弓道における右手の取り懸け – 手首をひねらず、正しい姿勢で自然に捻る方法

弓道の取り懸けにおいて、多くの人が悩むのが 「右手首のひねり」 です。

ひねることで肩や腕に余計な力が入り、射形が崩れる一方で、ひねらないと矢こぼれが起こる という問題があります。

ただ、この問題も 「手首をひねらずとも、自然に正しい形が作られる方法」 が存在し、その具体的手法を解説します。

1. なぜ右手首をひねると言われているのか？

一般的に、右手首をひねるよう指導されるのは、次のような理由からです。

• 弦がしっかりかかるため

確かに、手首をひねることで弦のかかりが良くなり、矢が落ちにくくなる側面があります。

しかし、意図的にひねることで肩や腕に力が入り、結果として射形が崩れる という大きな問題が生じます。

そこで、禅の視点で「最初の構えで射が全て決まる」と解釈するならば

手首をひねる必要はない

手首を意図的にひねる必要はありません。

正しい姿勢を作れば、余計な力を入れることなく、自然と手首はひねられるからです。

その具体的なプロセスをご紹介します。まず、

 腕を寄せるのではなく、胸を開くと自然と腕は寄せられる

と考えてください。

手首をひねるのではなく、姿勢と動作の連動によって、結果的にひねられる状態を作る ことが重要です。

その手順はこうです

1. 両脚を足踏みの前で中心に寄せるようにしてから、左右に開いてください
   • こうすることで、内転筋が働き、自然に左右に開きます
2. 両太ももを後ろに引くようにし、やや体重を後ろ気味に乗せます
   • 内転筋は太ももを内向きに回す筋肉であり、内に回すと自然に両脚を後ろに引けます
3. 自然と背中を真っ直ぐ起こすように伸ばす
   • ２によって、背中を真っ直ぐに伸ばせるようになります

4. 胸を左右に開ける

・3によって胸が自然に開かれます

ここまでくると、容易に腕の筋肉を体の近くに寄せることができます。

それで前腕と手首を観察してみてください。自然に前腕は内に入って右手首が捻られませんか？

このように、胸を開いた状態で前腕を近づけると、内旋するようにできています。だから、右手首は自然に捻られるのです。

ちなみに、

4. 自分からひねると起こる問題点

意図的に右手首を捻ろうとしないでください。

以下の問題が発生します。

1. 肩や腕に力が入り、射形が崩れる
   • 肘の位置が不安定になり、結果として正しい弓の引き方ができなくなります。
2. 離れが緩み、矢勢が落ちる
   • 余計な力が加わることで、離れの際に矢の軌道が不安定になります。
3. 弓の反発力に対抗できず、強い弓を引けなくなる
   • 特に、右肘が流されるようになります。そうすると、引き分け以降、右肘を体の後方に割り込むように動かすことができなくなります。

ただ、ここまでお話しをしたとしても、人によっては、

ひねらないと矢こぼれが起こる

人もいると思います。

確かに、ただ手首のひねりを取り除くだけでは、矢こぼれのリスクが高まります。右手首を捻ると、人差し指が矢を抑える力が低下するからです。

ただ、

それでも「手首をひねる必要はない」

と考えられます。

なぜなら「ひねらなくても矢こぼれが起こらない状態」 を作れるからです。

その答えは 「親指のかけ方と姿勢」 にあります。

6-1. 親指のかけ方 – 弦と親指が自然に引っかかる構造

弓道では、親指を適切な角度で弦にかけることで、ひねらずとも弦がしっかりと引っかかる 仕組みになっています。

使用する 弽（ゆがけ）の構造 によって若干の違いはありますが、基本的には 親指を約45度の角度で弦にかける ことで、安定した取り懸けが可能になります。

この角度を維持することで、無理にひねらずとも 弦と親指が適切にフィットし、矢こぼれが防げる のです。

それで、

胸を開いた姿勢なら、手首をひねっても親指の向きは変わらない

良い姿勢であれば、仮に手首のひねりを戻しても 親指の向きは変わりません。

例えば、次のように手首を動かしてみてください。

１、胸を開いてから腕を体に近づける

２、親指を体に対して４５度方向に向ける

３、その状態で右手首を外向き、内向きに回す

おそらく、この状態だと、右手親指の向きは４５度に向いたまま回せます。

しかし、今度は胸の筋肉を開かず、親指を４５度に向けて、手首を外、内に回してみてください。

そうすると、

つまり、姿勢が正しければ、手首の角度を意識せずとも自然と適切な位置に収まるのです。

しかし、姿勢が丸まっていると、手首をひねる動作によって 親指の向きが大きく変わり、矢こぼれの原因となる ことがあります。

「手首のひねりを戻すと、親指の向きが変わる」と感じる場合、問題の本質は 手首の角度ではなく、姿勢そのもの にあります。

最初の姿勢が崩れているために、ひねりを戻すと矢が不安定になる のです。
したがって、重要なのは 手首のひねりをどうするかではなく、最初から正しい姿勢を作ること です。

9. まとめ – 理解すべきこと & 実践すべきこと

理解すべきこと

✅ 右手首は意図的にひねる必要はない
✅ 正しい姿勢を作れば、自然に手首はひねられる
✅ 親指の向きを45度にすることで、ひねらなくても矢こぼれは防げる
✅ 問題は手首ではなく、姿勢にある

明日から実践すべきこと

✅ 脚を適切に伸ばし、重心を後方へ移す
✅ 胴を立て、体の軸を整える
✅ 上腕を自然に回し、腕が体に引き寄せられるのを感じる
✅ 親指の角度を45度にセットし、無理にひねらない

この考え方を意識しながら練習を重ねれば、手首に無駄な力を入れずに 安定した取り懸けができるようになります。
ぜひ、明日からの稽古で実践してみてください。