教えにこだわりすぎず、弓を堅く握らない方法

教本の範士の説明を見ると、手の内を様々な角度から解説しています。ただ、このような文章を読んでも、「結局どうすればよいのか?」ということがいまいちわかりません。

そこで、どのような方も、まずは「堅く握らないこと」を意識して稽古されるのが大切であると教本一巻に表現を使って手の内を説明しています。そうした内容を理解することで、手の内を整え、押し動作を行うことができます。

今回は、弓を余計なことを考えずに、堅く握りすぎない方法をお伝えします。これによって、大三で弓手が入れやすくなり、引き分けでも押し動作をしやすくなります。

各パーツの具体的な力の状態を把握する

まず、弓は部位によって名前がついていることがわかっています。手のひらの中心を「手心(しゅしん)」、手のひらの中央のくぼんだところを「掌心(しょうしん)」、手の小指の基関節の内側よりやや手首に近い肉の厚い部分を「掌根(しょうこん)」といいます。

できるだけ無駄な力みなく弓を握る場合、これらの場所も「余計な力が入っていない」状態になっていないといけません。そのため、これらの部位は以下のようになります。

手心(しゅしん)は弓を握っているときもくぼんだまま
掌心(しょうしん)は指で触って柔らかいこと
掌根(しょうこん)も柔らかいこと

この三つの状態になっていることで、柔らかく弓を握れていると判断できます。つまり、左手全体を柔らかく、余計な力みを入れないようにしておきます。

軽く握った状態を体感する

次に、軽く握った状態を体感するために、簡単な実験を行います。

まず、弓を握ってください。このときは柔らかく握ろうとか考えずに、普段稽古しているように弓を握ります。次に、その弓を思いっきり力強く握ってください。5秒程度握った後に脱力すると、力が抜けて「軽く握っている状態」を体感できます。このように、一度力を入れてから、抜くと「軽く握られている状態」を体感できます。

ただ、この他にも、「軽く握っている状態」に近づける方法はいくらでもあります。その他に範士の先生が解説されている内容を実践すれば、左手を軽く握った状態を構築できます。

例えば、以下のようなものがあります。

・中指と親指の二指で作った輪っかを少し広げる
・神永範士の三角の手の内を実践する
・人差し指と親指の間に弓をきちんと当てる

1、中指と親指の間のわっかを大きめに広げる

弓を軽く握るためのポイントとして、「中指と親指のわっかを少し広げる」ことがあります。

中指と親指でわっかを作り、少し広げるようにすると、自然と「手心」がくぼむようになります。掌の中心がくぼんだ状態で握ると、自然と力が抜け、軽く弓を握れるようになります。多くの範士が実践されるように有名な手の内です。

もし、中指と親指の間が狭くなると、大三で弓手を入れる際に、弓を強く握ってしまいます。大三で弓の位置が手のひらの中で大きく変化するため、つい握ってしまう気持ちがおこりやすいです。そのため、中指と親指の間を、少し広げておき、弓手を弓把の中に入れやすくしておきましょう。

誰でも中指の上に拇指が乗っているはずである。これが正しい物の握り方であろうから、弓を握るにも、拇指と中指の二指で軽く握り、他の無名指と小指の二指は、無心に添付した程度の握り方がよい握り方と愚考する。 ~鈴木伊範士~

左手は、ただ拇指と中指とにて輪を作って軽く握り、他の無名指・小指はただ弓に巻き付けておくだけで一切の工作をやらない。正面から見れば、拇指の腹が中指を軽く押えておくだけというのだが、これで結構離れも強く、弱弓でも握りのずり落ちることなどはあり得ないという握り方である ~祝部範士~

2、神永範士の「三角の手の内」を実践する

まずは、神永範士が説明されている手の内のを取り入れましょう。教本二巻で、神永範士は「三角の手の内」を実践されており、この内容を取り入れれば、軽く握った状態が体感できます。

イ、小指と親指を寄せるようにし、人差し指を上に起こすようにする
ロ、弓に接している部分が「人差し指と親指の股」「小指の付け根」の二か所になり、この二つの部位で弓を支えられるようになる
ハ、薬指、中指の付け根が弓から離れるようになる

イ~ハの手順で弓を握ってみましょう。中指と薬指の根本が弓と離れるよう、かつ左こぶし全体が「丸く」なるように弓を握ります。すると、弓と手の平の接触面積が少なくなります。必要以上に握りすぎてしまい、接触面積が大きくなると、弓を堅く握ってしまう原因となります。

 
「手の内」の整え方は、私は三角の手の内といっている。左手の拇指と小指とを接近させると、人差し指との間に三脚の形ができる。~神永範士~

中指以下の三指を指先をそろえて一枚とし、指先から曲げて拇指と組ませる。中指、薬指と弓との間にやや空間ができるようになる。この空間は弓返りの際、手の内に反動がこないで冴えるのである。~神永範士~

 

このように、中指、薬指の付根がつかないようにすると、自然と手のひらが丸い構造となります。このように、手の内では、掌を丸くした構造となるようにします。

拇指と人差し指との股で軽く弓を受け、中指・薬指・小指の三指は、指先に力がこらぬように、手の平に丸みをもたせるような気持ちで、指が弓の握革に軽くからみつき吸い付くような気持ちにすることが肝要である ~高木範士~

弓の外竹と中指との間に隙間ができるようにする

さらに、中指と薬指の間を広げるようにすると、中指は軽く曲がった状態になります。この状態を見ると、中指と外竹の間に「隙間」ができます。

弓を握るときに、拇指の腹に中指をつけるようにします。そして、中指と親指とで輪っかの構造を作ったら、それ以上握りしめないようにします。すると、自然に中指と外竹の間に隙間ができます。教本三巻の富田範士の中四角の手の内の写真で「中指と外竹の間が空いている」状態を再現しているので、確認するようにしましょう。

三角の手の内の実践すれば、三つの指先が直線にそろいやすくなる

もし、中指と薬指の付け根を弓から離すようにすると、二つの指を根本から曲げるようになります。すると、正面から見て、中指と薬指の長さが短くなるため、小指と爪先がそろうようになります。これが、「三指の先をそろえる手の内」です。

手の内を調えるには、拇指の根を弓の中墨にあて、中指はしっかりとし、また薬指と小指と共にこの三指が爪揃いに一枚となり、弓を直角に握るのである。~安沢範士~

三指の爪先をそろえる手の内は、中指と薬指を根本から曲げ、掌全体を丸く球体のように構築することで構築できます。

ただ、三指をそろえる手の内を構築する際に注意していただきたいことがあります。それは、三指は「軽く握ることで結果的にそろう」のであって、指先に力を入れてそろえるわけではないことです。

もし、指先に力を入れると、大三で弓が手のひらに回る際に、皮膚に強い摩擦力がかかります。すると、指先に存在する感覚器に強く電気的刺激が発生し、左こぶし、左腕の筋肉を強く緊張させます。すると、左手を強く握りしめたり、左腕を突っ張ったりします。

掌を丸く整えることで、自然と三指がそろいます。決して指に力を入れて指先をそろえるのではありません。指に力が入ってしまうと左こぶし全体に力が入ってしまい、大三で弓手を入れる作業や弓を押す動作がしずらくなってしまいます。気をつけるようにしてください

人差指と親指の間に弓をしっかりはめる

最後に、掌に力をかけずに弓を握る方法として「虎口に弓をしっかりはめる」ことが挙げられます。人差し指と親指の間に弓をしっかり当てるようにしてください。すると、大三、引き分けで弓をしっかり押せて、指先に力が入りにくいです。

はじめに、人差し指と親指の間にはまる場所を確認しましょう。弓構えの段階では弓の左側木です。次に、打ち起こしで腕を高く上げていき、大三で弓手を押し回します。この際に、人差し指と親指の付根が弓の内竹にしっかりはまるようになります。この状態で弓を押していけば、左こぶしに余計な負担をかけずにすみます。

正面で手の内を整える場合、中指以下三指のつま先をそろえ、弓の左側木のところが人差し指と拇指との股(虎口)にはまり込むように、フンワリとやや深めに握る~千葉範士~

先ず、虎口(ここう)すなわち人差し指と拇指とのまたの中央を弓の側面にあて、手心が外竹へ十文字に軽く接触するのを意識しながら~松井範士~

うまくはまらない場合は、「紅葉重ね」の手の内を試す

ただ、人差し指と親指の間に弓をはめるときに、いくつか障害が起こります。例えば、大三で弓手を押しまわすときに、「左手首が外側に曲がりすぎる」「人差し指と親指の間の皮が弓によじられすぎてしまう」などがあります。

その場合、浦上範士がお話しされている「紅葉重ねの手の内」を参考にします。「紅葉重ねの手の内」とは日置流における手の内の整え方です。教本二巻には、紅葉重ねの手の内には「斜面」と「正面」とで行う方法が解説されています。その中で、正面で行う方法を参考にしてみましょう。

「紅葉重ねの手の内」をさらに詳しく知りたい人は「日置流紅葉重ねの手の内」の内容を参考にしてください。

具体的な手順は以下のようになります。

はじめに、左親指と人差指の股の中心を、弓の内竹の左三分右七分のところに当てます。次に三本の指先をそろえるように拳を作り、親指を軽く中指の上に乗せます。その状態から、弓を上方に上げていきます。そして、額より上部に拳をもってきたら、大三で弓手を弓肥の中に入れていきます。

大三に入るときに、三指はそのままに固定し、親指だけを滑らすように弓の内竹右側に入れるようにしてください、すると、人差し指と親指の間にしっかりはまって楽に弓を押せるようになります。このように、はじめは人差し指と親指の間に弓を入れるときに、無駄な「力み」が入ってしまうことがあります。その結果、弓構えで弓を軽く握っていても、後で力が入ってしまう可能性があります。

紅葉重ねの手の内を正面打ち起こしに応用するには・・・・拇指を軽く中指の上にのせ、「打ち起こし」から「引き分け」に移る際に、中指以下の三指は動かさずに拇指だけ滑らしながら、拇指の付根の皮が内に巻き込まれるようにし拇指と小指で弓を締めるのである~浦上範士~

以上の内容をまとめます。

・手の内で大切なことは、教えにこだわりすぎず、柔らかく弓を握ること
・柔らかく弓を握るためには、「手心はくぼんだままにする」「掌心を柔らかく保つ」「掌根は柔らかく、弓に当たるようにする」の三つを心がける
・そのためには、中指と親指の二指で作った輪っかを少し広げるようにする
・神永範士の手の内を実践するようにする
・人差し指と親指の間に弓を当てるようにする

これらの内容を理解することで、弓を必要以上に堅く握らない手の内が完成します。明日の稽古から積極的に意識するようにしてください。

では、取り懸け、手の内の適切な状態を構築できたら、最後に「物見」を意識してください。範士の物見の説明を参考に、「前後左右に崩れのない物見の取り方」を実践するようにしてください。

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