稽古をしていると、指導者から見た目やフォームで指摘を受けることがあります。その中には、思う通りに動けない人に対して、以下のように伝える指導者もいます。
「自分で考えなさい」
射の最中に、肩に力が入っていたとすると、肩が力んでしまう理由を考えさせるようにします。これによって、「自分で思考し、運動する力」を身につけることにつながります。
あまりにも、聞き手が甘えん坊で、わからないところを聞いてばかりでは「自分で考えろ」と伝えるのは良いかもしれません。
ただ、このように「自分で考えろ」といって、聞き手を突き放し、そのままにしてしまうのは、指導者としての本質から逸脱しています。
むしろ、弓道に限っていえば、指導者がきちんと受け手と関わらなかったばかりに、その人を悪い方向に導いてしまう危険が多いにあります。
まず、受け手に考えさせる材料を与える
弓道に限らず、あらゆる動きを指導する立場の場合、受け手に与えなければいけないものがあります。
それは、考えるのに必要な「知識」や「材料」です。
例えば、肩に力が入ってしまう場合、肩に力が入ってしまう理由について解説します。
・試合で緊張すると呼吸が浅くなって肩が緊張する
・膝の筋肉が緊張すると、肩が緊張しやすくなる
・ふくらはぎの筋肉が固くなると、胸の筋肉が固くなり、肩が緊張する
このように、「肩に力が入る原因」を聞き手に教えて、運動をさせます。すると、聞き手は知識を活用し、
自ら勉強したり行動するようになります。
このように、指導者は聞き手の経験やレベルを合わせてモチベーションを上げたりや行動を起こさせたりするキッカケを与えます。
ただ、これはただのキッカケに過ぎないため、全員がその教えが効果的に効くわけではありません。
しかし、他人の射を指導させていただく立場にいる場合は、少なくとも、実体験も積み、最も適切で相手に伝わる教えで指導する必要があります。
こうして、聞き手に体の仕組みや射におけるの最低限の知識を植えつけた後で、本人に考えさせるようにステップを踏まなければいけません。
例えば、当サイトでは、古来弓道に基づく最も合理的な姿勢と体の使い方に基づき、弓の引き方を教えます。弓の引き方に関しては、600ページ以上、10時間以上の音声テキストを無料で配布しています。
実際にアドバイスを受けた方は、今までと動きが見違えるように変わります。
「あ、こうすれば確かに弓が押しやすいですね!」
「凄い、前より矢飛びが良くなりました!」
「今まで本の内容でわからなかった部分があったんですが
、実はこういう意味だったんですね!」
当たり前の話ですが、算数の計算を教えるには「足し算、引き算」の原則を指導者がきちんと伝えなければいけません。
それを伝えなければ、いくら計算問題を解いても聞き手は正解することができません。
弓道でも同様に、まず最初に指導者が聞き手に弓の引き方に関する知識を提供する必要があります。
古来弓道では、「技習」という言葉があります。これは、弓道を教わるとき、最初はできる人に知識からやり方まで教わって、動作が行えるようにならないといけないという教えです。
言葉は違いますが、同様の内容が小笠原流の射法の説明に記されています。
指導者もその人の体格や筋肉や運動神経などを精査し、適切な伝え方を選択していく必要があります。
ただ、弓道の世界でこのように人に合わせて指導できる人はほとんどいません。
最初の足し算、引き算の内容すら適当に教えてしまい、聞き手を困らせている場合がほとんどです。
大多数の人が自分の行ってきたやり方ばかりに固執してしまい、体の仕組みや弓の引き方に関する考え方が薄いです。
そのため、自分の想定外の質問が来ると「それは自分で考えなさい」と聞き手に伝えます。
このように、確かな根拠もない知識を植え付けられた状態では、いくら聞き手が考えても自分自身で適切な解決策をつかむことは不可能です。
そのため、弓道の実力は伸びません。
そして、本や書籍に書かれたテクニック的な内容をいくら見たところで、実際の射に活かすことができず、上達しません。
そのため、あなたが弓道の実力を伸ばしたいのであれば、なんとなくではなく、体の仕組みに基づいて
合理的に弓の引き方を理解するようにしましょう。
あなたが、「短期的でなく、長期にわたって弓を引く技術を向上させ、実力を高めたい!」と強く考える場合、古来弓道の書籍や考えに触れて、弓の引き方を学ぶようにしましょう。