足踏みの体重の乗せ方は足ではなく「首」を使う

みなさんは足踏みのときにどのように上体の体重を乗せているでしょうか。本をみると、適切な重心の位置が説明されています。

それらの説明は結果的には正しいです。しかし、重心という言葉にとらわれて、体を不自然に傾けようとすると、姿勢の崩れにつながります。

ここでは、本に書いてある重心の説明によっておこる弊害と正しい足踏みでの体重の乗せ方について解説していきます。まずは、以下の動画にて、内容をご確認ください。

母指球に体重を乗せようとすると、姿勢が崩れる

弓道の書籍では、「足踏みでの重心は母指球に乗る」と説明しています。しかし、本に書かれてある通り、足踏みを乗せようとすると姿勢全体はどうなるでしょうか。すると、人によっては以下のように足裏に体重を乗せることがあります。

・骨盤を前傾させて、足裏の重心を前方に移す

よく重心の置き方は「拇指球に体重を乗せましょう」と指導されます。体をちょっと前に倒す感じにして、つま先にぎゅって体重を乗せます。このとき、身体では、骨盤から上半身が折られて、前傾した状態になっています。このように体重を乗せると、つま先に強い圧迫感が残ります。

もし、このような状態で、射の動作を行おうとすると、打ち起こし以降で姿勢が崩れてしまう可能性があります。なぜなら、骨盤を傾けて体重を乗せようとすると、必要以上に足裏に重さが乗りすぎてしまい、足の指先が強く圧迫されるからです。

例えば、手のつま先同士、親指と中指、薬指をギュッとつまんでみてみましょう。すると、手先だけではなく手首にも力が入ってしまいます。その結果、肘、腕の筋肉を働かせることができなくなってしまうのです。そこで、「拇指球に体重を乗せましょう」の重心の乗せ方をします。拇指球の乗せようと、体を倒し気味にすると、足裏の前方が圧迫され、自然とつま先に力がこもる姿勢になります。

すると、つま先の力みに付随して足首、太もも裏側、背中の筋肉にも力が入ってしまいます。つまり、母指球に体重を乗せようと意識しすぎると、脚の筋肉に必要以上に力みが起こってしまいます。これによって、射の最中に、上半身に強い緊張が起こります。よって打ち起こし以降、姿勢が崩れてしまうのです。

足裏全体に均一に体重が乗るようにする

そのため、足裏の重心は、教本二、三巻では、全体に均一に乗せるように説明されます。

高木範士:ふんわりとぴったりと大地に吸い付くようにする

千葉範士:爪先とか、踵とか部分的に力を入れるのは変則的

宇野範士:中くぼみのゴムが床面に吸い付くように

佐々木範士:足裏を検べてみて、どこか特別なところに力が入るとその足踏みは失敗

(弓道教本2、3巻から引用)

なぜ、このように、立ち姿勢では、足裏全体に体重が乗っているのが良いでしょうか?それは、足裏の体重がしっかり乗ると、上半身に関わる関節(胸部、肩関節、首関節、頭部など)の安定性が高くなるからです。

これは、以下のように例えられます。東京タワーは四本の脚によって、塔全体が支えられています。しかし、その中の二本の脚先を5ミリ短くしたとしましょう。すると、塔全体は大きく傾き、頂点は大きく元の位置からずれてしまいます。

一見、5ミリ短くなったことは小さいことかもしれません。しかし、それによって、及ぼされる頂点のぐらつきは大きいものといえます。これと同様のことが人にもいえ、正しく姿勢を保つ際には、足裏の接地面が重要な意味を持っています。このことを、魚住範士がまとめた尾州竹林の射法書の説明には「墨さしの準」とも説明しています。

自分から、上半身を傾けて母指球に体重を乗せてみてください。確かに上体を前に傾ければ、母指球に圧力がかかります。しかし、上半身を傾けようとすると、骨盤が前に傾きすぎてしまい、背筋が強く張った反り腰の姿勢になります。弓道の世界では「五胴(反る・屈む・掛かる・退く・中胴)」と呼ばれる5種類の胴体の据え方があります。この中で背中が反った「反る胴」の姿勢は、近的に向かない射といわれています。

五胴の中で、近的に適している胴づくりは「中胴」といわれています。もし、「中胴」を構築したいのであれば、体を前に傾けて、自分から体重を母指球に乗せる立ち方をやめなければいけません。そのため、母指球に体重が乗る足踏みの姿勢とは、自分から乗せるのではなく、結果として母指球に体重が乗るものと解釈する必要があります。

自然と母指球に体重を乗せる「首」の使い方

そのため、足踏みの重心は自分で乗せるのではなく、自然と乗るように姿勢を整えることが大切です。そこで、拇指球に重心が収まる姿勢を作ります。まず、自分の首の後ろを上方向に伸ばしてください。次に首を伸ばした状態で、肩を楽に落とします。

このときに、「首の後ろを伸ばす」の意味がわからない場合、アゴを引き、うなじの筋肉を伸ばすことを行うだけで問題ありません。アゴを引き、両肩を落としてください。すると、肩の上部の筋肉に無駄な力みがなくなります。この姿勢を取ると、足裏全体に体重が乗るようになります。

この姿勢を構築することができれば、近的の射において適切な「中胴」の胴づくりを構築できます。

そして、この首の後ろを伸ばす意識を切らさず、ほんの少しだけ体を前に傾けるように、「目線」を少し下げます(約4M先といわれています)。すると、体重がほんの少し足裏の前方に移り、土踏まずのやや前方あたりに落ち着くようになります。このように、必ず頸椎を上方に伸ばし、背骨に無駄なねじれや湾曲がないようしましょう。これにより、重心が強く前方に行かないようになります。

古来弓道家の多くが、首を伸ばすことを重視している

それでは、昔の弓道家は足踏みにおける姿勢はどのように説明しているでしょうか。教本二巻を引用すると、多くの弓道家が頭部の位置を正す重要性を説いています。

例えば、教本二巻の千葉範士、神永範士、宇野範士は、足踏みの際に「項(うなじ:首の後ろ)を伸ばすこと」を説明に載せています。他の先生の中には、足踏みにおいて「天地高く」という言葉を引用しています。このような文章も、足踏み、胴づくりにおける頭部の位置を表現しており、できるだけ頭部を高くし、首の後ろを伸ばし、背骨が前や後ろに無駄な湾曲がないことを説明しています。

さらに、心月謝儀の流派を作った梅路見鸞氏の射の説明を見ると、「頭居(かしらい)」と呼ばれる動作があります。これは、射における姿勢の整え方の中で「頭部の据え方」を説明したものです。このように、足踏みでは、足の開き幅や両足の幅以外に、頭部の位置を正しく整えることも重要であるといえます。

その他に、宮本武蔵の五輪の書でも、「少し、おとがい(アゴ)を引いて、項を伸ばす」という説明文があります。このように、他の武道関係者であっても、適切な姿勢を構築する際に、「首の後ろ」を大切にしています。毎回の射で常に意識して、行うようにしましょう。なお、この母指球に自然と体重の乗った状態は射の最中、残身まで続けます。

自分から拇指球に体重を乗せようとすると、ほとんどの方がつま先付近に圧力がかかりすぎてしまいます。 そこで、背骨をほぼ真っすぐにただし、必要以上に上体が前に傾かないように、「首を伸ばして肩を落とす」ことが大切となります。これによって、打ち起こし、引き分け以後姿勢が崩れにくく、矢どころの乱れを抑えることができます。

次に、首を伸ばすことをきちんと理解できたなら、次に下半身の筋肉の使い方を理解しましょう。そのためには、「なぜ、足踏みの角度は60度くらいが適しているのか」ということを理解するだけで問題ありません。

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