打ち起こしで脇下の筋肉を活用すれば、技術、的中率が確実に上がる

弓道を稽古していて、「なかなか的中しない」「打ち起こし動作は次の引き分け動作にかかわるため、重要な意味を持っています。そのため、合理的にかつ根拠をもって弓の打ち上げ方を勉強する必要があります。

そこで大切となるのが「神永範士」の打ち起こしです。教本二巻の神永範士は打ち起こしの際に、「脇下の筋肉」を活用するように、文章を解説しています。この脇下の筋肉を活用できれば、引き分け動作で弓が引きやすくなり、結果として的中率が向上します。そのため、意識的に取り入れるようにしてください。

ただ、そうはいっても、教本二巻の内容を見ても文章が難しくて頭に入らないと思います。そこで、神永範士の打ち起こしを分析し、適した打ち起こしの状態とその意味について解説していきます。

楽に大きく弓を引ける打ち起こしのカギは「脇下の筋肉」にある

まず、大きく弓を引いて、結果的に的中率が伸びる打ち起こしは「脇下の筋肉」が活用されます。この状態を、神永範士は「肘下と脇下との角度を広げるように」と表現しております。

肘下と、脇腹との角度を広げるように「打ち起こし」をすれば、ヒカガミをが伸びて足裏にそれが響きこたえ、下半身が生きてくる。~神永範士~
 

この打ち起こしのように、肘下と脇下の角度を広げるように意識します。感覚がわからない場合は、打ち起こしで額より高く拳を上げてください。そこから、両肘を真上に上げるように意識すると、結果として肘下と脇下の角度が広がるように打ち起こしが行えます。

打ち起こしでは、脇下の筋肉を活用するべき理由

では、なぜ神永範士の「肘下と脇下の角度を広げるような打ち起こし」を行った方が良射に近づきやすいのでしょうか?この理由をもう少し詳しくまとめてみます。

脇下の筋肉を活用すると、弓を強い力で押せる
前鋸筋は、脇周りについており、張ることで腕の裏側の筋肉(上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん))が連動して働きます。上腕三頭筋は、腕を伸ばす際に働く筋肉であり、引き分けで弓を押す際に働く筋肉です。

この上腕三頭筋を活用することで、引き分け動作をより楽な気持ちをもって弓を押すことができます。

脇下の筋肉によって、両肩が下がる
次に、脇下の筋肉を活用することで、両肩が下がったまま、打ち起こし動作が行えます。

脇下の筋肉と拮抗して働く(一方の筋肉が縮むと、もう一方の筋肉がゆるむ関係)筋肉が、肩の上部にある僧帽筋(そうぼうきん)です。僧帽筋がゆるむと、腕を上げたときに両肩関節が浮き上がりにくくなります。すると、次の引き分け動作で、肩や腕に余計な力みが発生しにくくなります。

このように、脇下の筋肉を活用すると、「より楽に弓を押せるようになり」「両肩関節が下がった」打ち起こしを行えるようになります。

脇下の筋肉を活用して打ち起こしを行うには?

では、神永範士の打ち起こし動作のように、脇下の筋肉を活用するためには、どうすればよいでしょうか。以下のように実践します。

イ、まず、両腕を力ませたり、拳に力を入れない、手首を必要以上にひねらないようにする

ロ、弓を上がるだけ高く上げるようにする(重要)

ハ、軽く肘を曲げておくようにする

このように打ち起こしをしてみてください。すると、脇下の筋肉を活用して弓を引くことができます。

できるだけ高く上げるようにする

まず、脇下の筋肉を活用するためには、できるだけ拳を高く上げるようにします。腕を高く上げることで、肩甲骨周りの筋肉が上方に伸ばされ、脇下周りの筋肉が張られるからです。最初は少し肩関節が浮き上がっても気にせず、高く上げるようにしてください。

できるだけ高く上げるようにし、体全体が足の裏に向かって一本棒になって、地中へ沈んでいく気持ちが出るようにすることが大切である~高木範士~

若いうちはやや高く、気息をはかり、弓手は徐々に弓を押し開きつつ ~高塚範士~

ただ高く弓を上げようとすると、腕、肩関節に力が入る危険があります。そこで、肩関節に力が入らないように打ち起こしするために、「矢先が上がらないようにする」「弓を上げる際に、軽く伏せるようにする」ようにしてください。

通常、弓構え動作で右手は左手より上の位置で設置します。そのため、弓構えで保って腕関節の状態をそのまま打ち起こしすれば、右手と左手の位置は同じ高さ、もしくは左こぶしの方がやや下がるはずです。

そのため、矢は水平の状態よりやや下に下がっているのが自然です。しかし、腕に力が入っていたり、弓を堅く握りすぎていると、左こぶしが右こぶしが高くなり、弓が右傾することがあります。そのため、弓を打ち起こすときは、「矢先は少しだけ下がるように」意識してください。

打ち起こすとき、左右の両拳は平らであるべきだが、矢はほぼ水平で、むしろ矢先がやや下がる程度が良く、弓全体が左にも右にも片らぬように身体の真全に打ち起こす~高木範士~

左右の両拳、両腕は丁度両鏡相対して雑影のない合わせ鏡の気持ちである~神永範士

次に、弓を打ち起こすときは、弓はなるべく照らないようにします。できれば、最初は意識的に伏せるようにしてください。弓が照ってしまうと、人差し指と親指の間に弓が当たりすぎてしまい、左拳に力が入ってしまいます。すると、左肩関節が上がってしまいます。

これを防ぐために、弓が照らないように気をつけてください。

両腕が力んでいる場合、脇下の筋肉は活用されない

楽に弓を打ち起こすためには、両腕の力みを取らなければいけません。両腕が力むと腕だけではなく、肩甲骨周りの筋肉も縮み、脇下の筋肉も緊張してしまうからです。

はじめの弓構えの段階で、脇下の筋肉が硬くなってしまったら、次の引き分け動作で活用できません。できるだけ、両腕の力みをとって、脇下の筋肉が引かれるようにしてください。

試しに以下のような実験をします。まず、両腕の力を抜いて、上方向にすくいあげるように上げてください。すると、脇下の筋肉が伸ばされる感覚があります。次に、両こぶしを握って両腕の筋肉を力ませて、腕を高く上げてください。すると、腕に意識や気持ちが集中しますが、脇下の筋肉が伸ばされる感覚がありません。

このように、両こぶし、両腕の筋肉を力ませてしまうと、「脇下の筋肉が伸ばされる感覚」がなくなるのがわかります。したがって、弓構えの段階で両腕の力みを取るように意識しましょう。

(もし、弓構えで両腕に力みが出てしまう場合は、「両腕に力が入らない弓構え」について学ぶようにしてください)

軽く肘を曲げておけば、両肩関節が浮き上がりにくくなる

次に、弓を高く上げる際は、「少しだけ肘を曲げておく」ことを意識してください。このようにすることで、高く弓を打ち起こしても、両肩関節が上がりにくくなります。

軽く肘を曲げた状態が、最も前鋸筋が働くからです。解剖学的に、肘関節が5~10度程度曲がった状態は、前鋸筋が働きます。腕が完全に伸びきってしまうと、前鋸筋が働きにくくなり、腕周りや肩の筋肉が働きます。つまり、「ほんの少し肘を軽く曲げたまま打ち起こしする」と、脇下の筋肉が常に働いたまま打ち起こしすることができます。

両肩や肩に障りのない程度に、両腕に幾分の丸味を含んで軽く伸ばしながら、頭上の線まで上げるのである~松井範士~

弓道を稽古されている方の場合、「高く打ち起こしすると、肩関節が上がって上半身が力んでしまうのでは?」と思われる方もいます。実際に、高く打ち起こしして、肩が緊張してしまうのを嫌い、低い打ち起こしで弓を引いている人もいます。ただ、「軽く肘を曲げておく」ようにすれば、その問題は解決されます。

ポイント
☆打ち起こしでは、両腕や拳に力を入れないようにする
☆弓を上がるだけ上げる
☆軽く肘を曲げるようにしておく

うまく打ち起こし動作ができると、結果的に体を上下方向に伸びる

このように、脇下の筋肉を活用すると、「腕は上方に上がっているのだけど、両肩関節が下がった打ち起こし」が実現されます。つまり、、体の重心が変わらずに、腕を高く上げることができます。

解剖学的に、人の腕は3~4kgの重さがあります。弓構えのときは、両腕は体の前にあり、打ち起こしをすると、両腕は体により近くなります。このように、腕が体に近づくことによって、足裏全体にかかる重さが増えます。そのため、腕は高く上げると、足裏には体重がより乗った感覚を得られます。

この状態を、他の範士の皆さまは「弓は上方に上がり、身体は地に沈むように」と表現されています。

拳先だけが上がり、肩根が下がるようにし、体は地(床)を埋めるが如く、首頭は天に伸びるように心懸ける。 ~千葉範士~

弓の末弭(うらはず)は天を突くよう、体は真っすぐに地の中へ沈んで行くような気持ちが味わえるように心懸けることが大切である。 ~高木範士~

打ち起こしの気構えは、打ち起こすときは弓で天を破るが如く、同時に体は総体地面に沈むが如き心持にて行うべきである(天突く地突くの伝と言う) ~富田範士~

よく、腕を高く上げてしまった場合、腕以外に肩周りの筋肉も上方に伸ばされます。例えば、座っているときにあくびをすると、腕を上に伸ばしたときに、「肩」や「肋骨」も上方に引き上げられます。このようになると、両肩関節が上に浮き上がると、下半身に乗っている重みが軽くなってしまい、姿勢が崩れてしまいます。

つまり、打ち起こしで弓を上方に上げても、体の重心は上方に引きあがらないようにするのが大切です。それは、脇下の筋肉を活用することによって実現されます。

打ち起こしでは、落ち着いて呼吸できるようにする

さらに、脇下の筋肉を活用すれば、打ち起こし中に呼吸動作に妨げがなくなります。うまく打ち起こしを行えば、「吸う・吐く」の両方の動作がしやすい状態になります。

教本では、打ち起こしにおける呼吸は、弓を上げているときに「吸う」ように説明されます。

「弓構え」で息を吐いて空にして響き、打ち起こししつつ軽くすい、上がりきって弓が止まるのといっしょに息を止める。息を止めたままで三分の二引き~浦上範士~

ただ、このことより大切なことは、呼吸動作は無理なく行える姿勢を構築しておくことです。もし、打ち起こしの際に、息を吸って息苦しい感覚を得たなら、次の引き分けで体の力みとなってしまうからです。息苦しい感覚によって筋肉が力み、感情にも揺れが出てしまい、結果として射に悪い影響が出てきます。

そのため、打ち起こしをする前に、今一度姿勢を確認しましょう。首の後ろを伸ばし、両肩を下げて、ややすくいあげるように打ち起こししましょう。これによって、息苦しい感覚なく、弓を打ち起こせます。

打ち起こしの際、気息は十分に整える。~千葉範士~

息合いは普通平静を可とする~宇野範士~

特別に強く吸引すると、助間筋や横隔膜などの呼吸補助筋が働きすぎて凝りを生じ、射の動作の円滑を欠いたり、息が詰まったり、また力むことになる。~高木範士~

打ち起こし」のときは普通よりやや余分に吸引されているから、この自然に吸入された状態で、胸腔内の圧力は全身の緊張と同調することができるのである。~高木範士~

優先順位は「息苦しくなく、弓を打ち起こせるか」です。姿勢を正し、楽な気持ちでのびのっびと弓を打ち起こしできるようにしましょう。それによって、自然と「落ち着いた呼吸の状態」で次の動作へ移ることができます。

 

うまく打ち起こすと、背筋が伸ばされる

腕を上方に上げたときに、「胸が張る」「肩に力が入る」「腕が力む」といった問題が出てしまうことがあります。そこで、適切に打ち起こしできたかどうかは、「背中の筋肉」で確認できます。

脇下の筋肉の下には、「広背筋(こうはいきん)」「腰方形筋(ようほうけいきん)」といった背中周りの深層筋があります。もし、腕に余計な力みなく、姿勢も崩さないまま弓を高く上げると、これらの筋肉が引っ張れる感覚があります。

もし、弓構えで、腕の筋肉が力んでいる場合、あるいは立った姿勢で腰が反っていたり、胸の筋肉が張っていたりすると、これらの筋肉は伸び縮みしなくなります。腕や肩の筋肉が縮むと、胴体の筋肉も連動して緊張してしまうからです。

そのため、打ち起こし動作では、「下腹に意識的に力みをかけないようにする」「足裏の重心は全体に乗るようにする」「項を軽く引いて背骨から頸筋まで真っすぐに伸ばす」などを意識してください。姿勢を正し、筋肉の緊張をなくすことで、腕や肩に負担のかからない打ち起こしを行えます。

「打ち起こし」の際、胴づくりが前に述べた理想の体型であれば、両腕の後ろ下側の筋、背部の筋、腰の裏側の筋、脚部の後ろ側の筋が幾分引っ張られる気味に感じる
 
この感じが「打ち起こし」以後の行射の動作(引き分け、会、離れ)をリードするので、地紙の位置のエネルギーと呼応相性して理想的なものになるのである。~高木範士~

つまり、正しく打ち起こしができているかは、「背中の筋肉が伸ばされているか」でします。

高く打ち起こしができない場合の対策:平たいA型を実践する

これまでの話で、打ち起こしでは上がるだけ上げる重要性について解説しました。しかし、この記事を見ている人の中には、「打ち起こしで高く腕が上げられない」人も中にはいると思います。年齢を重ねて、背骨が曲がっている人の場合、肩甲骨の可動域(動く幅)が狭くなるため、腕が高く上がりにくくなってしまいます。

そのような場合、教本二巻の神永範士の打ち起こしの形を取り入れることで、問題が解消されます。それは、「縦のA型」ではなく、「平たいA型」の形になるように打ち起こしを取ることです。

まず、神永範士の「平たいA型、縦のA型の説明」について、引用していきます。

両肩が浮いて体が反らないように前ぱくをなるべく高くする。~神永範士~

前ぱくをなるべく高くして打ち起こしをすると、前から見ると両拳のなす角度平たいA型になります。反対に前ぱくが張られていないと縦のA型になります。

つまり、打ち起こしの際に、両こぶしを高く上げすぎず、脇を開けて両腕外側を張るようにします。このようにすると、打ち起こしが低くても、脇下の筋肉が張ります。したがって、次の引き分け動作で脇下の筋肉を活用がしやすくなり、引きやすくなります。

「平たいA型」の打ち起こしは、前膊の位置自体が高く上がるからです。前膊の位置が高くしようとすると、拳の位置が変わらなくても、肩甲骨周りの筋肉が外側に張り出されるように働きます。したがって、打ち起こしにおける拳の位置が低くても、脇下の筋肉を活用できます。

先ほどお話しした「上がるだけ上げる」打ち起こしと「平らなA型」の打ち起こしは、一見異なる打ち起こしをしているように思います。しかし、体の仕組みから考えると、脇下の筋肉を両方活用でき、引き分け動作で強く弓を押すために必要な筋肉を働かせられます。

ただ、「平らなA型」の打ち起こしは、気をつけなければいけないことがあります。それは、引き分けの押す意識を変えなければ、右ひじを右肩より後方に収めることができず、引き分け自体が小さくなってしまうからです。

高く弓を打ち起こした場合、引き分けで右こぶしは半円を描くように動きます。しかし、「平たいA型」の打ち起こしの場合、右こぶしの位置が低いため、半円の軌道を通りません。平らなA型の打ち起こしの場合、半円ではなく「反橋」のような軌道を描いて通ります。

つまり、引き分けにおける力のかけ方が違うのです。打ち起こし以降、右こぶしの動かし方は、「真横」に意識して押すようにします(言葉だけでは、真横の意味や具体的な意識が記述しきれないため、細かい説明は割愛します)。すると、平らなA型であっても、引き分けを大きくすることができます。

打ち起こしで前膊を高くする場合、引き分けでの右こぶしの動かし方も変えるようにしてください。打ち起こしの形態が変わっても、引き分け動作にうまくつなげることができます。

まとめ

以上の内容をまとめます

・脇下の筋肉を使って打ち起こしするようにする

・脇下の筋肉を活用すると、肩が上がりにくくなる

・脇下の筋肉を活用するためには、「上がるだけ上げるようにする」「打ち起こしでは、両腕や拳に力を入れないようにする」「軽く肘を曲げるようにしておく」

・打ち起こしでは、「矢先は上がらないように意識する」「弓は照らないようにする」ことを注意する

・脇下を使って打ち起こしできるようになれば、「足裏の重心がより乗った感覚になる」「呼吸が息苦しくなくなる」「背中の筋肉が伸ばされる」といった感覚を得られる

・どうしても、肩関節が上がらない場合は、「平らなA型」の打ち起こしを実践してみる

ただ、弓を上方の上げただけでは腕や肩に負担のかかる打ち起こしになってしまいます。脇下の筋肉を活用し、肘下との角度を広げるように弓を上げるようにしましょう。それによって、次の引き分けにつながるキレイな打ち起こしになります。

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