弓道の技術を向上させるために、大きく弓を引き分けて、鋭く離す必要があります。このように技術を高める近道は、「少し強い弓を併用して稽古する」ことです。
今持っている弓よりも、+2,3kg強い弓を探し、弓を引いてみましょう。おそらく、2、3本引くと今持っている弓が軽く感じられます。すると、より大きく弓を押し開けるようになり、離れも鋭くなります。
そのため、弓道の技術を高めるためには、少し強い弓をもって稽古するのを意識してみましょう。ただ、少し強い弓を持つ際は、いくつか注意しなければいけないことがあります。一人で稽古するときは、特に二つのことを意識して稽古するようにしてください。
初めは巻き藁で鳴らす
まず、少し強い弓を持ったなら、いきなり的前に立たず、巻き藁前で弓を引くようにしてください。少し強い弓で初めて稽古する場合、最低でも2、3本引いてから、的前に立って稽古するようにしてください。
たとえ慣れていたとしても、弓のkg数が上がると何が起きるかわかりません。ひとまず、数本巻き藁で稽古し、問題なく弓を引き、離れ動作ができると判断してから射場に立つようにしましょう。
少し強い弓で稽古するときの注意:1番的に立たない
まず、少し強い弓を引く際に、注意することとして「一番前に立たない」ことが挙げられます。この理由として、少し強い弓を持つと、そうでないときにくらべて離れで前に戻りやすくなるからです。
現段階で引き分けが小さい場合、少し強い弓を持つことで、改善されることは間違いないです。しかし、弓のkg数が大きくなると、前に拳を送るように離れてしまう可能性が高くなってしまうため、矢が前に飛びやすいです。そのため、一番的で稽古していると、誤って大きく前に飛んでしまい、安土からそれてしまう可能性があります。
そのため、少し強い弓の稽古で、慣れないうちは最低でも二番的で稽古するようにしてください。
注意2:下を狙うようにする
次に、少し強い弓を持ち、最初のうちは「下を狙う」ようにしてください。この理由として、少し強い弓を持つと、通常よりも左肩が浮き上がりやすくなり、狙い目が上になりがちだからです。
少し強い弓で最初に引くと、引き分けの際に弓の反発力が身体に強くかかります。そのため、両こぶしが前に戻りやすくなり、狙いが「上」になってしまう可能性があります。これを防止するために、少し強い弓で引き分けをするときは、「下」を狙うようにします。
行うことは簡単です。引き分けに至り、離れに入ったら両こぶしを下に切り下げます。つまり、離れに入り、両肩に力みが強くなりすぎて、浮き上がる前に右こぶしを下方向にめがけて引っこ抜くようにします。これで、矢は下に飛びます。
この3つの内容を理解しておけば、少し強い弓を引いても、万が一のリスクを減らすことができます。意識するようにしてください。
少し強い弓で肩に負担がかかりすぎてしまった場合
そして、少し強い弓を引くと、通常の稽古よりも両肩が力みやすくなるのがわかります。これは、弓のkg数が上がってしまうから仕方がないことです。ただ、一人で稽古し、肩が力んできたらなかなか弓が引けなくなります。
この場合は、弓を引く際に「前を狙う」ことを強く意識してください。引き分けで、左手で弓を押すときに、初めに前を狙うように意識します。そして、会に至っても前を狙うようにし、少しずつ左親指を前に入れて、狙い目がちょうど「弓越しに的を見て右半分が隠れるように(西半月)」になるように意識してください。
実際に、弓のkg数を上げたときにわかりますが、前を狙うよう意識して弓を押すと非常に押しやすいです。この理由は、前を意識して押そうとすると、弓手が弓の右側木に入すぎず、「左手首のひねり」が少なくなるからです。その結果、弓を強く押せるようになります。
さらに、少し強い弓を持った場合、左手と左肩が強く力みます。この対策方法として、会においては「左手を気持ち高く上げるようにし、左肩を下げるように」意識してください。左手を少し上に上げると左肩が下げやすくなるのが体感できます。そして、左肩の力みが抑えられるのがわかります。
これは、射學正宗の「律経門」で紹介される射癖の改善法です。
少し強い弓を引く場合、両肩関節に反発力を強く感じやすいです。これを防止するために狙いははじめ前を狙うように意識してください。加えて、左手を上げ、左肩を下げるようにすると、+3kg程度の強い弓であれば、問題なく押し開けるようになるでしょう。
射型が整うようになるまでは気長に待つ
そして、少し強い弓を持った場合、「射型が整うようになるためには気長に待つ」ことを意識してください。
当たり前の話ですが、弓のkg数が上がると、いつも使っている弓よりも引きにくく感じます。そのため、少し強い弓で射型が整い、楽に引けるようになるためには、時間が必要です。体配や作法は、頑張ろうと思えば1か月程度あれば、きれいな身のこなしを覚えられます。しかし、弓のkg数が上がると、その弓を引きこなせるようになるために、最低でも3か月程度かかります。
この理由は、「体配」は動きを覚えるだけであり、覚えることはシンプルです。加えて、体配を行う際に、膝を痛めたり腰を痛めることはまれです。
とはいっても、焦る必要はありません。
ただ、少し強い弓を引いて、稽古をしようという気持ちを持つことは非常に大切なことです。言葉は悪いですが、世の中の大半の弓道家がこの稽古をしないために、弓の引き方を細かく勉強しようという意欲がありません。したがって「手の内を固めろ」「離れは爆発力を効かせて」「肩甲骨を寄せるように」といった根拠がない教えが蔓延します。
こうした事態を解消するために、「少し強い弓」を引くようにしてください。