日置流では、「詰め合い」は入るための条件を四つに分けて、延び合いは引く量とエネルギーの関係で説明しています。
ここでは、矢勢、威力の強い矢を出すために、物理的な方面から「詰め合い」「伸び合い」を解説していきます。
詰め合いに入る4つの条件
三分の二より呼吸をはかり、左右に引き分け、約身長の半分引きます。
初歩の内はこれに指の巾三本くらいを加えた長さを引く
矢が頬骨の下につく
狙いは的につく
弦は胸につく
この四つの条件が同時に(正しく引いたときは自然に同時となるが、また初めは意識して同時に付くごとく稽古する)完了した状態を詰め合いと言っています。
伸びあいとは物理的に理解する
前述のごとく、詰め合いより力を尽くして押し引きし、足踏みにおいては下肢全体爪先まで力が充実します。胴づくりにおいて背筋を真っすぐに、下腹丹田に気力充満し、後少しの押し引きの力で離れに達する状態に来ます。
これを「やごろ」と言います。そして、この詰め合い→やごろに達する仮定に注入するエネルギーが大きいほど、結果として、貫徹力、矢速に優れた矢を発射することができます。
この際の力の使い方を縦軸に力、横軸に矢束を表します。A点を詰め合いとすると、ABは延び合いのために引いた矢束になります。C,Dはそのために使われた力であり、ABCDの四点で囲まれる面積はそのために費やされたエネルギーになり、これは、そのまま弓の弾力として蓄えられたエネルギーになります。
AB,BDが大きくなるほど、ABCDの面積がより大きくなり、矢は早く、強く、飛びます。
このAB、C,Dを大にするべく、延び合いでは台形を大きくすること、つまり矢束を大きくとることが望まれています。他流ではこれを深い会といいます。
A→B点に至る間、矢束がじりじりを延びてゆき、文字通り延び合いが眼に見えます。一部の射手はこれを初心者のやることだと言いますが、大きな延び合いを作るためには終生行うべき技です。
しかし、矢数がかかると、これが身に見えることが少なくなり、上手になれば、延び合いは眼に見えてはいけないということではりません。
引く矢束、引かぬ矢束(不引矢束)、ただ矢束(唯矢束)
引く矢束とは、詰め合い以後、ジリジリと矢を押引きして、矢束が伸びて発射に至ることです。引かぬ矢束というのは弓より消費される力と全身で補う力がほとんどつりあっている状態です。
ただ発射の機をつかむための、きわめてわずかな力が弓の力に上回って引かれる筆舌に尽くしがたい状態です。
ただ矢束は詰めに入ったことは入ったが、引きもならず、ゆるめもならず、ただ現状を維持して固着した弓の引き様です。
身に余る弓を初心者が弾いたときに陥りやすい病癖であるとともに、多年経験した射手が会の真意を知らず時間が長い
のを良しとしてただこらえるため、ただ矢束になっていきます。ただ矢束になることは非常に多く見かけるので、注意すべきです。