8. さぁ、踵荷重で八節を行おう:打起〜引分

さぁ、踵荷重の姿勢で、弓を引きやすくしよう。

ということで、次に、踵荷重の姿勢で打起から引分を円滑に行うためのポイントをいくつか紹介します。

踵荷重の姿勢で弓構えまでのポイントをまとめると

・踵荷重にすると、脚の筋肉が緩む

・膝関節を軽く曲げやすくなり、骨盤が垂直に立つ

・上半身が上方に楽に伸ばせて顎も楽に引ける

・両腕がリラックスでき、指先ではなく、指の根元に力がこめやすくなる

ようになりました。

この次に、打起こしについて見ていきます。

打ち起こし:下半身に体重をどっしり乗せて打起こししないで

踵荷重の姿勢をそのままに、ただ腕を上方に上がるだけあげてください。この時に、

体にどっしりと体重をのせて打起こししよう

と思わないでください。

よく、打起こしでは「弓を上げるように身は地に沈むように」という言葉があります。

これは、腕を上にあげたあとに、「体を沈めてください」というわけではありません。

例えば、体重をどっしり下に乗せるために、脚に力をいれたり肩を下げようとしたり・・・。こうすると、姿勢が崩れます。

実際、肩を下げながら打起こしすると、余計に弓を引き分けにくく、弦も離しにくくなります。

理由は、次のように説明できます。

打起こしから引き分けに入るとき、もっとも安定な姿勢は「上体に力が入っていない姿勢」です。

そのためには、肩にもお腹にも力が入ってはいけません。しかし、先ほどのように腕を上げたあとに肩を下げようとすると、体幹部に余計な力みが出てしまいます。

あるいは、脚に力をいれてみてください。背中に力が入ってしまい、腕を動かそうとすると力が入ります。

一見、腕を上げながら、「肩、脚を下げよう」と言う行為は、「腕を上に上げながら、地面は体を沈めるように」動作をしているように思います。

しかし、実際は、力が入っているだけで姿勢は安定していません。むしろ、不安定になっています。

実際に、腕を上に上げて肩や脚の筋肉をむりやり下げた姿勢をとった後に、別の誰かに上げた腕を押してもらいます。

腕が押し下げられてしまい、姿勢が崩れるはずです。

下半身は確かに安定します。しかし、上半身がブレやすくなります。

この内容は、踵に体重を乗せれば、たとえ腕を上に上げた姿勢であっても、その時の姿勢や重心が変わらないことをさします。

つまり、踵に体重を乗せれば、腕を上にあげても身体の重みは下に残ります。この時、あたかも腕は上がっているが、身体が相対的に下に沈んでいるような感覚になります。

打起こしは、腕を上に上げている状態のため、姿勢が不安定で無意識に筋肉に力を入れたくなります。

脚に力を入れたり、地面に足裏を無理して押し付けようとすると、「姿勢が安定した」ように感じるでしょう。

しかし、それは体に力が入ってるだけ、弓を引く動作で悪影響を与える可能性が高いです。最初から良い姿勢を維持して素直に腕を上げれば良いのです。

そうすれば、自ら胴造りを崩すことなく、腕を上げることができます。

引き分け:踵に体重をかけると矢束いっぱい取れやすくなる

では、打起こし動作を終えたら、左手に余計な力みをかけることなく大三をとっていきましょう。

ここでも、踵に体重をのせたまま引き分けていきます。この時に体感して欲しいのが、

・踵に体重をかけると、矢束いっぱいに取れやすくなる

ことです。原理を解説します。

まず、つま先に体重をのせて、引き分け動作のように、両腕を左右の方向に伸ばします。同様のことを踵に体重をかけて行います。

そうすると、踵に体重をのせた方が、両腕を左右に伸ばしやすくなりませんか?なぜなら、踵荷重の姿勢の場合、肩の付け根が下がりやすくなるからです。

この理由は、踵に体重を乗せると、背筋が緩み、肩甲骨を左右に開きやすくなるからです。

踵に体重を乗せると「菱形筋(りょうけいきん)」と言う背骨と肩甲骨の間の筋肉が緩みます。菱形筋が緩むことで、体は左右に伸ばしやすくなります。

反対に、つま先に体重をかけると、両肩が上がってしまいます。

つま先に体重をかけると、背筋に力が入って肩甲骨が中心によってしまいます。この状態からさらに腕を伸ばそうとすると、肩や腕の筋肉に力をかけて、無理やりにでも外側に開かないといけません。

したがって、腕を楽に伸ばせません。

踵に体重を乗せることで、腕の付け根から左右に伸ばすことができるため、腕が伸ばしやすく感じます。この原理を用いて、矢束いっぱいにとるようにしましょう。

つま先荷重で「足踏みの方向に弓を押す」ように引くと、大きく弓を引けなくなる

引き分け動作を行う時にいくつか注意点がありますので、気をつけてください。

よく、弓の引き方で「左手、右肘を足踏みの方向に押す」という言葉を使うことありませんか?

この内容自体は間違っていません。足踏みの方向に押すように、斜め上方に弓を押し開くのですが、つま先荷重の姿勢でやらないでください。

理由は、つま先荷重で両腕を斜め上方に伸ばそうとすると、両肩が上がるからです。

つま先に体重を乗せて腕を斜め上方に伸ばしてみましょう。この姿勢は元々後ろに倒れやすく、加えて弓の反発力が身体に方向に向けてかかります。

さらに体が後ろに倒れやすいし、余計に弓を開けません。

実は、この教えですら、踵荷重をかけると簡単にできます。

行うことは「踵に体重をかけて、横に拳を動かす」です。これで、両腕は斜め上方に自然と伸ばされます。

なぜなら、次のように力が働くからです。

1、大三の構えを構築し、左手と右肘を横に伸ばすようにする。ここで踵に体重が乗せているとする。

2、もし、踵に体重を乗せて、両腕が前にあった場合、身体が前方に倒れる力(①)が働きます。

3、拳を横に動かすと、両拳を横に動かす力(②)が働きます。

4、この①、②の力が合わさると、拳が斜め上方に伸びるように力が動きます。

自分で腕を斜め上方に動かすのではなく、自然とそうなります。

徒手で行えばわかりやすいです。踵に体重を乗せて、右こぶしを横に動かすと、身体が前に倒れて、右こぶしが斜めの方向に動いていくのがわかります。

つまり、踵に体重をのせて拳を横に動かせば、実際に両腕が斜め上方に伸びるように力が働きます。

「身体が前方に倒れたら、胴づくりが崩れるのでは?」と思う人がいるかもしれません。倒れません。なぜなら、この間常に外から体に向けて弓の反発力がかかるからです。

斜め上方に両腕を伸ばす力と、弓の反発力がかかり、結果的に力は相殺されて、胴体は動きません。

拳を横に動かしていく力だけが働き続け、結果体は前方に動きません。

つまり、引き分けで行うことは簡単です。

踵に体重を乗せて、両拳を左右に動かし続ける。この二つを行なってみてください。自然と両腕が斜め上方に動くように伸ばされ、自然と両拳が降りて行きます。

つまり、踵荷重での引き分けの利点をまとめると

・腕が上げやすい

・両肩が下がって引き分けで矢束が取れやすい

・ただ、両拳を左右に動かせば、弓を斜め上方に大きく開ける

・体が後ろに倒れることもない

となり、弓を楽に大きく引くことができます。

いよいよ最後です。適切に離れ動作に導く「踵射法、会・離れ」について勉強してみましょう。これで、あなたは楽に大きく弓を引けるようなります。

さらに「踵荷重の射法」の面白さを知りたい方は

なお、ここまで読んでみて、「踵の使った弓の引き方」おもしろい!と感じた方は、

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