ちくりん解説:体のバランスを保ち、腕の筋肉を使わず開く本質的な考え方

1 読者を一瞬で引き込む「水鳥の心」の教え

弓道の稽古を続けていると、多くの人がある壁にぶつかります。指導者からも「悪くない」と言われる。けれども、的中が安定しない。ある日は十射九中なのに、次の日は半分も当たらない。自分の身体なのに、思うようにコントロールできないもどかしさ。この感覚に覚えがある人は少なくないはずです。

さらに強い弓に挑戦しようとすると、状況はもっと厳しくなります。弓を開こうとした瞬間、肩や腕にぎゅっと力が入る。背中が丸まり、顎が上がり、せっかく作った姿勢がばらばらに崩れてしまう。なんとか形を保とうと胴体をガチガチに固めると、今度は弓を開く動作そのものがぎこちなくなり、ますます的中から遠のいていく。一体どうすればいいのか。

その根本原因は、多くの場合「安定」と「柔軟」を別物として捉えてしまうことにあります。姿勢を安定させるためには

・身体をしっかり固めなければならない

・しかし弓を開くためには身体を動かさなければならない

この二つが矛盾してしまうのです。固めれば安定するが動けない。動けば崩れてしまう。この二項対立の考え方にとらわれている限り、本当の意味で強い弓を美しく開くことはできません。

尾州竹林弓術に残された「船の上よりも水鳥の心を理解せよ」という教えは、まさにこの矛盾を解き明かす鍵となります。

船は一見すると頑丈で安定しているように見えますが、波が来れば簡単に揺れ、大きな波には転覆してしまいます。

けれども水鳥はどうでしょう。小さな身体でありながら、波に揺られても自在に対応し、水面を悠々と進んでいきます。

図:船と水鳥が波に揺られている様子の対比図。船は硬直して転覆しかけており、水鳥は柔軟に波に対応している様子を描く。

水鳥は波が来たときに抵抗するのではなく、波の動きを受け入れながら、身体の中心を保ち続けます。揺れることを恐れず、揺れたとしても元に戻る力を持っている。

この姿にこそ、弓道の本質である「安定しながらも柔軟に対応する」身体の使い方が凝縮されています。

あなたがもし今、肩や腕の力みに悩んでいるなら。

強い弓を引くたびに姿勢が崩れてしまうなら。的中が安定せず、自信を失いかけているなら。

この水鳥の心を理解し、安定と柔軟を一致させる胴作りを身につければ、

腕の力に頼らず、肩とお腹の働きで自然に弓を開ける未来が待っています。

そこでは、強い弓を開くことが苦しみではなく、むしろ心地よい伸びやかさとして感じられるでしょう。あなた自身の身体が、水鳥のように波に揺られても戻れる柔軟な安定を手に入れるのです。

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