踵を積極的に使うと、体配の歩き方、心の状態が良い方向に改善される

作法や体配を行う際は、「姿勢を伸ばして、目線を下げて・・・・」と決まり事が多く、あらゆることを意識すると動作がぎこちなくなります。本記事では、そうした問題を解消する「踵」の話を解説します。

体の仕組みを見ると、「踵」を活用すると体配動作のあらゆる部分でいい影響が出るのがわかっています。それを列挙すると

・背筋が上方に伸ばしやすい

・すり足動作がしやすくなる

・呼吸がしやすくなる

・周囲への配慮がしやすくなる

どの内容をとっても、体配動作にいいことばかりです。そして、本記事の内容は初心者の方でも明日から実践可能です。以下にその具体的な方法について解説していきます。

踵を踏んだほうが姿勢がキレイになる

弓道教本には、姿勢を整えるときに「背筋を伸ばす」「顎を引く」ように書かれています。この二つは「踵」を踏むと行えます。

立っているときに、体重を踵付近に乗せて、背中と首の後ろを伸ばしてみてください。すると、上半身の力が抜けて、姿勢を伸ばせるのがわかります。踵に体重を乗せると、背中の筋肉の力みが取れて、伸ばしやすいのです。次の歩き動作にすぐに移れるのが体感できます。

なお、連盟の先生の中には、「母指球に体重を乗せるようにしましょう」と解説される先生がいますが、これは絶対にやめてください。母指球に体重を乗せると、体の仕組み上、背筋を上方に伸ばせません。

試しに、つま先付近に体重を乗せるようにしてください。もしくは、土踏まず付近に体重を乗せても構いません。この状態で自分の手で背中を触ると背中が張りませんか?なぜなら、つま先に体重を乗せると、太もも裏側の筋肉が連動して張り、結果として張るからです。つまり、背筋を伸ばすことができなくなります。

そこで、くるぶしに乗せる意識で踵に体重を乗せてみてください。すると、自分で意識しなくても、背筋が伸ばしやすくなるのがわかります。

人の体は前のめりになると、頭部と胸が前方に出るようにできています。体重の乗っている点が前方になると、胸や頭部の重心も前方に移ってしまいます。その結果、胸が前に出て力が入ってしまったり、頭部が前方に出た姿勢になったりします。

一方、踵に乗せると、胸や頭部の重心が後ろに移ります。このため、意識せずとも背筋が伸び、顎が引かれます。

くるぶしに体重を乗せるようにすると胸と頭部の位置の自然と調節され、立ち姿勢をきれいに見せることができます。

人の体重は踵に乗せるのが合理的です。踵付近の膝下の骨の真下にあり、つながっていますが、つま先は膝下の骨に直接つながっているわけではありません。そのままつま先に体重を乗せてしまえば、足の指の骨をつぶすように力がかかってしまいます。

すると、つま先だけではなく、足首、ふくらはぎ、太もも裏側に無駄な張りが出てしまいます。

こうして脚の無駄な力みを取るために、踵に体重を乗せるのが合理的です。もし、できない場合は、少しだけ膝を曲げるようにしてください。すると、踵に体重が乗せやすくなります。脚の力みが取れると、背中や肩の力が抜けるので、執り弓の姿勢が取りやすくなると体感できます。

つま先を浮かせると、すり足で歩ける

体配動作の際は、歩き動作は「すり足」で行うように言われます。このすり足も、踵を活用すると容易にできます。

踵に体重を乗せてみると、強くけらなくても容易に体が前に進みます。加えて、踵に体重を乗せると、腰周りから上体を動かしやすくなります。体感として、「腰から動く」ように体を動かせるのがわかります。弓道教本の基本動作の中に「動作は腰を起点にして歩くこと」と記されています。この動作は、踵に体重を置き、踵から動くとできるようになります。

そして、歩き動作をする際は、「母指球」に体重を乗せるようにしないでください。体の仕組み上、つま先に体重を乗せると、すり足動作はできないからです。

執り弓の姿勢は、少し目線を下げて行うため、少しだけ体を前傾させます。この姿勢で母指球に体重を乗せたまま動くと、つま先から床に設地しやすくなり、つま先に体重がかかります。すると、地面との摩擦力が大きくなるため、歩き動作にブレーキがかかります。そうして、つま先と地面との摩擦力がかかると、踵が浮き、地面を擦るような歩き方ができなくなります。

スムーズにすり足で歩きたいなら、踵を活用するようにしましょう。歩き方も整い、姿勢を崩さず動作ができます。

しゃがむ動作も踵に体重を乗せてきれいに行える

慣れてくると、踵をうまく活用すれば、しゃがむ動作も容易にできます。

しゃがむ際に、右足を後ろに引いた際に、膝を軽く曲げておきます。そこから、踵に体重を乗せたまま「後ろに倒れる」ような感覚でしゃがみます。すると、腰から下方に下げることができ、キレイにしゃがめます。

しゃがむ際に、腰が10センチ下がると同時、弓の裏弭も10センチ下がって地面につくように動作をします。誤って腰が下がる前に裏弭が地面についてしまうとよくなくて、これを防止するのが踵です。これを、踵を踏むとスムーズにかつ、腰と連動してしゃがむことができます。

踵に体重を乗せると、足底筋膜がストレッチされます。これによって、ふくらはぎの筋肉がゆるむため、脚の無駄な力みがとれます。よって、腰を楽に下げられるのです。踵を意識的に活用すれば、本座に入るまでの動作をすべて無駄な力みなく行えるようになります。

踵を踏むと動作をゆっくり行いやすくなる

さらに、踵に荷重をかけて動作し続けると、動作をゆっくり行えれるようにコントロールできます。

審査や体配を行う際に、大前で歩いていると、一人だけ緊張して早歩きになってしまう場合があります。この問題は、踵を踏むことで解決できます。

軽く膝を曲げて、踵に体重を乗せるようにしてみてください。すると、骨盤が垂直に正され、腹で呼吸しやすくなります。深呼吸すると、緊張が緩和されて、その呼吸に合わせて歩き動作を行っていくと、自然とゆっくりになります。

人はゆっくり呼吸をすると、動作も自然とゆっくりになります。深く呼吸をしている最中、動作を速くするのが難しくなるためです。もし、反対につま先に体重を乗せて呼吸をすると、胸で呼吸(胸式呼吸)がしやすくなり、体が緊張しやすくなります。こうした「つい焦ってしまう感情」も踵に体重を乗せて解決できます。

踵を踏むと、周りと動作を合わせやすくなる

最後に、踵に体重を乗せると、「周囲との動作」を合わせやすくなります。

全員が本座に立って座ろうとするとき、隣の人との座るタイミングがずれてしまうことがあります。この事態も、踵に体重を乗せると解消できます。キーワードは「踵を踏むと、隣の動きが見えるようになる」です。

例えば、両隣の人と動作を合わせるときに、踵を踏んで顎を引くようにしてください。おそらく、顔を動かさなくても、隣の人の動作が見えるようになり、合わせやすくなります。隣の人が一足後ろに引く動作も、踵を踏めばよく見えるようになります。

この理由は、踵を踏む、姿勢が伸びると「視界が広がる」からです。踵を踏むことで、顎が引きやすくなります。顎が引けると首の後ろの後頭下筋が緩みます。これにより、視界を広げたり狭めたりする際に働く「毛様体筋(もうようたいきん)」が緩みます。

毛様体筋は遠くを眺めるようにすると、緩みます。首の後ろを伸ばし、眼球をゆるめると、あたかも遠くの景色を眺めるような感覚が得られるのです。これによって、横方向の視界も広がり、隣の人の動きやしぐさも目に入りやすくなります。

これによって、隣の人の動きもよくわかるようになるのです。

そのため、踵を踏んで首の後ろを伸ばすようにすると、隣の動きが把握しやすくなって、動作を合わせられやすくなります。その他の動作も踵を踏むことで、動き出しがよく見えるようになります。意識して活用しましょう。

弓道教本の誤り:礼をしやすい動作に主眼を置きすぎている

ここまでの文章を読むと、踵に体重を乗せた方が合理的なのがわかります。加えて、教本の内容にも詳細を解説します。

弓道教本の基本姿勢を見ると、「体重は拇指球に載せて、ひかがみを伸ばす」と記載されています。このように、母指球に体重を乗せるよう記載されているのは「いつでも礼をしやすい」構えを作るためです。

人は、母指球に体重を乗せると、背筋が張って上体を前に倒す運動がしやすくなります。その動作を軸に動作が考えられているため、拇指球に体重を乗せるように解説されます。しかし、よく考えるとわかりますが拇指に体重を乗せると、すり足がしずらくなります。仮にできたとしても、つま先に地面が当たりすぎる「ずり足」のような感覚になるのがわかります。

このように、地面を擦る音が遠くでも聞こえるくらいに擦る動きを「すり足」と定義しています。しかし、江戸時代の書籍、剣術の世界、能におけるすり足はみな「足音がならないくらいに地面をする」と解釈しています。

したがって、連盟の先生が「スッススッス」とやたらに音を立てるすり足をさせたがる場合、不合理で根拠のないすり足を教えている可能性があります。身体を正しく使って作法をしたい場合は、踵を踏んで足裏全体で歩く「擦り足」を覚えてください。

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