弓道の世界では「丹田」という言葉があります。
丹田は大事だ!下腹(丹田)を意識して!丹田から呼吸して!
このような指導を受けたことがありませんか?胴造りでは丹田という言葉を用いて説明されます。ただ、この言葉誤解をすごく受けるから気をつけてください。
丹田を意識して、力を入れてというと、腹部の筋肉に力を入れたくなりますよね。でも、そうすると、弓を大きく開くことができず、上達しません。
今回は、その理由を詳細に語っていきます。
簡単に丹田を紹介
丹田=下腹付近
丹田とは臍から約8センチ下、体の奥側に8センチ辺りの奥の部分を指したものです。中国では「仙薬」とも呼ばれ、決してそういう器官が存在するわけではありません。
そして、弓道教本では、「気息を丹田に整える」や「心気を下腹にこめる」などと使われます。
特に、昔の弓道家では阿波研造氏が使っていました。丹田で呼吸をすると、丹田から発する気持ちでなどと言われて来ました。
学校の指導では、先輩に棒を押し当てられて、「ここを意識して」と言われることもあります。
このように使われて来たため、丹田は力を入れるものと解釈されて来ました。しかし、こう考えると弓を楽に引けなくなります。詳しく解説したい場合は、動画をどうぞ。
腹に力を入れると満足に弓を引けない
腹を固くすると滅びます
下腹に力を入れることで起こる体の悪い影響をお伝えします
・腹に力を入れると、上半身が緊張しやすくなる
・腹に力を入れると、背骨が真っ直ぐに伸ばせなくなる
・腹に力を入れると、腕が動かしやすくなる
まず、腹部に力を入れると、呼吸動作がしずらくなります。お腹に力を入れず、柔らかい状態にしておけば、自然と息を吸い、吐く動作ができます。しかし、お腹に意識して力を入れると自然に呼吸を行えなくなるため、「力」が入ってしまいます。呼吸動作の平静さが失われ、体が緊張しやすくなります。
次に、腹部に力を入れると、みぞおち部と胸部の筋肉も前方に引っ張られているため、上半身の上部が丸まって軽い猫背状態になります。さらに、お腹に力を入れると、背中も連動して力が入ります。背中の筋肉が硬くなると、股関節・肩周りの筋肉が柔軟に動かしにくくなるために、腕が動かしにくくなります。
つまり、丹田に力を入れると、かえって弓を引けなくなります。逆ですよね。腹に力を入れてしまってはいけません。
現代弓道は、筋肉の働かせ方を間違っている
欧米でいう「〜〜を意識する」と、日本でいう「〜〜を意識する」は意味が違う
このように、「意識する」=「力を入れる」という考え方が、間違った身体の使い方を行なってしまう元になっています。
「力を入れる」「意識する」という言葉の共通している意味は「自発的にその行為を行なっている」ことです。「筋肉に力を入れる」とは、「自分の意識で筋肉に力を入れる」ことを行います。しかし、日本や中国などの東洋人は「筋肉に力を入れる」と違う意味で活用しています。
それは、「気」が流れることによって、筋肉が動くと解釈します。「自分の意識」ではないです。
よく日本人って「気」という言葉を使いますよね。「〜〜の気がする」「気がつく」「気になる」とか、曖昧でもやっとした表現ありますよね。これは、日本人は人の気持ちは自発的に起こるのではなく、外部の環境によって自然に引き起こされるものと考えられるからです。
心の働きと言っても、心は自分ではなく外部からの影響で動くものです。寒い環境にくるので「寒い」という感情になります。つまらないギャグを言われたから「寒い」という感情になります。自分で何もキッカケなしに寒い感情がでる訳ではなく外部からの影響で心や精神が養われると考えています。
日本人などの中国、アジア人は、人の気持ちも自然の影響から出ていると考えます。人の感情も体も全て自然界にある気がエネルギーとして働き、体を作り、心を作ると考えます。そのため、宇宙という言葉が出てきます。宇宙からのエネルギーのうち、陽のエネルギー、陰のエネルギーに別れて、世の中の生き物や生体、そして「意識」までも作られていると考えるのです。
この「丹田」という言葉は中国以来の言葉です。つまり、丹田に力を入れるという言葉、正確には「その部位を意識して力を入れる」ではなく、「自然とそこが働くようにする」と解釈します。
欧米は自分から意識することを「意識する」と解釈、日本人は自然と力が働くことで「意識する」と解釈。と覚えると良いですね♪。
丹田は力を入れるではなく、自然と働かせるようにする
無理しない方が話がうまくいく
すると、丹田周りの筋肉や周りを考えると、わかりにくかった話が通るようになります。
・腹に酸素を多く取り込むと、全身へ酸素を取り込む量が増える
・腹に酸素を多く取り込むことで、食べ物を消化・分解するための微生物の働きが活発する
・腹は人の体の20パーセント以上の血液が循環している
こうした腹があります。これを「意識して力を入れる」ではなく、「腹部の力を抜いておく」と解釈して見ましょう。こう考えると、「力を入れない方が、腹部の働きがより活性化される」と思えてきませんか?
まず、腹の筋肉に力を入れると、横隔膜の動きが制限されます。これを腹の筋肉を緩めて置いたとします。すると、呼吸動作は生きていく上で自然と行われるものであるため、ほおって置くと、行われます。であるなら、筋肉を緩めて置いて方が、柔軟に働き、結果的に息を取り込む量が増えます。
次に、酸素を取り込むことで、微生物の働きが活性化されるという話。これも腹に力を入れない方がいいですよね。腹に力を入れて、筋肉が硬くなってしまうと、血管が圧迫され、微生物に流れる栄養や酸素が減るからです。つまり、余計な力を入れない方が、微生物に流れる酸素が多く取り込まれると解釈できます。
腹は20パーセントの血液が循環しているという情報。これも循環させたいのであれば血管は圧迫させない方がよく、腹の筋肉を緩めておくのが大切と考えられます。
このため、丹田を現代風に「力を入れる」「意識する」と解釈すると、むしろ意味がないとわかります。何もやらない方が結果的に血液循環、酸素の取り込み量、内部の生物の働きが活性化されると説明がつきます。
腹には精神が宿ると言う言葉もシンプルにわかるようになる
腹の力を抜いたら、心が安定すると解釈する
さらに、弓道の世界では「腹には精神が宿る」「腹には魂と宿る」と言われます。これについても説明がつきます。
丹田を指す空間は、臓器でいう「腸」が存在し、腸内で合成される神経伝達物質の一部に「セロトニン」と呼ばれる物質があります。これは、脳内に運ばれ、気持ちの安静させる効果があります。
ざっくり言うとセロトニンが継続的に作られれば、気持ちが安心します。であれば、丹田に酸素や血液を継続的に送りこむことで、気持ちを平静に保つことができます。一方、セロトニンを脳に継続的に供給されなければ、感情の浮き沈みや不快感や不安感が発生します。
であれば、腹に力を入れることで、感情が吹き沈みが起こるとも解釈ができます。
日本人式、「丹田に力に入れる」とは
力を入れるのではなく、結果的に丹田に力が入るようにする
こうした事実から、丹田に力を入れない方が、姿勢がよくなり、弓を引きやすくなります。そのため、丹田は力を入れるのではなく、自然と丹田に力が入るようにすると解釈します。
具体的には、上半身全体の力を抜いて、首の後ろを上方に伸ばしてください。すると、上半身の体重が自然と腹周りに乗りませんか?これが、「自然に丹田を意識した」立ち方です。
これは、物理的にはこのように説明できます。
イ、上半身に力を抜く
ロ、背中と首を上方に伸ばす
ハ、背中と首を上方に伸ばすことで、地球上の重力と相殺される
二、頭蓋骨、首、胸部などの骨が下腹部に素直に乗る
そのため、自然と丹田に体重が乗っていると解釈できます。
首の後ろと背中を伸ばさなければ意味がなくなる
実は、上記のことがわかると、「上半身の筋肉を緩めただけ」では意味がないとわかります。なぜなら、
イ、上半身の力が抜く
ロ、首と背中を上方に伸ばさないようにする
ハ、重力によって首の後ろか背中の骨が前方にずれてしまうため、その周辺の筋肉が圧迫されてしまう
二、結果的に筋肉に力を入れている状態と変わらなくなる
つまり、上半身の筋肉を緩めた結果、背骨が曲がってしまうと、筋肉が張ってしまいます。つまり、筋肉が緩んだ状態はただ抜いただけではなく、その状態を持続させる必要があります。そのためには、
丹田の力を抜いて、背骨を伸ばすことで、丹田に酸素が届き、自然と意識がいく姿勢を構築できます。その結果、上半身の無駄な力みがなくなり、気持ちが静まって弓を楽に引くための準備が整います。
今、丹田の力を抜くのが大切とお話しましたが、これだけではなく「背骨」の筋肉を伸ばすことで、「丹田が意識された姿勢」を維持できます。「教本の胴づくりの本質的な意味」を理解することで、射における適切な姿勢は完成します。