体配で間違えやすい箇所とその対処法について解説

体配には、細かい取り決めが多くありますが、中には、「なぜそうするのか」という理由がきちんと解説されていない事例があります。ここでは、そういった細かい内容について解説していきます。

なぜ、足踏みは2種類あるのか?

体配における足踏み動作は、二通りあります。一つは一足で開く場合と、二つ目は二足で踏む場合です。

全国の関係者に確認したところ、一足の場合は関東に多く、二足は関西に多いようです。大阪の地方審査で受審者の足踏みを見ると、二足で踏んで行うものが半分の割合でいたと報告もありました。

実際の審査では、どちらで行うのが合理的でしょうか。正解は二足です。一足の足踏みは、長袴をはいている場合に行うものです。

下の図を見てください(写真は阿波研造)」です。袴を見ると脚を引きずるくらいに長くなっています。このように、袴が長いために、二足で踏もうとすると不都合になってしまいます。そのため、片足で長袴をおさえながらもう片方を踏む一足での足踏みが行われました

現在の弓道では一足で踏む場合は「礼射系統」、ニ足で踏む場合は「武射系統」と解説されます。そういうわけではなく、両方とも礼射で用いてよい足踏みであり、一足の足踏みは長袴に適しているというだけです。現在の弓道の袴は馬乗り袴で行うため、二足で踏んでも問題はありません。

ただ、実際は礼射系統、武射系統と名前を付けると、なんとなく一足の足踏みは礼射で行う正式なものであり、武射よりは礼射で行った方がよいと思っている人は多数います。実際に、二足の足踏みで行おうとすると、一足にするように直された方もいると報告があります。

その指摘をされた先生はおそらく、足踏みに関する歴史を調べられていないと思います。一足の足踏みは長袴の場合に開発されたものであり、礼射に適しているからという意味ではありません。二足の方が立ち位置を誤らずに済むため、積極的に活用するようにしてください。

なぜ、筈を弦に送りこむようにするのか

次に、矢番え動作で矢筈を弦につけるときに、「筈をもって弦に送りこむようにする」と教本に書かれています。

このようにする理由は、物理的に「矢飛び」と「弦音」が挙げられます。

矢を発するときに、矢飛びに影響する要因の一つに「矢筈と弦との接触面」があります。二つの摩擦力が強く働く場合、矢飛びのスピード、矢色に影響が出ます。真っすぐに正確に飛ばすためには、できるだけ矢筈と弦との接触がきつくならないようにしなければいけません。

実際に、弓道の文献の中には、矢飛びを高めるためにあえて中仕掛けを細くするという話もあるほどです。日置流では、矢筈をつける際、中仕掛けを設置する箇所の一か所だけにつけて、右手をもって矢筈を上に摺り上げてつけます。このことからわかるように筈は中仕掛けにつけるのではなく、できるだけ接触面を減らさないよいけません。

そのために、矢筈から弦をつけるように文章化されています。

ただ、戦前に出された雑誌「武弓」によると、弦音に多少影響が出るために、筈と弦の接触面を減らすとも記述されています。

現代の弓道では、中仕掛けを太くし、弦を動かして筈につけている人が多数です。その方が楽だからです。あるいは、ばれないようにそのように見せてつけている人も結構います。そのようにすれば、筈こぼれも少ないし、かつ作法もきれいも見せれるので、よいと思っているのでしょう。

ただ、このような行為は、作法自体がきれいに見えても、弓の機能を最大限生かせないため、中身がないものとみなされます。筈と弦の接触が浅くても引けるように工夫しましょう。

なぜ、弦調べを行うのか?

弓構えを行うときに、弦調べを行います。これを行う理由は、目的物の位置関係を把握するためです。

昔は、目的物の大きさ、形状、距離、自分との位置関係を確認するために、弓と的の位置を確認する作業がありました。しかし、今日の弓道は的の大きさ、形、距離、立つ位置まで決まっているので、弦調べは、形式上行われています。

また、神事で行う場合は、「神や自然を崇拝し、意識するため」とも説明されます。

昔弓の元弭を「地の神」、裏弭は「山の神」とされており、弦調べで行う際に、自身の弓の中に宿る神を崇拝し、意識する事を行いました。日本の神事、道具は自然の一部ととらえられるため、弓の道具も自然の一部ととらえていました。ある流派では、手の内(左手)も自然の一部ととらえて、左手の各部に月、日、など自然のものをなぞらえて名付けていたものもあるほどです。

形式的に行わわれていますが、昔は必要性があって行われていたものです。これを機会に覚えて、意識して実践するようにしましょう。

 

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