【会】なぜ、95%の人は狙いが外れるのか?狙いは3つの要素を見ないといけない

狙い目の位置は合っているはずなのに、なぜか離れで手元がブレる。そんな悩みを持つ中級者の方は多いのではないでしょうか。左手の位置を的に合わせる、その一点だけに集中しても的中率は上がりません。実は、正しい狙いには三つの不可欠な要素があり、そのバランスが整って初めて自然な的中が生まれるのです。

結論から言えば、狙い目は「狙いの位置」以外に、二つの大切なことがあります。それが「目付」と「最後の伸び」です。つまり、狙いとは単なる静止した点ではなく、「左手で見る位置」「その位置に収まるまでの途中の軌道」「その位置に収まったあとにその拳が真っ直ぐに伸ばしやすいかそうでないか」という三つのプロセスをすべて観察しなければなりません。

なぜ、位置を合わせるだけでは不十分なのでしょうか。その理由は、狙いとは視覚情報だけでなく、身体全体の張力と方向性が一致した結果として現れる「物理的現象」だからです。左手の位置が的に重なっていたとしても、そこに至る軌道が力んでいれば、会で身体の伸びを止めてしまい、結果として離れで反動が生じます。

今回のポイント* 狙いを構成する三要素(位置・軌道・伸びやすさ)を網羅する
* 「目付け」は視覚ではなく胴体の張力によって決定される
* 強弓の圧力を利用し、手先の操作を排除した「真の軌道」を身につける

 

狙いの三要素:なぜ「点」で捉えると外れるのか

弓道における狙いとは、単に左手を的の方向に置く作業ではありません。多くの人が陥る罠は、視覚的に「的と拳が重なった」瞬間に満足し、そこで身体の運動を止めてしまうことです。しかし、射の本質は運動の中にあります。

まず「左手で見ている位置」はあくまで結果に過ぎません。重要視すべきは、そこに至るまでの「軌道」です。打起しから引分け、会に入るまでの間に、拳がどのようなルートを通ってきたかによって、会での筋肉の強張りが決まります。もし軌道が力んでいれば、その歪みは必ず会での「詰まり」として現れます。

そして最も見落とされがちなのが「その位置に収まった後に、真っ直ぐ伸ばしやすいか」という視点です。位置が合っていても、そこが骨格的に無理のある位置であれば、離れの瞬間に手元は必ずブレます。狙いとは、離れという爆発的な解放の瞬間に、手が真っ直ぐに飛び出していくための「発射台のセッティング」なのです。

解剖学・生理学・物理学から見る「狙い」の正体

この三要素がなぜ不可欠なのか、科学的な視点からその理由を解き明かします。

【解剖学的視点:骨格のロックと解放】
狙いの位置に拳が収まった後、そこが「真っ直ぐ伸ばしやすい場所」である必要があります。肩関節や肩甲骨が適切な位置にセットされていないまま左手だけを的に合わせると、関節がロックされた状態になり、離れの瞬間に筋肉の強張りが爆発して手元のブレを引き起こします。骨格が正しく整って初めて、無限の伸びが可能になります。【生理学的視点:感覚受容器と方向性】
目付の本質は、目を使うことではなく「胴体の伸び」にあります。人間には、筋肉が引き伸ばされている方向に意識が向きやすいという特性があります。胴体が的に向かって適切に伸びていれば、脳はそれを「正しい方向」と認識し、余計な修正動作(力み)を指令しません。逆に胴体が縮こまっていると、視覚的に位置が合っていても、脳は不安定さを察知して手先に力を込めてしまいます。【物理学的視点:ベクトルの収束】
狙いとは、弓の反発力と身体の引き裂く力が拮抗する「張力の均衡点」です。「収まるまでの軌道」が重要なのは、力のベクトルが的に向かって一直線に積み上がっている必要があるからです。軌道が円を描きすぎたり、外側に膨らんだりすれば、会での張力は分散されます。最短距離の軌道を通ることで、離れの瞬間にエネルギーが一点に集中し、矢は真っ直ぐに押し出されます。

### 弱い弓では「狙い」の正解は分からない

解剖学的に正しい姿勢を土台にすれば、誰にでも共通する「しっくりくる位置」は必ず存在します。しかし、多くの人がその位置を見失うのは、使用している道具に原因があります。

私はかつて54gの重い矢を使い、30kgの強弓を引いていました。この極端な条件下では、わずかな姿勢の崩れや軌道のズレが、即座に「引けない」という物理的な拒絶として現れます。

13キロや15キロ程度の軽い弓では、手先の筋力だけでコントロールできてしまうため、本来あるべき「弓の圧力による軌道の安定」が理解できません。 腕の圧力を一切感じず、骨格の張力だけで弓を支える感覚は、強弓という高い負荷の中でこそ磨かれます。

怪我や事故を過度に恐れて強弓を避けていては、一生かかっても本物の狙いを身につけることはできません。それは形を真似ただけの的に当てる競技であり、身体構造から湧き出る力で自然に弓を開く「射即立禅」の境地とは無縁のものです。

### 目付けを変えれば射は劇的に変わる

具体的に意識すべきは、打起しから引分けにかけて、胴体の「大の字」の伸びを止めないことです。

尾州竹林弓術書などの古典にも記されている通り、身体の拍子を合わせることが肝要です。左手の拳を的に向けるのではなく、胸の中央から両手、両足へと放射状に広がる張力を感じてください。その張力が的に向かって真っ直ぐに突き抜けているとき、あなたの視界に入っている左手の位置こそが、真の狙いとなります。

弦の収まりが悪い、離れで弦が顔を打つといった悩みも、すべてはこの「軌道」と「伸びやすさ」の欠陥に集約されます。

### 悩みへの処方箋

Q:狙いを確認しようとすると、どうしても会が短くなってしまいます。
A:それは「点」で合わせようとしているからです。狙いとは引分けの動作そのものです。軌道が正しければ、会に入った瞬間に狙いは完成しています。止まってから合わせるのではなく、動きの中で的を捉える感覚を養いましょう。Q:動画内で見せていた「54gの矢」のような重い道具を使うメリットは何ですか?
A:道具に「教わる」ためです。軽い道具は自分の欠陥を隠してしまいます。重い矢や強い弓は、あなたの「狙いの軌道」が少しでもズレていれば、物理的に矢が飛ばない、あるいは弓が開けないという明確なフィードバックをくれます。自分を甘やかさない環境が、最短での上達を生みます。Q:的中が安定しません。何から見直すべきでしょうか。
A:まずは「足踏み」から見直してください。土台が崩れていれば、どれだけ左手で狙いを修正しても無駄です。胴体の伸びが垂直に立ち、そこから水平の張力が生まれる条件を整えることが先決です。

 

身体構造に従えば、的は自ずと射抜かれる

弓道における狙いとは、精神論でも単なる視覚訓練でもありません。それは、解剖学的に正しく骨格を使い、物理学的に効率の良いベクトルの上に自分を置く作業です。

「形を作る」ことをやめ、身体の張力が導くままに弓を開いてください。左手の拳が、最も心地よく、最も真っ直ぐに伸びられる場所に収まったとき、的中は「当てるもの」から「当たるもの」へと変化します。

明日からの稽古では、左手の位置を微調整するのを一度やめてみてください。代わりに、自分の胴体が的に向かってどれだけ心地よく伸びているか、その一点に全神経を集中させてみましょう。

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