弓道の運動で使われる筋肉はどこが使われているのか?それを筋肉の電位を測定し、研究した報告があります。
これは、現代弓道講座に研究結果が載せてあり、日本体育協会スポーツ科学研究室により、実験が行われました。弓道に必要な筋力のトレーニング方法を考察するための一資料、広く弓道技術向上の一助とするために研究されました。
弓道の練習で使用される巻き藁を弾けん射の前方2メートルに置き、被験者は数十年の弓道経歴を持つ高段者と、弓道未経験者と属性をばらつかせ、測定されました。筋電位、さらに弓の歪、すなわち弓を引く力の変化を示す曲線を合わせて測定しました。
数多い筋肉中から、表存する筋肉だけから筋電図を誘導したので十分とは言えないが、弓を引くときに使われる筋肉を特定しました。
結果
左右前腕伸筋群、左右上腕伸筋群、三角筋、左右僧帽筋、左右大円筋、勅下筋、広背筋
これらの筋肉が弓の歪と相応して放電し、弓を引くための筋肉として働いていると考えられました。これはのちに東京大学でも同じ測定がされ、報告しているのと同じ結果になりました。
だいたいの位置
前腕伸筋群・・小指側の小指から肘にかけての筋肉
上腕伸筋群・・力こぶの裏側の筋肉
三角筋・・肩周り
棘下筋・・肩甲骨の下くらい
僧帽筋・・肩~首
大円筋・・肩甲骨下部~上腕上部をつなぐ
広背筋・・背中周りの筋肉
こうやって見ると、弓道ので使われる筋肉は背中の筋肉が多いように考えられます。
さらに、この実験では左右の総指伸筋、上腕三頭筋、三角筋の左右の活動電位の差をみてみました。この結果から、高段者、未経験者、大学弓道部所属者、どの人も左手の活動電位が大きかったという結果になりました。
筋の活動電位から見て、左手(弓手)が三分の二、右手(妻手)が三分の一程度の筋力配分と考えられ、吉見順正の射法訓に書かれていた「弓手三分の二弓を押し、妻手三分の一弓を引き」の言葉と同じ結果が得られました。
下半身の筋電位も調べられていて、この結果に関してはたいていの被験者において、下半身の筋肉は終始一貫した活動電位が見られました。
よって、弓道の動作中は下半身は体重を支えているプラス軽い緊張を保っていることがわかりました。
高段者と未経験者と比べると、未経験者は弓を引くときに上腕三頭筋(ちからこぶの裏側の筋肉)と、上腕二頭筋(ちからこぶの筋肉)同時に働いていることがわかりました。高段者はこの上腕二頭筋の活動電位は見られませんでした。
上腕二頭筋は上腕三頭筋の拮抗筋であるため、この二つの筋肉が同時に活動することはあきらかに不利であり、高段者に見られる合理的な筋肉の使用の差であると考えられます。
つまり、上腕三頭筋が働き、二頭筋が働かないように引くことが合理的な弓の引き方と言えます。
弓道の筋肉はスポーツで見られる前の筋肉ではなく、自分の眼の見えない筋肉が使われる運動であることがわかりました。この背中を筋肉を鍛えられるところが、姿勢がキレイになることとつながっているかもしれません。