角見を効かせると、弓道の技術は衰え、的に中らなくなる

弓道の世界で、「角見を効かせる」という教えがあります。これは、親指のつけ根から押し込むように弓を押す教えです。

ただ、この角見の内容についてと誤解している人は多数います。

「もっと角見から押して効かせて」と親指の付け根で押すように教える方がいますが、文献上この指導は誤りです。この内容の正解は、「角見から押すのをやめること」です。そうすれば、角見を効かせることができます。

この内容について詳しく解説していきます。

角見の語源を正確に理解する

まず、角見の語源について、明らかにしておきます。語源は引いたときの親指第2関節の骨を角と見立てたことから来ています。

しかし、この語源ですら、きちんと調べていない人がいます。SNSでは、「角を見合うところが全く正しい」が角見の語源であり、よくそんな調べないでこんな発言するなとも言われました。

ちなみに、私は東京大学卒業で江戸時代の歴史と用語、弓道の用語をきちんと調べた方から引用して解説しました。その方の資料によると、今の弓道連盟の使用されている弓道の用語に間違いがあると解説しています。蟇目、ベタ押し、円相、これらの用語の意味がわかっておらず、意味を再調査して、本も出版されています。その上で、角見は「親指の根っこのことであり、関節が曲がる部分を角と見立てる」と解釈されています。

そのような理由のため、角見=親指の第二関節の曲がっているところと解釈できると判断できます。

弓道の世界では用語の意味をきちんと調べないで相手に意見する人がいます。このような行動はやめましょう。社会に入ったらこのように自分は行動しないで相手を批判する人は武道家として最悪であり、社会にも多大な迷惑をかける行為です。

「効かせる」という言葉の意味

次に、「効かせる」の意味は「隙間をなくす」です。効かせるとは、大工の世界の用語です。

大工さんが柱の揺れを抑えるために、立てた柱にある隙間をなくすために、板状のスペーサーを打ち込むことがあります。このスペーサーを大工の世界で「楔(くさび)」とも言います。この隙間をなくすことで、柱全体の安定性は向上します。

ちなみに、弓師の世界でも楔はあります。弓打ちという弓の形状を整える際に、材料を縄で縛って、縄の縛り目の間に楔を打ち付けます。そうすることで、材料自体を曲げる力をかけられます。

では、弓道における「角見を効かせる」とは、正確に言うと「親指の付け根から親指先までを(楔)」と解釈し、それを離れ動作で的方向に打ち付けるようにし、腕を伸ばし切ることを指します。

会に入ると、弓の圧力が親指の付け根に集中します。この圧力をもって、離れた後に親指の付け根が的方向に押し込まれます。「自分で押す」のではなく「押し込まれ」ます。そうすることで、腕の筋肉が強く伸ばされ、腕が楔を打ち付けられた柱のように、安定します。これらの動きを「角見を効かせる」と解説しています。

つまり、「角見を効かせる」教えでやることは、親指を的方向に向けて強く押すことではありません。むしろ、会の段階では、親指付け根の筋肉を緩めて、弓の力を受ける感覚で保ちます。そうすることで、弓を離した後に親指が的方向に強く押し込まれます。離れた後に親指の付け根が的方向に向けて伸びている状態を「角見を効かせる」と解説しています。

会の段階で親指付け根を張ってしまうと、的方向に強く伸ばされなくなります

むしろ、会の状態で親指付け根を押してしまうと、押し動作がしずらいどころか射型が崩れてしまいます。

なぜなら、親指の付け根に力が入ってしまうと、手に力が入るどころか、腕と肩にも連動して
力が入るからです。

会では、すでに弓が親指付け根を押す力が発生しています。ここで自分から親指を押し込めば、親指付け根に強く負担がかかります。すると、手首が下に向いて上押しになります。

さらに親指付け根に力が入ると他の指にも力が入ります。拳全体に力が入ってしまい、弓を長い時間押すことができなくなります。

■日置流の古書には、親指付け根に力を入れてはいけないと記載
実際に親指に力を入れた状態は射に不適切であると書かれています。

例えば、日置流の書「弓矢と習射」には以下のように記されています。

左手弓に触るるに力を用いる余あり、例えば、鵜水に入りて首項浮かぶがごとく、首の力を以て浮かぶにあらず、渾身浮かぶに応えて頭頂自ら水上に出づ、弓を握ること緊なれば、鵜の頭力を以て水上に浮かばんとするがごとし、力必ず充益して偏癖止め難し。

ちなみに、昔の弓道文献でも同様に、「親指の付け根の筋肉に力を入れてはいけない」ことの記載はあります。

うろこ形手の内の事、是は弓の内竹の内かとを大指の付け根のすみへ押し当て、すみからすみへ押す如くに押しかけて射るなり。是は悪しき手の内なれ (日置流指南書中 道雪派)

このように、昔の文献から親指に力を入れて押す手の内は誤りと考えられます。理由は、そのようにすることは、悪しき手の内であり、偏癖が発生すると記述されているからです。しかし、今日の弓道指導者はこのような文献を見ずに、「とにかく親指の付け根で押しましょう」と考えずに解説される方がいます。

私自身、30kgの弓を用いて稽古します。とてもじゃないですが、親指の付け根で押そうと思ったら引けません。

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