手の内で指をそろえようと意識しすぎると、射は失敗する

 手の内は、強く握らず軽く握る

手の内動作を行う際、何を行えばよいかわからない人はたくさんいます。そうした人は、最初に弓道の世界で知られる代表的な手の内があります。

例えば、以下のようなものがあります。

・三指をそろえる

・小指と親指をそろえる

・中指と親指で輪っかを作る

このように、手の内の形を学ぶことは、知識を増やす分には良いです。各流派によって手の内の説明は異なるため、一つ一つの意味を知っておくことに損はありません。

そして、「手の内を習う段階で整えなければ、弓道の技術は向上しない」とも説明する指導者がいます。

このことに関していえば、解剖学や体の仕組みを学び、「弓を引く際に指を整えるのがよい理由」を説明できるのであれば、そのように教えても構いません。ただ、このような知識も知らずにただ、「形がきれいだから」「そういうもんだから」という理由でこのような指導をすることは絶対にやめましょう。

あるいは、そのように勉強することも、長期的に稽古する際にオススメできません。

これには理由があります。

指の形を整えると、脳と腕に強い緊張が走る

弓道に限らず、日常生活、仕事、スポーツにおいて、「指先」「指」は大きな役割を持っています。その理由として、人は指先をそろえようと無意識に力を入ると、腕、肩、頭部に無駄な緊張が走るからです。

人の皮膚には、触覚、痛み、寒気など、微細な感覚を感知する神経があります。具体的には「マイスナー小胞体」「ルフィニ終末」「パチニ小体」などの感覚器です。これらの感覚器は皮膚の表層に存在し、その役割は、細胞膜に電気的刺激を与えることです。

この電気的刺激により、細胞膜外で電位差が発生し、血液の循環が始まります。この反応によって、老廃物の除去、周辺の筋肉の活動、自律神経(精神、感情にかかわる神経)の活動の調整にかかわります。

そして、指先の皮膚が硬くなったり強い圧迫を与えたりすると、腕や肩、脳に強い緊張が働きます。なぜなら、感覚器に過度に圧をかけると、電気的刺激が高くなりすぎるからです。これによって、過剰に血流が促進され、筋肉の無駄な力みや自律神経の働きの崩れを起こします。

聖徳大学で皮膚について研究されている山口教授は人間の感覚は「皮膚、筋肉、脳」であると説明しています。つまり、皮膚の接触と人の感情に与える影響は重要な意味をもっています。

指を整えると、大三で強く皮膚がすられてしまう

そして、なぜ指を整えることが、弓道に限って脳や腕の緊張につながりやすいでしょうか?それは、現代の弓道は正面打ち起こしであり、大三で手の中にある弓が大きく動くからです。

指の形を整えるとは、掌全体の形が決まることを指します。この状態を最後まで変えないように心がけると、弓が手の中に回る際に、大きな摩擦が生じる箇所が出てきます。特に、打ち起こしから大三にかけて、手の中に弓が回るとき、手の内の形を決めすぎたり、こだわりすぎたりすると、弓と皮膚とで摩擦や圧力がかかりすぎてしまいます。すると、皮膚の感覚器が強く反応してしまい、「左手が力む」「手の内の力が入りすぎる」といった症状に悩まされる危険があります。

あなたは射において大三をとる際に、手の内と弓との間で「ぎりぎりぎりー……」と音が出ていませんか?手の内の形に強くこだわりすぎてしまうと、大三で弓と掌の皮膚の間で強い摩擦音が生じます。弓と手の中で強い摩擦が起こると、無意識に握ってしまいます。これは、皮膚にかかる圧力が大きすぎて、表層にある感覚器が過度に反応し、「軽い緊張」が起こっているともいえます。

皮膚の柔らかさを取り戻せば、大きく弓を押せる

さらに、私の場合、不調者の指先の筋肉の硬さを確認し、その硬さをとりさる指圧法を実践します。このような施術を行うと、ほとんどの方の身体的症状(肩こり、腰痛など)を改善できています。

さらに、弓道関係者には、指先の皮膚に余計な刺激が出ない指のそろえ方を教えることで、「ゆるみ離れ」「会における両肩の力み」を改善することに成功しています。つまり、弓を引く動作を余計な力みなく、かつ身体の最大限の筋肉を活用するには、「皮膚への刺激があたえる身体の影響」を理解しなければいけません。

さらに、皮膚を調べ、指先について調べると、その役割は肩、脳まで及んでいることがわかります。例えば、人の手は寒気を感じると、手だけではなく、腕や肩も身震いします。これは、指先にある神経の電気的刺激により、腕や肩の神経、筋肉にまで情報が伝播するからです。

あるいは、人は手をだれかにぶたれると、痛さは手にしか残りません。しかし、その痛さは脳で感知し、「手」しかぶたれていないのに、脳に痛い感覚が強く残ります。なぜなら、手に痛い刺激が来たら、それによって生じた毒素や痛み物質(ブラギニン、ヒスタミン)を広い範囲に拡散しないよう、制御されるからです。

このように、人の指先は腕、肩、脳まで密接な関係を持っています。

指導者が受手に批判や指摘をしてはいけない理由

さらに、脳が緊張すると、指先も同調して硬くなります。それによって、筋肉を自然に働かせることができなくなります。

例えば、指導者に稽古している方に「○○ができていない」「▽▽が悪い」と指摘をされたとします。あなたがこのような言葉をかけられたとき、その言葉によって頭が緊張したことはないでしょうか?そのときに、指先が震えたり、手の筋肉が硬くなったり、汗ばんだりしたことはないでしょうか?

これは、指導者に叱責を浴びて、脳が緊張し、指先にその緊張が伝わることで起こります。人は寒気や恐怖感を感じると、同時に腕や手にも緊張が走ります。暗い空間で人気を感じたら、体をびくつかせ、両腕で体を抱えるように動かします。これは、奇妙な感覚を「耳」や「眼」で感知し、脳が「恐怖」「不気味」と認識し、腕や手が動いてしまうからです。

つまり、手の内の無駄な力みを取り去るためには、単に力を抜くだけではなく、あなたがどのような環境で弓を引いているかも大切となります。

当然ですが、指先の皮膚が硬くなれば、弓道は上達しません。指の皮膚が固くなり、脳に過度な緊張がかかった状態では、全身の筋肉を最大限に働かせることができなくなるからです。

弓道の射法訓には、「胸の中筋から離れる」と呼ばれるものがあります。さらに、教本一巻には、遠的の射法の説明が記されています。

なぜ、弓道においては、胸の中筋の筋肉まで活用した離れや遠くに飛ばすことを意識しなければいけないのでしょうか。この理由として、弓の稽古を充実させるためには、最初に関節を最大限に活用して弓を引くことが必要だからです。

皮膚が硬くなるように弓道に取り組むと、脳や腕が過度な緊張に襲われ、弓を最大限に押し開くことができなくなります。あなたがさらに弓が引けるようになり、身体全体の筋肉を活用するためには、自分自身の「皮膚感覚」にも目を向けて、弓を握るようにしてください。

このような理由から、指導者は手の内に関して、あまり細かいことを言わないようにするのが大切です。もし、指導者があれこれ手の内で細かい指示を出すと、受ける側の指の皮膚が硬くなるからです。指導を受ける人に余計な緊張を起こさせないように弓の握り方を教えるようにしましょう。

手の内の指先は柔らかくしなければいけない

古くの弓道書籍を読むと、指先に力を入れない重要性がよく記されています。

教本二巻の高木範士の手の内の説明では、弓を握るときは「軽く握ること」と説明しています。心月射儀の開祖である梅路見鸞氏は「手の中(手の内)は軽く握って握るという意義を解く」とも説明しています。古くの弓道の先生は、握る形より、むしろ無駄な力みを取って握ることを強調しています。

手の内で、何を行わなければいけないのでしょうか?その具体的な方法として、まずは「形にとらわれず、軽く握る」ことだけを意識してください。

最初は、指導者に「三指をそろえなさい」「小指、親指を寄せると良い」「指先近くで握るとよい弦音がなるよ」と説明してくれるかもしれません。しかし、最終的には、自分自身で身体を学び、筋肉や関節に負担のないように弓を押し、引いていく必要があります。人の指の長さや掌の大きさは異なるため、さらに技術を高めるためにはご自身の勉強がどうしても必要です。

決して、「この手の内で弓を引くと弦音がいい」「的によく中る」という考え方にとらわれず、あくまで自分にとって身体になじむ手の内を探してみてください。その前段階として、まずは軽く握るようにし、必要以上の意識や力みをかけず、強く弓を押し開くようにすることが大切です。

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