範士の言葉より、前後左右にぶれない物見の方法を考える

取り懸け、手の内が終わったら、次に物見を定めます。物見を定めるとは動作では顔を的方向に向ける動作です。的を見定める際に、きちんと頭部を前後左右に傾けないように整ないといけません。

しかし、実際の動作では、顔が前や後ろに傾き、これらの欠点をなくすのが難しいです。そこで、教本二、三巻に見ると、物見の重要性はよく記されています。

ただ、具体的に、「では、どうすれば物見がきちんと定まるのか?」」については詳しく解説されていません。そこで、今回は、射における物見で注意すべき点を整理し、具体的に行うことについて解説していきます。

物見で心がける3つのポイント

まず、物見では、「あご」「半眼」「心と姿勢の状態確認」の三つに注意して、行ってください。

最初に「あご」に気を付けます。あごは胴づくりでも解説した通り「軽くあごを引いて首の後ろを伸ばす」ようにします。顎は的方向に浮きすぎたり、うつむきすぎたりしないように、少し引く気持ちでうつむきましょう。このとき、ただ顎を引くのではなく、首の後ろの筋肉を伸ばしながら、静に引くようにすると上半身をまっすぐに保ちながら顔を向けることができます。

これによって的に対して首が屈みすぎたり、反対に反ったりするのを防ぎます。

頭が的の方へ屈まぬよう、反対にアゴを突き出して仰向かないよう、体の前方に傾かないよう、後方に反らぬよう、正しくおさまることが肝要である。~高木範士~

次に、「半眼」を意識します。的を見るときは、なるべく眼に力を入れないような気持ちで眼を半分だけ開けて、的を見ます。眼を半分だけ開けていると、眼に必要以上の力が入りません。ボンヤリ的を見る気持ちです。眼に力が入りすぎると首筋の緊張につながり、頭部のずれに影響を与える可能性があります。物見を的を見ることよりもしっかりと首を的方向に向けることに集中できます。

眼でものを見るという気持ちでなく、顔の向いた方向に眼を置く感じで、的は心眼で見るのであって、すでに三味の境に入り、無表情となり、その境涯がよくなるのである。~神永範士~

眼づかいは目を開いて睨むように的を見るのではない。的を見ると当て気が出て、おそれ気になり、無心のねらいにならない。そこで自分の視野に的が入るという感じで眼へ的を移す気持ちである。~千葉範士~

最後に、「心と姿勢の状態の確認」です。物見を行った後に、「足踏みは両足に体重が乗っているか」「上半身で無駄な力みがないか」「三重十文字に則り、両腰、両肩の線が平行になっているか」「呼吸が整っているか」「両腕の力みがとれているか」「気持ちが落ち着いているか」などを確認してください。

これらの三つを行うことで、物見動作が完了します。顔を的方向に向けたときには、弓を引く準備と姿勢がきちんとできているように準備してください。

範士の説明による物見動作のポイント

次に、範士の先生による、物見動作の説明のポイントをまとめていきます。

 人に呼ばれたときにぱっと後ろに振り向くように顔を向ける
誰かに呼ばれたときにぱっと後ろを振り返るでしょう。そのときの顔の向け方は自然であり、生理的に負担がありません。このように、自然に自分にとって振り向きやすい位置まで顔を向けるようにすると、不要に首が曲がりにくくなります。

顔を向けるときに、心の中で誰かに呼ばれて振り向いたときをイメージしながら、すっと顔を向けるとそれが自然と物見になります。

的を見るときの頭持ちは、古歌に「頭持ちとは やよとて人の呼ぶときに 射ると答えて見向く姿よ」とある如く、人に呼ばれて左に振り向いたときの顔の位置が、一番横向きの自然の形であるから、この向き方で的を見定めて射を行えと教えている。~浦上範士~

 「鼻」「鼻筋」「左鎖骨のくぼみ」など、体の一部を基準に顔を向ける
顔を向けるときに、自分の中に基準を作るとわかりやすいです。その中で基準としやすい部位が「鼻」です。

鼻の位置を自分で知って、その位置に右耳が来るように向けましょう。これにより、顔を向けすぎないようになります。何か基準を自分の中に作ることで、毎回の物見がずれなくなります。

あるいは顔を向けた後の「鼻」を基準にすることもできます。向けた後の鼻筋がちょうど的の中間の位置に置くようにします。こうすれば、頭持ちが前や後ろに傾きすぎることはありません。

小笠原流の射法の説明では、「左肩の鎖骨のくぼみ」を基準とします。鎖骨のくぼみに顎が出る程度に向けと、顔が前後に傾かずに物見を行えます。なお、体格や骨格によって、多少基準からずれることも考える必要があります。

作意なき自然の物見を尊ぶ。その形は鼻のあった場所へ、右耳を置き換える位置がよい~富田範士~

だいたいの基準としては鎖骨のくぼみに顎が出る程度にし、鼻筋で的を半分に割る気持ちがよい。こうすれば、頭持ちが照ったり(後ろに倒れること)伏したりせず、まっすぐになる。~宇野範士~

日置流の射法説明では、右目を基準とします。右目が的の真ん中に来るように顔を向けます。これを目尻目頭という教えといわれ、右目を目頭と称し、適切な頭持ちの保持の方法として説明されます。

的の見る眼は、日置流では目尻・目頭といって左眼の瞳は目尻に、右眼の瞳は目頭にあるを定めとしている~浦上範士~

以上の内容を理解し、実践することで、顔が前後左右に傾かない物見を行うことができます。

照る物見にならないようにする

ただ、物見動作は弓構えで整えれば、後は気にしなくてもよいわけではありません。実際には、弓を打ち起こすとき、弓を引くときに、頭部の位置関係は変化していきます。弓を上げる際は、両腕が動き、引き分け動作では両肩関節に力みが出てきます。これによって、頭部を真っすぐに正した状態を保持しずらくなり、首が前後に傾いてきます。特に、弓道関係者に多いのが「照る物見」です。

弓を上げるとき、引くときに顔が左側に傾いていきます。もし、顔が左側に傾いてしまった場合、両目を地面に対して平行にそろえ、きちんと的を見ることができません。弓を引くときに両肩が力む要因にもなるので気をつけるようにしてください。

このような「照る」物見は、弓構え動作が適切でないことから、あるいは胴づくりにおいて、何かしら欠点が起こっているから起こる可能性があります。打ち起こしの仕方、弓の引き方によっても起こる可能性はあります。照る物見にならないように、弓構えできちんと頭部を真っすぐに正してください。

照る物見を解消するには

では、ここで照る物見にならないようにするための対策を考えていきます。「弓構えの姿勢点検」「体格」の二つの原因によって、起こりえます。それぞれの原因を分析し、真っすぐに正したあごの状態を整えるようにしてください。

弓構えでの姿勢点検

まず、弓構えで姿勢がきちんとできているか確認するようにしてください。

・胴づくりで「①上半身に無駄な力みがない」「②体重が足裏にきちんと乗っている」状態に整える

①、②がわからない場合は、「上半身が安定した胴づくりの状態と具体的な構築の仕方」を勉強するようにしてください。さらに、「理想の胴づくりを崩さないために意識すべき3つのこと」を勉強し、胴づくりを整えるようにしましょう。

・弓構えで「③両腕に力みが入っていない」「④左右の手に力が入っていない」状態に整える
③がわからない場合は、「両腕の力みを取れば、「抽象的な弓構えの文章」を理解できる」を勉強するようにしてください。④がわからない場合は、「多くの範士が実践する「懸口十文字」を行うための3つの要素」より、左右の手の力みの取り方を学ぶようにしてください。

太っている人、痩せている人の陥りやすい物見の崩れを分析し、対処する

次に、体格の影響によって、頭部の位置が左右に傾いてしまうことがあります。これを対処するために、体格別に、物見が崩れやすい原因を分析し、対処法を考えていきます。

まず、痩せている人は、物見が伏せがちになりやすいです。この理由は、やせ型の人は、弓構えを取った際に、両腕の重みによって、上半身全体が屈んでしまうからです。

人の腕の重みは、片腕で4kg、両腕で合わせて8kgあります。そのため、腕を軽く前に差し出した弓構えの状態は「米俵を一つ前に抱えた状態」と同じになります。この状態が続くと、やがてみぞおち部の筋肉がゆるみ、上半身の上部が前に傾きやすくなります。したがって、顔の頭頂部右側が傾きすぎた姿勢になります。

これを対処するために、やせている人は弓構えにおける両腕を少し体に寄せるようにしてください。すると、背筋が伸ばしやすくなり、頭部を真っすぐに正して的方向に顔向けできます。

 
痩せた顎の長い人は頭が左に曲がりすぎて右頭頂部が体の前方へ突出して顎が下がり、左肩が突っ込みやすくなります。~高木範士~

矢を迎えるためか、首の大筋(乳しき胸鎖筋)が前傾して、頭を前に差し出した失敗姿勢を非と知らぬ人もいるようである~祝部範士~

ただ、やせ型の人の場合、胴づくりにおいて背中を真っすぐに正しやすいため、比較的物見動作で顔を真っすぐに正しやすいです。そのため、痩せている人も、「物見が照っていないか」を注意深く観察するようにしましょう。後ろから見てもらい、顔が左側に傾いていれば、意識的に強くあごを引くようにして、物見の崩れを防ぐようにしましょう。

次に、太っている人は、あごが上がった物見になりやすいです。この理由は、太っている人は、体の腹部についた脂肪の重みにより、骨盤が前に傾きやすいからです。
太ったアゴの短い人は多くは頭の向きが不足でアゴも上がりがちで左肩が締りにくい~高木範士~

骨盤が前に傾くと、上半身を真っすぐに正すための背中の筋肉(脊柱起立筋)が強く張られます。背中の筋肉が張ると、首の後ろの筋肉も縮み、あごが上がりやすくなります。太っている人の場合、弓構えによる両腕の位置によって、顔向け動作がしずらくなるため、注意するようにしてください。

この場合、太っている人は、両拳を体に近づけるようにしてください。両腕を前方に伸ばすと、上半身全体が前に傾き、背筋の張りが取れます。これによって、首の後ろの筋肉の凝りが少なくなり、結果として顔が向きやすくなります。太っている人は、弓構えを遠く取るように意識しましょう。

ただ、このようにしても、顔を的方向に向けきれない場合があります。その場合は、胸周りをすぼめるようにして、両肩関節を前に出すようにしてください。これによって、顔が前に向きやすくなります。「神永範士の弓構え動作」を参考にすると、肩関節を前に出す意味が内容が理解できるため、意識するとよいです。

以上の内容を整理します。

・物見動作は「あごを軽く引く」「半眼にする」「心と姿勢状態を確認する」の三つを行う

・しかし、実際に弓を引く際は「照る物見」などの物見の崩れが多いので、射の稽古で気をつけるようにする

・物見が崩れてしまった場合は、「胴づくり」での上半身の状態、「弓構え」における両腕の状態を確認するようにする

・痩せている人は弓懐を狭くとるようにし、太っている人は弓懐を遠くとるようにすると物見の崩れが防げる

これらの範士の説明を取り入れて、明日の稽古で頭部を真っすぐに正した物見を実践しましょう。弓が引きやすくなり、左肩が押せるようになって、結果的に狙った方向に矢を飛ばしやすくなります。

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