審査を受かりたい、昇段審査合格したい、体配のコツを知りたい、綺麗な姿勢で弓を引きたい。。。こんかいもこのような悩みを解決する方法について解説していきます。
体配稽古しているときに、二つの悩みを抱えている人がいます。
・離れるときに弓手が落ちてしまう
・体が力んでしまい、射がぎこちない感じになってしまう
あるいは、「美しい型」「美しい姿勢」で弓を引きたいと思う人もいるでしょう。このような「綺麗な姿勢」で弓をひく具体的な手法を紹介します。
簡単、簡単「少し強い弓」を使えば、問題解決できます。
今よりkg数を増やせば、どのような方も確実に実践できますので、明日から試すようにしてください。
今お持ちの弓より+3kgの弓を使ってみる
あなたの使っている弓が仮に13kgだとします。ならば、+3~4kg程度の弓を併用して使いましょう。
女性であれば、男性の弓をお借リマス。男性の場合、市販で3万円程度で手に入るグラスの弓をkg数を増やして注文しましょう(インターネットであれば、「楓」、店舗であれば練心が3万円以内で手に入ります。
これで、自分の持っている弓の準備完了。
次に、少し強い弓を用いるときは「巻き藁で引く」だけで十分です。
射場でキレイに引く必要は、全くありません。今使用されている弓で綺麗に引ければいいのだから。コツとすれば、少し強い弓を用いるときは、「少しだけ動作を速くする」ことを意識してください。
そうして、少し強い弓で3射程度稽古したら、元の自分の弓に替えてみてください。
お?え?なにこれ?めっちゃ軽いやん?おそらく少し強い弓使った後に元の弓に戻せば、前使っていた弓が「軽く感じられます」。
そうすると、今までより楽に引けて、綺麗な姿勢になります。離れでも、左腕がよく伸びて的方向に伸仕切りやすくなります。
綺麗な型で弓を引きたいと思ったら、綺麗な型を勉強し続ける必要は全くなく、強い弓を使えばいいのです。以下に、その理由を詳しく解説していきますね。
左手が落ちる問題も強弓を使えば解決できる
実際に、私も形のキレイな射を行うときはそうしてます(よほどのことじゃない限り、人様に見せたくないですが)。
通常の稽古では、28kg以上の弓を用いています。しかし、弓のkg数が大きくなるほど、左腕にかかる負担が大きくなるために、離れ動作の際に、弓手の力の方向を変える必要があります。
すると、弓道教本参巻の大離れ射法のように、左拳を左下に逃がすようにします。こうすることで、離れ動作で左肩の負担を大幅に軽減でき、細身であっても、強い弓を長く活用できます。
しかし、弓道連盟の主催する審査では、この引き方は求められていません。地方、連合、中央審査の審査基準に離れでは「弓手が下がらないこと」「弓返りの際に、弓のずり落ちがないこと」を求められるからです。
その場合、弓のkg数を減らします。例えば、20kgの弓を引いた場合、弓手の位置がぶれずに、離すことが可能になります。
なお、完全に左手を下げたくない場合は、さらにkg数を減らせばいいです。このように、強い弓できちんと稽古していれば、左手が落ちる問題は容易に解消できるのです。
ちなみに、この考え方は他の問題にも応用可能です。例えば、
右手首が手繰る→少し強弓使えば、右手首の力が抜け、真っ直ぐ伸びる
早気で困っている→少し強い弓を使えば、軽い弓に変えたときに胸の緊張が抜けて、会がもつ
いわゆる、綺麗な姿勢や型で引きたいと思ったら、少し強い弓を使えばいいのです。そうすれば、楽に弓を引けるし、姿勢も綺麗になってくるのです。
少し強い弓を用いて、射型が崩れることはあるか?
なお、弓道連盟の指導者の中には、「強い弓を使うと、引き方が崩れて癖になってもとに戻らなくなる」とお話しされる人もいます。
このようなことはあり得ないので安心して少し強い弓を用いてください。
「悪い癖がついてもとに戻らなくなる」場合は、15kgの弓を用いている人が25kgの弓を使って、その弓しか使わなくなってしまった場合です。併用ではなく、完全に引けない弓を無理して強い弓にこだわった場合です。
そうしなければ、少し強い弓を使って型は崩れないので安心ください。
200年以上前から整った弓の引き方の手法は確立されている
なお、今回の話は、特別な話ではなく、
昔の方は「強い弓を用いることで、整った弓の引き方もできる」ように稽古しています。つまり、結構王道な方法だったりします。
関口氏の書籍の「尾州竹林弓術書」の始中終法度の項には、弓の引き方のレベルや段階を5つに分けて解説しています。その中で、初期は「強い弓を用いて、鋭い離れや威力のある矢勢が出す」ことを考え、後に「弓のkg数を減らして整った弓の引き方を行う」と記載があります。
このように、きちんと強い弓を使って稽古をすれば、自然にkg数を減らして、動作一つ一つが整った弓の引き方も可能になるのです。
加えて、この文章には、「強い弓を使って稽古をせずに、整った弓の引き方だけを行っても射の深い部分まで理解はできない」との注記も書かれています。
そのため、強い弓で稽古もしないで、弓の引き方を駄目だししたり口出しすると、高い確率で言われた本人は間違った身体の使い方をしてしまいます。気をつけて、指導を受けている皆さまは。
必要以上に体を力ませたり、突っ張ったりしちゃいけない
なお、綺麗な姿勢で弓を引きたい場合、「無理に力を入れない、筋肉をつっぱらない」ことを意識してください。
例えば、綺麗な型で引きたい、いわゆる「左手を落とさず、整った弓の引き方を実現したい」場合は、
・左手を強く握って引こうとする
・さらに強く押そうと考えて、左腕を強く突っ張る
といったように、「握って手に力を入れる」「無理に左腕を突っ張る」ことはしないでください。このようなことをしても、結局離れで左手が下に落ちますから。
よく、連盟の指導者の中に、「押す力が足りないからもっと押して」と指摘する人がいますが、実際は強く押し込もうとすればするほど、左手は下がります。
腕を突っ張れば、会の最中は左腕は動きません。しかし、離れた際に、突っ張った左腕の力が抜けて、強く関節を固定した筋肉が緩み、左手も腕も下がります。
ずっとつっぱり続けて最後まで突っ張った状態を維持するのは不可能。なぜなら、筋肉は一度力を入れたらいつか緩むようにできているからです。
したがって、離れで左手を落としたくなければ、「強く弓を握りすぎる」「左腕を突っ張る」ことはやめてください。
高段者の離れで左手が落ちない理由
ここまでの話を聞いて、左手が下がらない原因はわかってきたと思います。最後に、高段者の左手が下がらない理由について解説していきます。
高段者の左手が下がらない理由は、「体格の割に、軽い弓を用いているから」か「上が弱い弓を用いている」からです。
私は体重53kgで30kgの弓を用います。しかし、連盟には、体格が大きい割には、13kgの竹弓を用いて稽古している高段者がいます。このような方は左腕にかかる負担がその人にとって少なすぎるんで、左手は落ちません。
あるいは、上が弱い弓を用いれば、弓もずり下がらないし、左手も落ちません。弓の握り部から上の部分を「上」、下の部分を「下」と呼ばれています。
今日の弓具は極端に上が薄くて開くのが容易な弓があります。こうした弓を用いれば、左手が極端に下に下がることはありません。
極論を言えば、「軽い弓を用いて上が弱い弓を使えば連盟のような整ったキレイな引き方になるのか?」と言われるかもしれません。そうかもしれないですが、私は全ての高段者に会って彼らの努力を見たことがないので、正直判断はしかねます。
ただ、軽い弓や上が弱い弓ばかり用いると、「弓の引き方が全くわからなくなってしまう」のは間違いないです。
整った弓の引き方は弓のkg数を変えると解決できます。しかし、強い弓を引くための具体的方法は「もっと強い弓を使う」しかなく、本人がたくさん勉強したり実践したりしてできるだけ身体に負担のない弓の引き方を研究しないといけません。
当然ですが、怪我もするリスクもあります。
ただ、こうしたリスクがある分「こういう押し方をすると肩の負担がかかる」「この引き方だと弓が引きにくい」ということがわかってきます。なので、弓の引き方は詳細に経験談を話せます。
しかし、13~15kgで左手が落ちない状態で引き続けても弓の引き方はなかなか勉強できません。
例えば、強い弓を使うと、「打起こしで親指の向きが平行になったら絶対に弓が引けない」とわかります。これは手首のむき、弓の力の方向、自分の腕の力の方向を書けば、容易にわかります。
しかし、13kgしか使っていないとそもそもこんな悩みに陥ることはありません。だから、教えられません。つまり、段をとれば取るほど、結果的に「弓の引き方の勉強をする」ことを放棄することにもなります。
だったら私は声をだいにして言います。どうせ綺麗な型を構築したいのであれば、軽い弓ばかりで自分が楽するのではなく、強い弓を使って結果的に綺麗な姿勢を構築していけばいいのでは?と
では、これまでの内容をまとめます。
・左手が下がらず、整った弓の引き方をしたいなら、少し強い弓を使う
・少し強い弓は巻き藁で行って、元の弓を楽に引けるようにする
・左手を強く握りすぎたり、左腕を突っ張ったりすると、余計に左手が下がる危険があるためしないようにする
この三つを意識して稽古されてみてください。左手も下がらず、見た目整った射を実現することができます。