教士審査論文 「射品射格の向上を図るためにどのような修練が必要か述べよ」

<解答例2>
弓道教本に現代弓道の修練の理念として「射品射格の向上が掲げられ、体配と射法射技が渾然一体となり、品格のある射が生まれなければならないと記されています。

普段の稽古の時、先生から射品射格は行射を行う中でその中から醸し出される風格や雰囲気を指すもので、一射一射を大事に真剣に行い、永年の積み重ねによって、その射は見る人の心に感動を与え、品格のある射が生まれるものと指導を受けているところです。

日頃の稽古では、仕事の帰りに着衣も整えず、立射で矢数をかけ的中にこだわり、つい安易な練習から、回り道を重ねてきましたが、今回特別臨時中央審査で表題の論文題をいただき、改めて今まで射品射格にどのように取り組んできたか、又今後どのような稽古をして学んでいけば良いのか考えると同時に、どれだけ課題に近づけるか、弓道教本の三位一体(身、心、弓が合一)の考えおよび講習会時の演武や談話で見聞したこと等をもとに自分の考える「射品射格の向上」を述べてみたいと思います。

射品射格の向上について
1、気は技に優先する。
品格のある射行を実現するには、身、心、弓の三者が合一し一体化が必要で、身体の安定、心気の安定、弓技の安定が合一して、一体となることです。高位の段になるに伴い、心気の安定との対決が難しい問題で、避けることのできない弓道の技です。
弓道教本に「気は技に優先する」とあるように、欲望や執着心、動揺等で平常心を失い、技は充分磨き備えてきたのに、このような筈ではなかったと思う経験からも「技と心」は一体不可分であることは明らかです。正しい信念のもと心気の充実を務め、不安や弱気などを払しょくする強い精神力が必要です。技と心の原動力となるものは本人の意志の働きであり、誠を尽くし、心の安定、気力の充実を養う修練が必要です。

2、稽古中も基礎、基本を正確に行う
射を行うにあたって、その基本となる姿勢や動作は「真は行を生じ、行は草を生ず」と言われています。これらの動作は経験を積み重ねることにより体が覚え、無意識のうちに行えるようになります。しかし、慣れるに従い、段々と息合いが伴わない雑で手抜きの動作になりがちです。このため、常に息合いに応じた動作を心がけ、中医すべきチェックポイントを設け、第三者に見てもらい、稽古中も基礎基本を正確に行うことが大事です。

3、適切なアドバイスが得られる環境を作る
自分の射の欠点を自分で見つけることは難しく、射品射格の自己評価は不可能に近く、本人の技量の感覚に頼るのが精いっぱいです。稽古をするにあたり、良き師に出会い、良き弓仲間をつくり、道場に通うのが楽しく弓に引くのがうれしく、又時には批評を述べ合い、お互いに向上しようと切磋琢磨し、審査後の評価を確認しあい、自分なりの目標を持って日々進歩するためにも、適切なアドバイスが得られる環境作りが大事です。

4、講習会などに参加して知識を得る
現在、宮崎県教錬士会では年二回、中央から範士の先生を招き講習会を開催しています。講師の先生の模範演武や弓道修練に対する取り組み講話は知識を得るのに最高の場になります。射の修練のみならず、論理的、科学的な射法射技の説明や見取り稽古を通じて、気迫に満ちた射礼を目前で体験でき、又適切な指導を受ける貴重な機会となり、自分自身の弓道に対する認識を高める糸口になるからです。習ったことを反復練習し更に磨き,そして光り輝くように、又大会への参加は心身を鍛える場にもなることから、各種の講習会などには積極的に参加すべきです。

5、射技は基本を堅持し、稽古は真剣に
射法八節を正確に守り、息合いに合わせた所作で心気の働きを効かせ、正しく行射することが射を向上する近道です。大三から流れるような運び、会相の安定、無限のこもった残身、「素晴らしい射」、「味わいのある射」見る人がうなづく射を実行できるように基本を堅持し、さらに正射必中を求めて自分の骨格体格にあった射技の工夫も必要です。射礼の稽古を繰り返し行い、今行う稽古が次の本番に活かされ引き継ぐように日頃から同じ稽古をして、一瞬一瞬が勝負のつもりで稽古することを心がけたいものです。

3、結び
射品射格を向上させるには自分自身の品各を高めることにあります。日常生活の中においても健康管理、服装、髪型、姿勢等、道場内では先輩後輩との相互の挨拶、着物の着装等、常に心がけなければならないことが多数存在します。技を磨くとともに安定した心で、技と心の原動力となる気の働きと気力の充実を図り、そして自己を磨く、人にかつことによりも誠に尽くす「心の在り方」が射品射格の向上につながることはいうまでもありません。
今、早気で弱気自分の心との闘いの真っ最中です。一射絶命、的と対決する心構えを持ち、一射一射に魂を込めて、気力の充実が続く限り戦いぬく弓道を目指したいと思います。
この先、幾度かの失敗や挫折を繰り返すことが予想されますが、自分の弱点や悪癖を修正できない現状を反省し、自分なりの修練を目標に一歩一歩ずつ前進できるように頑張っていきたい。

参考文献弓道教本(全日本弓道連盟)

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