで肩が上がってしまうなら、弓構え動作で脇下の筋肉が張ってしまっている可能性があります。

3、大三で右肘が流されにくくなる

このように、右肘を高くあげれば、次の大三動作で右肘が流されにくくなります。これにより、引き分け動作を大きく後方に引き込めるようになります。

ちなみ、大三で右肘が流されてしまうのは、右肩が上がっているからです。右肩が下がって、脇下の筋肉に力が入っていれば、右の上腕(肩から肘)が動かず、肘先だけが折られます。

なお、これまでお話した脇下の筋肉の張り方を実践しても、両肩が上がってしまう場合、次のような原因が考えられます。確認してみましょう。

両手首が内側に曲がっている

手首だけ極端に曲がっていたりすると、打ち起こし以降、手首に力が入る射になります。例えば、弓構えで左手首だけ外側に曲げたとします。こうすると、確かに大三はいれやすくなります。しかし、手前の打起し動作で左腕が伸びきってしまい、左肩が上がりやすくなります。

下の写真は手の内の形を決めすぎて、左拳だけが曲がっている状態。こんな感じになっていたら、左肩が上がりやすくなって、脇はゆるゆるに、気をつけてください。

この時の対策方法は、腕と手首は真っ直ぐに入れるが基本です。そこで、人差し指と親指の間を弓に対して45度の角度に入れるようにしましょう。

拳が前に出ると上体が屈みやすくなる

次に、拳が前に出すぎると左右の肩が詰まってしまいます。

これは、拳を前にだすことで、みぞおち部が前に傾いて猫背の姿勢になるからです。猫背になると、肩関節が自然と上がり、脇が空いた姿勢になります。この肩の状態を「いかり肩」とも言います。

この場合、両拳を近づけてみてください。みぞおち部の筋肉が上方に伸ばしやすくなります。そして、両肩を下げると脇下の筋肉がキュッと張ります。弓構えの形が縦に楕円になってしまうと、打起しを上げにくく、引き分けがしずらくなります。

以上の内容を理解して、脇を張った弓の構え・引き方を実践してみましょう!これによって、弓道の実力をさらに伸ばすことができます。

 

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