阿波研造も実践する「弓腕」の作り方を解説

これまで、呼吸をし、胸を広げて、腕の深部に弓の圧力がかかるようにすれば、左親指付け根で弓の圧力を適切に受けられるになると解説しました。

次に、阿波研造が実践する弓腕の作り方を解説していきます。

この内容ができれば、手の内の作り方含め、左腕全体の押すフォームが完成します。

まず、

弓腕とは?

会の時の「左肘の皿が垂直に向いた状態の腕」のことを差します。

弓道教本三巻の高塚範士がこの腕の状態を紹介しています。

弓道教本三巻「会」の項目より引用

この腕のフォームを形成すると、弓を押しやすくなります。肘が垂直に立つと、弓の圧力がかかったときに左肩が上がりにくくなります。

一方、肘の皿が90度に向かないと弓を押しにくくなります。弓の圧力がかかると前腕が自分の方向に戻ってしまうからです。

だから、弓を引く時に、左腕の肘の皿は90度に向けるのが適切とよく指導されます。

肘の皿を直接動かしてはいけない

しかし、多くの人は左腕を意識的に90度に向けようとします。そうすると、左肩が上がってしまいます。

だから、阿波研造の強い肩の作り方から、適切な弓腕を作りましょう。

阿波研造の伝記「弓聖」にこのことが記されています。

両手を上に向けて開くと合理的な立派な肩ができる。それを拳を縦に返したものに弓を持たせて行けば、即ち引き取らせれば、立派な合理的で最も強い肩となる  (池澤幹彦著 「弓聖」より)

この文章の内容を実践してみましょう。

両手を上に向けて開くと胸が広がりますね。両肩が下がった姿勢を作った後に、拳を縦に返してください。

これで弓を持って引いてみてください。自然に左肘が縦に向きます。

この状態が最も強い肩として完成します。

強い肩ができると結果的に、左肘も垂直に回ります。

左肘は自分で意識して回さず、右肘を動かしながら垂直に向けるのが自然です。左肩に負担をかけずに左肘が楽に回ります。

肘を回すのにも姿勢が大切

ただし、一つ注意点があります。

この弓腕の作り方は、胸を開いた構えを作らなければできません。前屈み姿勢を構築してしまうと、逆に左肩が上がってしまいます。

例えば、全弓連でよく言われる「足踏み60度、ひかがみを伸ばす、拇指球に体重を乗せる」姿勢を作ってください。

体重を拇指球に乗せると、体の重心が前方に移ります。すると、腰か肩のどちらかが前に行きやすくなります。

腰や肩のいずれかが前に出ると胸が開きません。

そのため、弓腕を自然に作りたい場合、最初は連盟で教わる足踏みを実践してはいけません。

まずは、足幅と開き角度を広くして、体重を後ろ気味に乗せて稽古をします。そして、左腕が自然と伸びるようになってから、連盟で教わる足踏みを実践するようにしましょう。

胸を開いて、左腕が自然に伸ばすことを覚えないと、連盟の足踏みや胴造りの教えは活かせません。

猿腕の場合はどうするか?

ちなみに、猿腕の方は必ずしも肘が垂直に向いている必要はありません。

先ほど紹介した、胸を開いた姿勢を構築したら、右肘を最大限後方に引き続けましょう。おそらく、猿腕の場合、肘が90度まで向かないかもしれません。

それで問題ありません。あくまで右肘を後方に引き続け、その結果向く左肘の角度が適切の角度と判断しましょう。

そして、掌の三箇所でしっかり支えられるようにしましょう。むしろ、猿腕の場合、無理に90度に向けようとすると、左肩が上がってしまう可能性があります。

手の内は「左手の状態で体の状態を観察するもの」です。無理に左手、腕を単独で動かす必要性はありません。

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