良い左手の形を作り上げるためには、体幹部の筋肉に注目し、姿勢を伸ばすことが大切です。
より綺麗に手の内が整い、楽に弓を押せるようになります。
では、姿勢を整えることで、左手が整う具体的な方法をご紹介します。
姿勢を変えれば、左手が自然に整う
あなたの姿勢を伸ばすと、より左手が軽く握れるのを体感できます。
ここでは、姿勢を伸ばして呼吸することによって良い手の内を作り上げる方法をご紹介します。
先ほど、弓は「軽く握る」ことが大切と解説しました。
実際に、弓を握ってみます。この時の感覚を覚えておいてください。
この状態からもっと軽く弓を握っている感覚を手に入れましょう。
姿勢を整え、呼吸をしやすい構えを作ると、実現できます。
両脚を閉じて、内腿を締めます。この状態から、両足を開きます。体重が下腹部に乗って、下半身が安定します。
次に、背中を伸ばします。骨盤を上に起こすように立て、お腹を伸ばして胸を開いて、両肩が後ろに引くように意識します。上腕が楽に外側に回るように弓構えを作ります。
この姿勢で呼吸をしてください。
弓を持ってみると、先ほどよりももっと「手にあたる弓の感触」が少なくなった、柔らかくなったのを感じませんか?
姿勢を変えて呼吸をすると、もっと弓を楽に握っているように感じることができます。
もっと弓と掌が柔らかく触れている感覚を深く記憶できます。
これは、単純に呼吸をすれば良いというわけではありません。より姿勢を伸ばし、呼吸によって掌の力みが取れるのを実感できます。
手の内の技術を高めるとは、握り方を決めることではなく、握ったときの感覚を自然にしていくことです。
このことを、パウロコエーリョ著「弓を引く人」には、
弓の握り方
とにかく平常心にして、深呼吸をしなさい。彼の安定した手の動きと、不安定なそれとの違いを知っている。(「弓を引く人」P83)
と解説しています。弓を引く人の引用文献となったオイゲンヘリゲルの「弓と禅」には、
ヘリゲル:右手首の力を抜いたまま弓を引くのが難しい
阿波研造:まさしくそれがいけない。そのために骨を折ったり、それについて考えたりすることが。一切を忘れて呼吸に集中しなさい(「弓と禅」より)
と解説しました。阿波研造氏は手先ではなく、呼吸に集中するようにヘリゲルに忠告したのです。
呼吸をすると、首の付け根にある副交感神経が活性化されます。
人の首の後ろには、血流速度が上がる交感神経と下がる副交感神経があり、その二つがバランスをとりながら、血流、感情などをコントロールしています。
副交感神経が活性化されると、心がリラックスします。すると、物を握るときの感覚も柔らかく、軽くなります。
つまり、阿波研造は心を落ち着けて、感覚を柔らかくすることで、弦を握るときの右手を柔らかくせよと解説しています。
これは左手にも同じことが言えます。
いくら弓の握り方を変えても、軽く握ることはできません。姿勢や体幹が緊張していれば、その緊張が左手の筋肉に伝わります。
これを、パウロコエーリョ著「弓を引く人」には、「手は全ての努力が集中した場所に過ぎない」と解説されています。
もし、姿勢が力んでいれば、左手も弓を引く前に力んでしまいます。
弓の引いたときの姿勢に力みがあれば、左手にその力みが集中してしまいます。
姿勢から、左手の握り方は変わるのです。
押し動作も、離れた後の左手の形も、弓返りも。これらは姿勢を伸ばし、呼吸を整えることで実現できます。
背骨を伸ばします。お腹を開き、胸を開き、呼吸をします。すると、背中は楽に伸びて、心はリラックスし、握る感覚も軽くなります。
軽く握りましょうとは「軽い感覚で弓を握りましょう」と意味です。
「リラックスして弓を握る」とは、「心をリラックスして弓を握る」と説きます。
手だけリラックスさせようとしてもダメです。手をリラックスさせるためには、体全体をリラックスするよう意識してください。
そうすることで、初めて「軽くにぎった感覚」を得ることができます。
では、次にもっと具体的に体幹部の筋肉に注目し、軽く弓を握った状態を作り上げる方法をお伝えします。注目すべきは「胸」です。