足踏みの角度がだいたい60~70°が適している理由

なぜ、足踏みの角度は60度程度に収まるのか

足踏みの角度は「60度」に踏み開くことように説明されます。

男女、骨格により、多少値が前後しますが、だいたい基準は60度と言われています。歪みのない姿勢を構築するためには、両足の開き幅をキチンと理解する必要があります。では、弓道教本では、なぜ足踏みの角度は60度と説明されているのでしょう?今回はその理由について解説していきます。

狭すぎず、広すぎずに足の角度を広げる理由

ほどほどに広げると、姿勢がブレにくい♪

初に、足踏みの角度を変えることで起こる影響を解説します。

角度を広げる→左右への力に強くなる

狭すぎる→前後への力が強くなる

このように、姿勢が崩れにくくなったり弓を押す動作がしやすくなります。

足の角度を広くすると、太ももを外に外旋させる筋肉(大殿筋、梨状筋)が張って骨盤が垂直に立ちます。これによって、左右方向の力に強くなります。一方、足を狭く踏むと、脚の内側の筋肉が張って、骨盤が前傾します。これによって、前方向に押す力が強化されます。

これは、簡単な実験でわかります。最初に、足を広く踏んだ状態で左腕を横に出します。次に、もう一人が伸ばした腕を押すようにし、足を広く踏んだ人は押し返すようにします。足の角度を広く踏むと、押しやすくなります。

次に、足を狭く踏んで、腕を前に出して押すと、足を狭く踏んだ方が前方向に押しやすくなります。

適切な姿勢を維持して弓を引くためには、弓を前と横方向に押す力を働かせる必要があります。そのためには、両足の角度を広すぎず、狭すぎずの幅に乗せる必要があります。

60度になった理由

重要なのは骨盤が立っていること

ただ、こういってしまうと60度に踏み開くように設定した理由がわからなくなるため、そちらも解説します。理由は、「骨盤を垂直に立たせるため」です。

正確に弓を押し開く際に、「骨盤が立っている」ことは重要です。骨盤の角度はできるだけ地面と垂直に揃えて、前や後ろに傾かないようにする必要があります。

60度の意味は、その角度が骨盤を垂直に立たせるための「外旋筋(大殿筋、梨状筋)」がもっとも働くためです。このように、筋肉を締めた姿勢を取らなければ、弓を引いている最中に骨盤が前傾し、腰が反って胸の張った姿勢になります。これを防ぐために、外旋筋を締めた姿勢を構築する必要があります。

そのためには、だいたい60~70度前後に足の角度を開く必要があります。「気をつけ」の姿勢が60度になっているのもこのためです。アゴを引いて、両足を60度に開くと、容易にお尻を締めることができ、骨盤が垂直にたちます。

60度に足先を向けただけでは足りない?

年取ると太ももの骨が内側に向き始める

このお尻を締める外旋筋は年齢を重ねると低下していきます。そのため、足先だけ60度に向けていても、胴作りが崩れてしまうことも結構出てきます。

例えば、お尻の筋肉がゆるむと、膝関節と足先が向いている方向が一致しなくなります。膝関節が内に向きすぎて、足首とあっていない状態。これでは、足先だけ60度に向けても脚全体の働きで骨盤が垂直にたちません。むしろ、脚に無駄な筋肉の張りが出てしまい、姿勢の安定性が低下します。

この場合、外旋筋の鍛錬法とストレッチの仕方を知って置くと良いでしょう。

ストレッチは、あぐらをかいた姿勢を取り、その状態から片足を持ちあげます。すると、持ち上げた側の脚のお尻がストレッチされます。

さらに、指圧する場合は、だれかに手で指圧してもらうか、低反発性の道具を使用します。まず、腰骨に手を当てます。そこから、斜め下、お尻の割れ目の方向に動かし、押してみると「痛気持ちいい」刺激がある箇所があります。

この周辺には多くの神経が通っており、つまりが起こると、お尻の外旋筋が収縮しずらくなります。そのため、指圧し、凝りをほぐすようにしてください。

最後に、トレーニングの方法ですが、おススメとして「バックキック」「ヒップアブダクション」があります。仰向けに寝て両ひざを立て、腰を浮かして、片足だけ伸ばすのがヒップアブダクション。横向きに寝て脚をあげるポーズがヒップアブダクションです。二つのポーズによってお尻を鍛えられます。

この二つのケアをすることで、外旋筋を強化されて姿勢がぶれにくくなります。

本当は、45度に開くのが正解!?

昔の弓道家は広めがお好き

ただ、前と横方向に押す力を均等ひ働かせたければ、「45度」に開くのが合理的です。というより、昔の弓道家は今よりも少し広めに立っています。

この直感は半分正解です。実は、昔の弓道家は現代弓道の足踏みのように、「60度」に踏み開いておらず、「八字」に開いているからです。つまり、少し広めに踏んでいました。弓を左右に大きく開こうとすると、そうなることがわかります。

そのため、昔の弓道家みたく豪快にしっかり引きたい場合はこっそり広めに踏んでください笑。この方が、引きやすいのは間違いありません。

半丁字の足踏み

半丁字の足踏みをやってみよう

また、弓の射型を整えるときに、思い切って足を広く踏んじゃうのもありです。それが、「半丁字」の足踏みという踏み方です。普通の足踏みと半丁字の足踏みの違いを書くと

普通の足踏み:両足先を均等に60度に開く

半丁字の足踏み:左足を広めに、右足を狭めに踏む(このとき、両足先は一直線に揃えるようにする)

この方法は、昔の弓道書籍にも多く紹介されています。

・教本二巻の千葉範士、教本三巻の鈴木伊範士は足踏みの説明として、「左足を広く、右足を狭く踏む」半丁字の足踏みの説明があり。

・尾州竹林派の魚住範士の射法説明においても、半丁字の足踏みの説明あり

・吉田能安氏の弓の道でも「足踏みで、強い弓を引く場合は右足を少し狭く踏んだ方が良い」と説明あり。

半丁字の足踏みには、二つのメリットがあります。

一つが「左肩が下げやすくなる」ことです。これによって、弓を押しやすくなります。

広く踏むと、より左側のお尻を締める筋肉が締まり、肩が下がって姿勢がブレにくくなります。よく、弓引いているときに左肩が上がってしまう人っていますよね。この問題は、半丁字の足踏みを行なった方が解決できます。

左肩の詰まった場合は、左肩自身ではなく「左足」から変えちゃった方がいいですよ。実際、左肩だけ下げようとしてもなかなかうまくいきませんから。弓がうまく押せない時はこの手法は有効です。

次に、「右肩の後ろに引ける」のを防げます。

右足を狭く踏むことで、肩の関節が内側に巻かれて、右肩が後ろに引けなくなります。先ほどと同じですが、弓を引いているときに、左肩が上がったち左胸が前方にでる時があります。これは、「右肩が後ろに引けちゃっている」状態ですね。そこで、右足を狭く踏むと、この問題が解消されます。

ただ、半丁字の足踏みにはデメリットがあります。一つが、左腰が外に逃げて右肩が前に出すぎてしまった場合。こうなると、右肩が上方に上がりすぎてしまって、弓を大きく引き込めない、または後ろ狙いになってしまうというデメリットがあります。

こうした内容して、姿勢が崩れにくい足踏みを実践してみてください。次は、胴造りの内容を勉強して、より弓を引きやすく姿勢を整えていきましょう。

胴作りで行う内容をまとめる

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