歴史的観点から打ち起こしの重要性を理解する

この記事では、打起こしにおける身体の使い方から離れて、歴史的観点から打起こしの重要性を解説していきます。

みなさまはなぜ、正面打起こしは大切であるか説明できますか?日本弓道連盟の射法八節では打ち起こしは小笠原流の「正面打ち起こし」を使われていますが・・・・

多分、今の連盟の方に聞くとこのような回答がくるのでは?

・斜面打起こしは武射系統なので、精神修行にならない。正面打ち起こしは礼射系統で精神修行で使われていたので、正面打起こしの方が適切

・正面打起こしは左右対称に上げるので、身体の負担やバランスが良い

このような回答ですが、どれも間違えています。もし、精神を鍛えるため、修行のためと正面打起こしを取り入れるなら、それは非効率です。その内容は昔の文献にきちんと記されているために、歴史的観点から射法を考えるきっかけとしていただくために本記事を書き上げました。

なぜ、正面打起こしが大切か?そもそも大切なのか?を解説していきます。

正面打起こしは精神修行として不向き?

最初に結論からお話しておきます。小笠原流の射法では精神を鍛えられません。精神修行のために正面打起こしを取り入れたのであれば、不適合となりえますので、以下の根拠に目を通して見てください。

まず、流派や使用されている打起こしがそれぞれ違うので、紹介いたします。弓道には、日置流と小笠原流と二つの異なる流派があります。この他にもありますが、この二つに絞ってお話すると、斜面打起こしは日置、小笠原は正面打起こしと設定されています。

日置流 = 斜面打起こし

小笠原 = 正面打起こし

次に、前提としてお話していくと、全ての流派が「弓を引くことによって精神を鍛える」のを目的としているわけではありません。古くの弓道文献通りに記すと、心と体を鍛える際に弓を使うのが日置流、作法を使うのが小笠原です。

日置流 = 弓を引いて心を鍛える

小笠原 = 作法で心を鍛える

そして、小笠原流の書籍を数冊見てみると、小笠原の射法の内容は日置流に比べて非常に浅いです。日置流は、様々な観点から弓の引き方から的をみるさいの心の持ち方まで詳細に解説されています。しかし、小笠原にはそれがありません。これは古くの文献である「尾修竹林弓術書」「武禅「梅路見鸞」」を書にあることを解説します。

小笠原流は、弓を引くことで精神を鍛えるためにできた流派ではありません。小笠原流は日置流に置ける弓の引き方、仏教の書籍、その他の伝統的な作法を複合的に合わせて悟りを得るのを目的とした流派である。

現代弓道講座二巻にも、小笠原流ができた由来が書かれています。その中にも、昔の作法や伝統的な行事の所作をまとめた書籍が残されており、この伝統を守るために立ち上がった流派と記されています。まり、小笠原は射型や弓の引き方に詳しくなく、方式や様式に詳しい流派なのです。私たちのように、体配と弓引き以外にやらなければいけないことが多くあり、それを全てこなすことで精神を鍛えることが目的となっています。

もう一度言います、小笠原流では、正射必中だけは目指せません。目指せないというか、目指すための労力と時間が足りないというのが正確な回答です。なぜなら、小笠原流はそれ以外にもっと複雑な作法や流鏑馬もしないといけないからです。

そう考えると、小笠原流って凄い流派ですよね。

一方、日置流に関しては、「弓を引くことで悟り、知恵を手に入れる」というだけあって蔵書は大量に出ています。各人の骨格に合わせた弓や矢の選定の仕方や体の使い方を仏教用語に交えて詳細に記されています。小笠原は取り懸けに関する説明が2ー3ページとすると、日置流はかき集めると、違う観点から10ページ以上は出ています。

小笠原:恵休善力の教え、まといがけとおさえがけの説明、

日置流:懸け口十文字、懸け合いの詰め、恵休善力の教え、受けがけ、載せ懸けの説明、弽に置ける離れの違い、弦道の能など

いかがですか?これだけの内容が記されていれば、「弓の引き方」だけで心と体が十分に鍛えられると思いませんか?これに加えて、日置流では、強い弓も引かないといけないし、鉄兜を射抜く力も養わないといけません。朝から晩まで30kg以上の弓を弾き続けてようやくその境地にいけるかぐらいになります。日置・尾州竹林流の凄いところが全員がそのような弓道家に育て上げるために作られた実践書であるということです。

そう考えると、小笠原流の射法よりもより精密に研究されているのは日置流です。ただ、もう一度言いますね、小笠原流は流鏑馬+複雑な作法をもやらないといけないので、強弓を引く必要性はそこまでないと言えるのです。両方とも流派として成り立っている、けどアプローチの仕方が違うというわけです。

では、日本弓道連盟の正面打起こしはどうでしょう?精神を鍛えるのを目的ということで小笠原流を取り入れていると言います。しかし、これでは精神は鍛えられません。

もし、小笠原流の引き方で精神を鍛えたいのであれば、これに合わせて体配以外の礼法+流鏑馬もしないといけません。形だけ取り入れるのはナンセンスです。もし、射によって精神を鍛えたいのであれば、小笠原流の射法という選択が間違えているのがわかります。

「正射必中」という言葉は、日本弓道連盟の造語であり、弓を引くことで心を鍛えたり生活を豊かにしたりすることを目的にしています。であれば、弓の引き方や身体の動かし方に特化した日置流の打起こしを取り入れるのが本来適切です。精神を鍛えるのが目的で

どの打起こしも本質は同じである

次に、正面打起こしを取り上げた理由として、「左右対称に上がるから」と解説される場合があります。これも違います。

確かに、正面打起こしの形は左右対称に動いているかもしれません。しかし、それは打起こしまでで、結局大三に入った時に左手で押していくので体の左側に力がこもります。結局斜面打起こしと同じで左手の入れ方のタイミングが違うだけで力のかかる順番もほぼ同じです。

弓道で大切な部分は引いている時に左右対称に押し開けるかです。その点を考えると、正面も斜面も大三から引き分けにかけて両腕にかかる負荷はあとになってお互いかかるため、本質的には同じです。したがって、正面打起こしの方が斜面打起こしより左右対称に動作が行えていることにはなりません。

wikipediaの情報では、正面打起こしと斜面打起こしで言い争いが行われ、折衷案として中間打起こしになったとお話されました。この情報はどうやら真実性がなさそうです。

なぜなら、弓道教本三巻のし祝部範士は雑誌「武弓」より、中間打起こしは大三の入れるタイミングが異なるだけで有効な方法であると解説されている本を全国に配布しているからです。波紋を読んで使用しずらいと騒いだ文献は残っておらず、むしろ有名な弓道家は中間打起こしで積極的に稽古されていました。

ここで、中間打起こしについて軽く説明します。これは、正面と斜面打起こしの内容を半々取り入れた打起こしです。弓構えでは、正面打起こしのように両腕を丸く囲み、上に上げていく際に徐々におしひらきながら大三の形にしていきます。

見慣れない動きですが、昔この手法を使用されている先生は普通にいました。例えば、全日本弓道連盟の発足に力をいれた阿波研造は中間打起こしをしていました。全日本弓道連盟初代会長の宇野要三郎範士も中間射法をしようしています。使いづらかったという理由で取りやめたというには結論が早すぎると思います。

では、この斜面打起こしから正面打起こしにした理由としてもっとも有力なのが一番有力な情報なのが、正面打起こしの賛成派が国の報道機関を使って斜面打起こしのネガティブキャンペーンをした情報です。

正面打起こし推奨派の村尾範士という方が「正面打起こしをすると、脊柱の歪みが起こって危険である」という論文を発表し、それをマスコミを使って日本中に宣伝しました。この内容によって、斜面打起こしが取り上げられなくなってしまいました。この内容は武道学研究の雑誌に取り上げられていた松尾巻則氏の内容です。

本当は、正面打起こしにすることに消極的でした。阿波研造も宇野要三郎も吉田能安も皆斜面打起こしを行なっても問題ないと、1000人以上の被験者の経験から証言を残しています。しかし、その情報が日本中に取り上げられることはなく、正面打起こしの推進の話は進んでいきます。そのような経由があって、正面打起こしにしました。

ここまで話を聞いてわかったと思います。正面打起こしは合理的ではない!政治的な思惑で決まったのだと笑。

決して私は斜面打起こし推進派ではありません。日置流を習ったものでもないです。ただ一つ、全国の弓道家が左右対称だから、精神が鍛えられるから正面打起こしにしたんだと言っているのならそれは情報が浅いかと思います。様々な角度から分析して、本当の意味や経由を知ることが大切と思います。

この話でもそうですが、弓道の稽古で一つ、「一つの情報だけ、高段者が言っていることが正しいと思い込んでそれ以外の情報はよくない」と決めつける人は結構多いです。こういう人にだけならないことをおすすめします。

礼儀を重んじる弓道ではなく、宗教ですから、しかも良くない方の。

実際、私、サイトを運営して、弓道連盟の高段者に大量に批判が来ています。しかし、私の知り合いにその批判をした人の情報を教えてもらい、性格や実情を聞いたら、「教本の内容すら理解できていない」というのです。そういう一部分の内容だけで批判する人は、面倒くさいので文献を調べません。

今一度、今回の打起こしの情報もそうですが、「事実関係をしっかり調べて、合理的な動きを調べるようにするといい」と思います。正面打起こしの理由づけが曖昧になっているのもそれを気づかせてくれるいい機会だと思います。

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