今回は、尾州竹林弓術書に記載された足踏の内容を解説します。
・蜘蛛の曲尺について
・扇の曲尺
・闇夜の規矩について解説
まず、一つの体の使い方について覚えます。そしてそれら一つの動作に足踏の教えが全て詰まっていることを理解します。
古くの文献の解釈が適切かどうかは次の項目で判断します。
・その動きが解剖学的に筋肉に負担なく行えるか
尾州竹林弓術書の冒頭の内容に「水のような柔らかなものでも鉄を射抜く強さを持つ」と記載されています。水とは「あなたの身体の状態」を自然に喩えたものです。つまり、筋肉・神経・血管に余計な緊張なく、伸び伸びしている状態を「水」と表現されます。
・その動きによって、弓を強く開けるようになるか
同様に、柔らかい筋肉の動きによって「力強い射(矢飛びが速く強い・重い軽い弓共に開ける)」が実現できるように、考える必要があります。その教えによって、自分の筋肉は柔かい状態を維持でき、実際に楽んい強く弓を開けたら、適切であると判断します。
・その動きが余計な意識なく行えるものか
では、一つの動きによって、様々な奥深い教えを身体で覚えて「柔らかい姿勢と強い射」を身につけていきましょう。まずは、足の踏み方を変えていきます。
では、早速足踏みで覚えるべき身体の使い方を教えます。
目ではなく、腰で的に合わせる
もう少し詳しく言います。この蜘蛛の曲尺で言いたい内容は、
・的に体を合わせる時、目ではなく腰から合わせるようにしないといけない
です。
足踏みでは、「的の中心線に左右のつま先を合わせる」ようにします。そこで、ほとんどの人は自分の目で的から線をイメージして、その仮想線に左右の足先を合わせるように立ちます。
この方法だと正しく的を見れていません。
なぜなら、目で見てから足先を開こうとすると、必ず姿勢が悪くなるからです。
自分の目で的から中心線を引いてから体を動かそうとしてみてください。
そうすると、頭が前に出ているのを
感じられませんか?
中心線をイメージすると、目に力が入っているのを感じられませんか?その眼球に力が入ってから体を開こうとしても、特に、頭が体に対して前に出ている状態から足踏みをしても、本当にまっすぐに狙いを合わせたことになりません。
なぜなら、良い狙いにはまっすぐな姿勢が必要不可欠だからです。少し猫背な状態で的に合わせるのと、まっすぐな姿勢で的に合わせるのでは、視覚的な誤差が少ないです。
だから、合理的に狙いより先に「姿勢」を先に作る必要があります。
今日の弓道の足踏み動作を振り返ります。
普通の足踏。
1.的を見て中心線を自分の場所までイメージする
2.その線上に左足先を合わせる
3.右足を踏み開く
このようにすると、1的から中心線を引くときに頭が前に出やすくなり、少し猫背になります。やや猫背の状態で左右の足の位置を決めてしまうと、そこから背中を真っ直ぐ伸ばすのは難しくなります。そこで、
蜘蛛の規矩の足踏み
1.最初にお腹を開く
2.お腹を開きながら左足を開く
3.その後に的と体の中心を揃えるように引く
このように、お腹を開き姿勢を伸ばた後に目で的に合わせるようにしてください。姿勢を伸ばすのと、的に合わせるのを同時に行うと、あたかも蜘蛛が「ここ!」と決めて糸を出す動きと似た感覚を得ることができます。
このように、狙いをあわせるときは、目からではなく、体を伸ばして瞬時にあたかも同時に行うように意識すると自然に足踏み動作に入れます。
■扇の規矩、お腹から開くと太ももが自然に外旋する
次に、お腹から開いて足を開くと自然に太ももが外に回ります。この動きあたかも扇を描くように足が開くので、「扇の規矩」と言います。
この時の足先の開き角度は、60-70度あたりと考えられます。今日の弓道で足先の角度が60度が基礎とされているのは、この扇の規矩から来ています。
しかし、注意することがあります。足先から60度に開いてはいけません。ここでの正解は、お腹を開いて少し足先を浮かせば、自然に太ももが外旋します。その結果、60−70度開くように足先を開かないといけません。
そうしないと、胴造が崩れるからです。
左足先を開くときに、60度に決めようとします。そうすると、左足に一回体重がのります。その後に、右足先を左足先に合わせて開きます。
この際に姿勢が崩れます。少し左腰が後ろに引けるか、右肩が前に出てしまう、そこで姿勢が崩れます。
足踏みの各動作には、基礎の内容を合わせようとすると、大元の姿勢が崩れることは多々あります。あくまで姿勢を第一に大切にし、姿勢を伸ばすのを第一優先にし、その結果基礎の内容ができるようにしましょう。
この時の正解は、左足先ではなく、まずお腹を開きます。次に、左腰を少し真横に開くようにします。こうすると、自然に左足先が自然に外に開きます。
扇の規矩は60度に足先を決めることではありません。