打ち起こしを行う意味が分かれば、適した打ち起こしの角度がわかる

打ち起こしは弓を上に上げる動作です。弓を打ち起こし、高く腕を上げた際の右ひじの位置、両こぶしの位置は、腕に負担なく弓を引くために大切な要素です。また、次の引き分け動作に向けて、打ち起こしではできるだけ腕、肩の力みを取っておく必要があります。
このように、打ち起こし動作は非常に大切な動作であるため、本で勉強しておく必要があります。しかし、教本を見ても、打ち起こし動作では何を意識すればよいか詳しい説明がなされていません。そのため、多くの人が打ち起こしをどのように行えばよいかがわかりません。

・打ち起こしは45度に上げる

・両肩の線がそろうように意識する

・弓は「煙が立ち上るよう」に意識して持ち上げる

このような内容で打ち起こしを指導をされます。しかし、このように打ち起こしをしても、両肩の線をそろえても、射癖が治らないどころか、的中もしません。すると、「一体どうすればいいの?」と思いたくなりますよね。

ただ、そのような問題は、「打ち起こしの大切さ」を理解すれば解消されます。そのためには、教本の内容を正確に読む必要があります。長く弓道を続けていくために、打ち起こし動作で行わなければいけないことを理解するようにしましょう。

打ち起こしを行う意義は

自分の身体にあった打ち起こし動作を行うためには、次のことを意識するようにしてください。

イ、なぜ、打ち起こしが大切であるのかの理由を明確にする

ロ、そのために、何をしなければいけないのかを整理する

ハ、適した打ち起こしのために、してはいけないことを理解する

イ~ハの内容を理解することで、あなたに必要な打ち起こしの状態を理解できます。

まず、打ち起こしのことを説明するために、「なぜ打ち起こしは大切なのか?」「打ち起こしをする意味はなぜあるか?」ということを整理していきましょう。

打ち起こしが大切である理由は?

よく、打ち起こしを行う理由を聞くと、このような回答がかえってきます。

・両こぶしを左右対称にそろえて、左右対称に引くため

・背筋が真っすぐに伸ばすため

このような理由を聞くと、どれも最もらしく思います。しかし、残念ながら、「左右対称に押し開くため」「背筋を伸ばす」ために、打ち起こしをするわけではありません。

このように「こぶしを左右対称にそろえる」「背筋を伸ばす」ことは、弓を大きく引くこととは別問題です。本当に、上記の内容で打ち起こしする目的が達成されるのであれば、弓を一度高く上げる必要はありません。

それでは、なぜ打ち起こしを行うのでしょうか?その答えはシンプルで「次の引き分け動作をしやすくするため」です。腕に負担をかけず、また余計なことを考えずに弓を引くために、打ち起こしをします。

では、弓を引き分けやすくするために、打ち起こしは何が難しいかご存知でしょうか?これは左拳の位置であり、弓を上げたときの左手の力加減です。この位置と力加減を適切な状態に収めて、次の大三動作に移りやすくするのが、打ち起こしを行う意味であり、勉強しなければいけない内容です。

例えば、斜面、正面打ち起こしをすると、斜面打ち起こしの方が弓手がいれやすいのがわかります。

まず、正面に弓を上げて「正面打ち起こし」をしてください。ください。その次に腕を高く上げた状態で弓手を弓把の中に入れてください。次に、弓構えの状態を作り、そこから弓手を弓把入れてください。すると、斜面打ち起こしの方が、弓手が入れやすいのが体感できます。

なぜなら、斜面打ち起こしは、腕を下げた状態で弓手を入れるからです。人は、腕を下げている状態は、肩や腕に力みが入りにくいため、手首や拳を入れやすいです。弓手をきちんと入れることができれば、次の引き分け動作で拳に力みなく、弓を引くことができます。

しかし、正面打ち起こしになるとこのようにうまく話しが進みません。腕を高く上げて、そこから弓手を弓把を入れようとすると、「弓を握ってしまう」「左手首を外側に曲げすぎる」「左腕を内側にひねってしまい、筋肉に力みが出る」などの問題が起こります。高く腕を上げた後に左こぶしを的方向に移そうとすると、不用意に拳や腕に力が入ってしまいます。

しかし、正面打ち起こしは、斜面打ち起こしと弓手の入れるタイミングが異なるだけで、同じ打ち起こしです。そのため、「打ち起こしの上げ方」「弓を上げたときの肘の角度」などを自分で変えて、「弓手を弓把に入れやすい状況」を考える必要があります。

このように、「弓手を入れやすくし、次の引き分け動作につなげやすくすること」が打ち起こしを行う意義です。

したがって、私たちが打ち起こしを考える際に、第一に「スムーズに、余計な力みなく、左拳を左斜め上にもっていく」ことを考えなければいけません。そのために、弓手、腕の力みがとったり、上げる角度を変える必要がでてきます。

教本の言葉通りに行えば、適した打ち起こしができているとは限らない

以上の内容を聞くことで、打ち起こしを行う目的が明らかになります。このことを基準に考えると、以下の教えが必ずしも適した打ち起こしにならない危険があります。

本当に、肘の角度は45度で問題ないか

教本一巻では、打ち起こしでは「肘の角度を45度にする」と教えられます。教本一巻には、なぜ打ち起こしが45度であるかの説明は記載されておらず、45度とだけ記載されます。

(打ち起こしが45度という記載が初めて弓道の書籍に載ったのは、本多流弓術書の範士錬士講習会の話し合いの中で出たのが一番最初」と考えています。それより前の弓道の本で45度と記載されたものは見たことがありません。これよりも古くの書籍がある場合、ご回答をお待ちしております。))

ただ、このような理屈があったとしても、打ち起こしを45度にすればよいわけではありません。肘の角度を45度にしたからといって弓手が入れやすくなるわけではないからです。実際に、多くの弓道関係者は打ち起こしでの腕の角度を45度にしても、次の大三動作で弓手に力が入っています。

左右対称にそろえずに打ち起こす場合も存在する

次に、正面打ち起こしをする意義として、「左右対称に筋肉を使うため」と説明することがあります。しかし、人によっては必ずしも左右対称にしないほうが良い場合があります。

例えば、左腕の筋力が弱い人です。左腕が細く、次の引き分け動作で弓手の押す力が弱く、「左こぶしを握ってしまう」「左肩が上がる」という問題が起こったとします。このような問題は、「大三で余計な力みなく弓手が弓把に入れば解消できる」可能性を持っています。その場合、打ち起こしの仕方を変える必要があります。

具体的には、打ち起こしする際に、少しだけ左こぶしを的方向に移します。つまり、体の正面で打ち起こしをするのではなく、身体の正面からやや左に傾けて、打ち起こしをします。これによって、弓手が入れやすくなって大三動作に行こうしやすくなります。

実際に、教本三巻には、打ち起こしにおける角度や状態は各人の骨格や特性によって、変更する必要があることを説明した一文があります。

打ち起こしの場所というのは、そこから引き廻して、同時に会に入るに都合の良い点であらねばならない。ゆえに、体質的に左手が弱い人は、左を助けるために左よりであってもよいはずだ、何れにしても左斜め上が便宜適法の場所たることに間違いない。すなわち、左横打ち起こしの人の場所がそれである ~祝部範士 (教本三巻 打ち起こしより)~

さらに、宇野範士は、打ち起こしには、「紀州竹林の斜面打ち起こし」を説明し、「弓を打ち起こししながら、弓手を入れる」打ち起こしも存在します。

紀州竹林派では弦を正中し引き分けながら左斜めに打ち起こす。このとき、左手はゆるやかに押し伸ばし、右手は上膊に力を持たせて、額の高さまで静かに打ち揚げる ~宇野範士~

そのため、打ち起こしは「左右対称に」「45度の角度で上げる」打ち起こし以外に、様々なものがありました。少し、左よりに打ち起こしたり、上方に上げながら左斜めに弓手を入れる打ち起こしもありました。さらに、書によっては、弓をあえて照らして打ち起こしするように説明されたものもあります。

打ち起こしには、適した形が存在しない理由

このように、打ち起こしは多様である理由は「人それぞれ、弓手の入れやすい打ち起こしにおける両腕の角度、状態が異なるから」です。

ある人は、弓を自分と正対させて打ち起こしした方が、次の大三動作につなげやすいと思うでしょう。また、ある人は打ち起こししながら弓手がいれやすいと思う人もいます。さらに、違う文献では、年齢を重ねると、弓手肩を入れるように工夫するために、弓を照らして打ち起こしした方が良いと

このように、次の引き分け動作につなげやすい打ち起こしは「合理的に正しい」から、そのような打ち起こしがあったわけではありません。「その打ち起こしがしやすいと本人が思った」からあるのです。経験や年齢を重ねると、各人の身体の使い方、使いやすいと感じやすい体の動かし方が変わります。そして、年齢を重ねると、その感覚や身体の使い方は変わっていき、適した形が変化していきます。

これは、経験年数の異なる人を多く指導するとわかってくることです。打ち起こしにおいて、あくまで「45度」「左右対称」という概念は後からついてくるものであり、いきなりその動作や型を人に教えると、その動作自体を行うことにいっぱいいっぱいになり、腕が力んでしまうのです。

そこで、ある程度慣れてくるまでは、「できるだけ形にこだわりすぎないように弓を上げさせる」ようにします。すると、人によって、「左手が的方向に流れる人」「両こぶしが外側に流れる人」など、様々な人がいます。しかし、何も特徴を言わずに本人にやりたいようにやらせると、その人にとって、最もやりやすいと感じる弓の打ち上げ方を選択します。

本当に、合理的に適した打ち起こしが存在するならば、古くの文献を見て見解が分かれることはありません。しかし、打ち起こしは年齢や経験年数によって、適した形は変わるのです。あまりに左右対称にそろえることだけを行って、「自分は正しい打ち起こし動作を行っている」と思いすぎないようにしましょう。

できれは、「45度」「左右対称」以外に、様々な文献を調査して、どの打ち起こしがどのように適しているのかまで、勉強されるのがお得です。

打ち起こしは、古い文献を見る以上最も奥が深い動作です。左右対称だからといって正解や適切に動作が行えていると思いすぎないようにしましょう。

抽象的な言葉は気にしないようにする

次に、打ち起こし動作を行う際は、余計なことをあまり考えないようにしましょう。理由は、打ち起こしは弓を引き分けるための準備動作であり、次の引き分け動作を円滑に行うために大切な時期に来ているからです。

したがって、引き分け動作を円滑に行うためには、「肘の角度」「拳の位置」「押す方向」などを合理的に学ばないといけません。打ち起こしの際に、動いている拳、弓の状態などは、次の引き分け動作に関わる重要な内容です。拳をどのような位置に動かせば、次の大三動作に移りやすいか、引きやすくなるのか、合理的に考えていくことで「体に負担のない打ち起こし」を実践できるようになります。

そのため、抽象的、精神的な内容をいくら学んでも、次の引き分けに生きる打ち起こしはできないと思ってください。打ち起こしの文章の内容には「煙が立ち上るように」「円相を十飛んで、柔らかみを持たせる」といった表現がされています。しかし、このような気分になったとしても、次の引き分け動作に良い方向につながるわけではありません。そのため、あまりこだわらないようにしましょう。

例えば、

「正面打ち起こし」をするには、両こぶしは彼岸(米国)で我が体は日本で、その中に太平洋があり、海の彼方から太陽が静かに何時とはなしに昇るように打ち起こすのである。 ~千葉範士~

このような表現があります。しかし、決して頭の中で「体が日本で太陽が昇るように……」「煙が立ち上るように……」といった情景を頭に浮かべて、弓を上げるようにしないでください。そのようなイメージをしたところで、良い射ができる根拠は存在しません。そのようなイメージによって落ち着いた状態になるわけではありません。

これから弓を引くことを行うために、できるだけ「弓を引くこと」に集中しましょう。そのために、頭の中に妄想を抱くのではなく、「弓を上げる」ことに集中してください。

以上解説した通りのことをまとめると、

・打ち起こしで「45度」「左右対称に」といった決まり事が言われているが、そのような教えにとらわれすぎないようにする

・それより、体に余計な力みもなく、余計なことを考えずに弓を上げるようにする

このようなことを意識して動作してみるようにしてください。打ち起こしの最中に、余計な迷いが少なくなれば、それだけで体の力みはとれて、打ち起こし動作がしやすくなります。

さらに、迷いや不安感を少なくできれば、次に「神永範士の打ち起こし」を実践するようにしてください。神永範士の打ち起こし動作を取得すれば、さらに弓は引き分けしやすくなり、射の技術は高くなっていきます。

 

メルマガ登録

 

ここまでの記事を読んで、「さらに深く弓道を学び、上達したい」と思う方もいるかもしれません。その場合、以下の「メルマガ」登録を済ませて、「合理的に弓を引くために必要な情報」を受け取りましょう(600ページ以上の非公開テキスト、 10時間以上の動画もプレゼントします)。

 

稽古会案内

スポンサードリンク